レースシーンで培った技術を市販車に注入したコンプリートカーは以前からある。その中で日産系チューニングメーカー「NISMO」の名を冠したモデルは、他社に比べて硬派な存在だ。今回はその中の2台「フェアレディZ NISMO」と「GT-R NISMO」を試乗した。そこで見えたNISMOロードカーの本質とは?
NISMOとは、NISsan MOtorsportの略称。現在、SUPER GTやスーパー耐久、ブランパンGTアジアをはじめとするフィールドにGT-Rを送り込んでいる。そこで得たノウハウを元にして誕生したのが、NISMOロードカーのフラッグシップ、GT-R NISMOだ。
速さの象徴であり憧れ
GT-R NISMO
GT-R NISMOが登場したのは2014年のこと。日産GT-Rが登場したのは2007年なので、意外と時間が経ってからのリリースだった。当時のニュルブルクリンク北コース市販車レコードをたたき出した、という印象はいまだ色あせずに残っている。600馬力にまで高められたパワーユニット、岩盤のように硬いボディーとそれを支える剛脚は強烈そのもので、これこそがレーシングフィールドで培った技術力であり、それを一般道で走れるレベルに落とし込んだことに賞賛を贈った。一方で、これを買う人は相当ドMだろうし、助手席に座らされた人は拷問だろうなとも……。
あれから4年の月日が流れた。2017年にビッグマイナーチェンジをした日産GT-Rをベースとする2018年版のGT-R NISMOは、その顔つきはより精悍さを高めた印象。フロントマスクにはカーボンが採用されたほか、各所にオリジナルのエアロパーツを投入。本当かどうかはわからないが、日産の担当者からは「このバンパーで100万円」「このリアウィングで150万円」などと言われ、乗る前からビビッてしまう。実際、試乗後は何名もの人間が車体の傷チェックをしていたほどだ。
エンジン出力は今までと変わらないそうだが、サスペンションなどの足回りは相当変更した模様。価格は1870万円。ちなみに日産GT-Rのベースグレードが996万840円なので、GT-R約2台分だ。
室内は全面アルカンターラとカーボンが奢られ、レーシーそのもの。アルカンターラによってフロントスクリーンに映り込みがなく、視界はかなりクリアだ。後部座席は「一応ある」という程度。荷物置き場程度と思った方がいいだろう。ちなみにカーオーディオはBOSE製だ。
カーボン製のセミバケットシートは大柄の男性でも窮屈さを感じさせない。それどころかFRP製と異なり、体を揺さぶっても微動しないのはさすがといったところ。調整は電動式で、快適さと軽さを両立させているのだろう。
メーターは恐ろしいことに340km/hまでスケールがふられている。正直、日本国内の公道では、針が下をうろうろする程度で使いづらいのだが、このクルマに乗る人はそんなことは気にしないだろう。
MY2015のGT-R NISMOは、エンジンをかけた途端、車内にタービンの甲高い音や、変速の度にトランスミッションの変速音が聞こえた。また排気音も盛大に聞こえ、これは戦いの道具であることを否応なく五感で感じさせたのだが、MY2018のGT-R NISMOはそれに比べればソフィスティケートだ。正直、GT-RのMY2017とそれほど変わらない。
しかし、走り始めた途端にそれは勘違いだということに気付いた。確かにMY2015のGT-Rに比べれば、走りも大人しい。しかし、めっぽう速いのだ。アクセルをちょっと踏むだけで体はシートに押さえつけられ、車は心地よい排気音を奏でながら猛烈に加速していく。停止状態からわずか3秒弱で時速100㎞/hに到達。実際、街中を走ってもほとんどアクセルペダルを深く踏み込むことはなかった。
ハンドリングは正確無比。カチッとしているし、ボディー剛性の高さはシートやハンドルなどから伝わってくる。驚いたのはよりコンフォートな乗り心地になっていたこと。スピードバンプなどでは内臓が飛び出るのでは? という衝撃はあるにせよ、それが不快ではないのは振動の収束が早く、そしてタイヤが地面をホールドしているという安心感から。コンフォートな傾向になっているのはMY2017のGT-Rも同じで、GT-Rが時を経て攻める車から大人の乗り物、長距離移動に適した車へとシフトしているのだろう。
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