AI、ヒューマノイド、グリーンスチール――オーストリアの大企業は何を求めているのか
ViennaUPの「Connect Day 26」、リバースピッチをレポート
オーストリア・ウィーンで2026年5月19日に開催された都市型スタートアップフェス「ViennaUP 2026」の中核イベント「Connect Day 26」では、終日ピッチやパネルセッションが展開された。特徴的だったのが、大企業が自社の課題や求める技術をスタートアップ側へ提示する「Corporate Reverse Pitch」だ。エネルギー、半導体、鉄鋼、モビリティなど各分野の企業が登壇し、協業ニーズや求める技術領域について説明した。
エネルギー大手Verbund、「スタートアップのスピード」を求める
オーストリア最大の電力会社Verbund(フェアブント)のCVC部門であるVerbund Xは、エネルギー転換を加速するため、スタートアップとの連携を強化している。「スタートアップのスピードと、大企業のスケールを組み合わせる」と語り、AIやフロンティアエネルギー技術、エネルギーの柔軟制御(Flexibility)、サイバーセキュリティなどを重点領域として提示した。
最大250万ユーロ(約4.5億円相当)規模の出資に加え、大企業パートナーと共同でユースケース設計から実証実験まで行う約6カ月のアクセラレータープログラムも展開する。対象は欧州のシード〜シリーズA段階の企業で、一定の売上実績を持つソフトウェア系スタートアップを想定。
Infineon、ヒューマノイドロボット向け技術を募集
半導体大手Infineon(インフィニオン)は、「ヒューマノイドロボット」の実用化に向けたスタートアップチャレンジ「Infineon Startup Challenge 2026」を紹介した。対象となるのは、人間サイズのロボットを支えるパワー制御、センシング、モーター制御、人工皮膚、レーダー、デジタルツインなどの関連技術。単なる部品提供ではなく、大企業の専門家チームと協調しながら開発を進められる企業を求めている。
採択企業には、インフィニオンの半導体コンポーネントや開発キットを提供するほか、社内エキスパートによるコーチング、投資家向けデモデイ参加機会も用意する。将来的には量産や販売ネットワークへの接続も支援するとし、プロトタイプで終わらせない姿勢を強調した。
Blum Ventures、家具メーカー発CVCが量産支援まで視野
家具用金物で世界シェアを持つBlum(ブルム)グループのCVC部門であるBlum Venturesは、スマートリビング、産業技術、グリーンビルディング、自動運転など幅広い領域のスタートアップを支援している。
ブルムの事業部門と接続し、パイロット導入や量産支援まで踏み込む点が特徴だ。ハードウェアスタートアップに対しては、同社が持つ製造・エンジニアリングノウハウを提供し、試作段階からマスプロダクション対応まで伴走すると説明。120カ国以上に展開するグローバルネットワークも活用し、海外展開も支援する。対象はDACH地域や北欧、英国を中心としたアーリーステージ企業。
ABA、「オーストリア進出」を無料で支援
セッション主催でもあるオーストリア政府系機関「Austrian Business Agency(ABA)」は、海外スタートアップや企業のオーストリア進出支援を紹介した。
ABAはオーストリア経済省傘下のビジネス誘致機関で、拠点設立や現地ネットワーク構築などを無料でサポートしている。同国は、政府系支援機関や研究支援機関などとの距離が近く、小規模な国ならではのアクセスしやすいエコシステムが特徴となる。NFC技術を生んだ企業や、NASAアルテミス計画に関わるTTTechなどを例に挙げながら、グローバル技術を育てる環境づくりをアピールした。
プライメタルズ、高温・粉塵環境で動くAIを募集
三菱重工グループのPrimetals Technologiesは、鉄鋼業界向けのAI・ロボティクス技術を募集。特に求めているのは製鉄所特有の過酷な環境でも動作可能なセンサー、ロボット、自律運転技術。
直近のテーマとして「エンジニアリング図面のインテリジェント化」を挙げ、大量の技術図面から意味や価値を抽出するAI活用を進めているという。出資よりも共同開発を重視しており、「発注者とベンダーではなく、一緒に製品を磨く関係」を求めているとのこと。
Wien Energie、太陽光予測とEV充電AIを募集
オーストリア最大級のエネルギー企業Wien Energie(ウィーン・エネルギー)は、自社のオープンイノベーションプログラム「Wien Energie Innovation Challenge」を紹介。「15分後〜3時間後の太陽光発電量を予測する短期予測AI」と「EV充電スタンド向けAIカスタマーサポート」の2テーマを重点募集している。
選出された企業は、同社エキスパートと約6カ月間の共同プロジェクトを実施し、最大5万ユーロ(900万円相当)の資金提供も受けられる。実証後は長期パートナーシップやアクセラレーションフェーズへの移行も想定している。
Trust Motion、SDV時代の「複雑な車載データ」を扱う技術を募集
旧TTTech Autoから社名変更したTrust Motionは、ソフトウェア定義車両(SDV)向け技術をテーマに登壇。同社は、NXP傘下に入りながらも特定半導体に依存しないベンダーニュートラルな立場を維持し、自動車向けソフトウェアサービスを提供している。
重点領域として、車載システムの可観測性(Observability)やエッジAI、仮想化テスト、安全性設計などを提示。特に「車は膨大かつ複雑なデータシステムになりつつある」とし、その複雑性を扱えるスタートアップとの協業を求めた。
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