歴代ロードスター一気乗り 第1回
人馬一体はココから! 伝説のはじまり、NA型ロードスターに乗る
2020年12月29日 12時00分更新
パワーは非力だがそういうクルマではない
では、エンジンフードを開けてみることにしましょう。搭載するエンジンは前期型と1993年からの後期型で異なります。いずれも自然吸気の直列4気筒ですが、前期型はB6-ZE型と呼ばれる排気量1600cc、最高出力120ps/6500rpm、最大トルク14.0kgf・m/5500rpm。後期型は1800ccとすることで、最高出力は10ps、最大トルクは2kgf・mアップしています。それ以上に杉山さんは「エンジンを縦置きにし、さらに車軸よりも運転席側、つまりフロントミッドシップとしている点に注目してもらいたいです」とのこと。ちょっとチンプンカンプンの美環さんに対して、大人たちはニヤニヤ。
「一般的なクルマは、室内空間を広くするためエンジンを横に置きます。ですがレーシングカーをはじめ、運動性能を求めるとエンジンは縦に置いた方が回転モーメントの関係から望ましいのです。さらに重心をより中央に寄せた方が運動性能は上がります」とのこと。「そういえば、我が家のロードスターもエンジンが縦に置いてあったなぁ」と美環さん。「自然吸気4気筒、エンジン縦置きのフロントミッドシップ、後輪駆動、50:50の前後重量配分はロードスターの不文律。お約束なんですよ。初代のNA型でその思想は固まっていたんです」というわかりやすい杉山さんの解説に、聞いていたオジサンたちはさらにニコニコしながらスポーツカー論談義。まったくもって仕事をしないオジサンたちです。
フロント回りの説明が終わったところで、リアへと移動する2人。「このブレーキランプ可愛いですね!」と目ざとくチェックする美環さん。ちなみに美環さんの本業は美少女フィギュア造形師で、造形モノには一家言あります。「このコンビネーションランプはデザイン性と機能性の両立を評価されまして、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に展示・永久収蔵されているんですよ」と杉山さん。そういわれると、最初は何も感じなかったのですが、説明を受けてから素晴らしいデザインに見えてしまう権威に弱いオジサンたち。
リアにはユーノスとロードスターのロゴプレートを指さす杉山さん。「前期型と後期型は、ロードスターの文字の色が違います。前期型は黒、後期型のうち、シリーズ1と呼ばれるモデルは赤文字、95年にエンジンに改良を加えたマイナーチェンジモデルであるシリーズ2は緑文字になります。この子は初期型ですね」と杉山博士からマニアックな見分け方を教えてもらいました。
そのままトランクをパカンと開けます。収納が気になる美環さん。「なんか広そうだけれど、荷物がいっぱいあって狭いですね」というのが素直な言葉。「今は応急修理キットを積載するクルマが多いですが、当時はスペアタイヤだったんですよ。あと前後重量バランスの都合、バッテリーがトランク側にあるのも狭く感じる要因でしょう。でも機内持ち込みサイズのスーツケースなら1~2個は入ると思いますよ」。
s室内をチェックしてみましょう。タンレザーと同色のカーペットで統一された明るい室内に木製のハンドルやシフトレバー(編注:ハンドルは純正ではありません)。「この内装、とても好みです」と感嘆される美環さん。「この木製ハンドルの感触がとても好きです。温もりというのかな、そういうのを感じます。それに大きさもちょうどよく、細身だから持ちやすい気がします」と絶賛されます。今では環境保護やコスト、そしてペタペタするという意見などから木製ハンドルは少なくなってしまいましたが、趣味性の高いクルマこそオプションで用意してほしいと思った次第。
室内はスポーツカーらしいタイトなコクピット感と居住性が見事に両立。センターコンソールにシガーライターと灰皿が用意されている点が時代を感じさせます。アームレストを開けると給油口やトランク開口ボタンがみえます。
それでは幌を開けてオープンスタイルに。自宅にロードスターのある美環さんはフロントガラス側にあるロックを外して車体後方に畳もうとします。「NA型にはその前にちょっとした作業があるんですよ」と杉山さん。「まず、リアウインドウ近くのファスナーを開けてください。そうしないとリアウインドウに皺ができてしまうんですよ」とのこと。ということで、ファスナーを開けようとすると……「奥行きが結構あって、座ったままだと手が届かない!」と悲鳴を上げます。「でも、この奥行きはいいですね。バッグとかポンと置けそう。ちなみに子供なら横になることができそうなほどのスペースでした。
あとは幌を後方へ追いやればオープン化完了。杉山さんは「このファスナーを開けるのはNA型のみですので『NA開け』と言うんですよ」とわかりやすく解説。NA開けって何か通っぽくていいですね。
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