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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第332回

“ブロッキング”議論再燃 オンラインカジノめぐり

2025年04月22日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 日本から多くの人が海外のオンラインカジノにアクセスしている問題で、総務省が強制的にアクセスを遮断する「ブロッキング」を検討している。

 2025年4月23日には、総務省が「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会」の初会合を開く。このニュースはいまのところ、総務省が4月16日に検討会の初会合の開催を発表しただけなのだが、すでに一部で話題になっている。総務省がこの検討会の目的について、「オンラインカジノサイトへのブロッキングを含むアクセス抑止の在り方に関する法的、技術的な課題について検討を行います」と明記しているためだろう。

 4月23日以降、この検討会は、主要メディアや新興のネットメディア、SNSで大きな話題になると思われる。これまで児童ポルノや海賊版マンガサイトへの対策を検討する際に、ブロッキングの是非をめぐる激しい議論が繰り返されてきた。ブロッキングは通信の秘密や、検閲の禁止、言論の自由と密接に関わる問題だからだ。

20代、30代に深く浸透するオンラインカジノ

 オンラインカジノを巡っては、著名人が賭け事をしたとされるニュースが相次いで報じられている。警視庁は4月3日、海外のオンラインカジノサイトで賭けをした「単純賭博」の疑いで、吉本興業所属の芸人6人を書類送検した。このほかにも、プロ野球選手や卓球選手が活動自粛や資格停止の処分を受けている。

 そもそも、日本から海外のカジノサイトにアクセスして金をかけるのは違法だが、海外のカジノサイトは日本に深く浸透していることをうかがわせる報告書がある。警察庁がシード・プランニングという調査会社に委託した「オンラインカジノ実態把握のための調査」の報告書だ。

 この調査では、2024年7月から2025年1月に、15歳から79歳の日本在住者2万7145人にアンケートを実施。この結果、日本国内のオンラインカジノの推定利用者は196.7万人にのぼると試算している。報告書によれば、特に20代と30代の利用者が多い。この報告書は、日本からどのくらいの金が賭けられたかについても推計を掲載しており、年間で1兆2423億円と見込んでいる。

 約200万人がオンラインギャンブルを利用し、違法な賭け事をしている実態に歯止めをかけるうえで、総務省と警察庁が打ち出してきた対策が、日本からのアクセスを強制的に遮断するブロッキングだ。

通信の秘密とブロッキング

 たしかに違法な賭博を防止するうえでは、アクセスを遮断してしまうのがもっとも確実だが、ブロッキングは多くの問題をはらんでいるのも事実だ。

 ブロッキングの問題を理解するうえで、「通信の秘密」を再確認しておきたい。通信の秘密の重要性を理解するうえでは、2018年4月に、日本インターネットプロバイダー協会が公表した声明に目を通しておきたい。

 当時は、海賊版のマンガサイトへの対策でブロッキングの是非が議論されていたのだが、同協会は、通信の秘密を根拠に、慎重な考えを示している。以下は、同協会の声明の趣旨を筆者なりに噛み砕いたものだ。

 あらためて述べるまでもないが、通信の秘密は、スマホが日常から切り離せない現代社会において、もっとも大切にされるべき前提だ。メールやチャットでは、個人や企業として守るべき秘密が、情報として行き交っている。だれが、だれに対して、どんな情報を送ったかについての秘密が守られなければ、メールもチャットもSNSも安心して使うことはできないし、そもそも経済が成り立たない。

 しかし、ブロッキングをする際には、「だれがどのサイトにアクセスするのか」を常時監視しなければ、海外のカジノサイトへのアクセスをブロックすることはできない。「だれがどのサイトにアクセスするのか」を常時監視するのは、通信の秘密の侵害にあたる可能性がある。

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