ファストフードチェーンのサブウェイに、ちょっと変わった店舗が登場した。
サブウェイといえば、客が好みに合わせて サンドイッチをカスタマイズできるサービスで知られている。2025年4月10日に横浜のみなとみらいに新しくオープンした店舗で、アルバイトのスタッフについて、単発のアルバイトを募集するウェブサービス「タイミー」のみで集めるという。現在、サブウェイの日本国内のチェーンを展開するのは、居酒屋大手ワタミのグループ企業だ。ワタミは2024年10月、サブウェイの日本法人を買収している。
一方、タイミーは1時間だけ働きたいといった人たちの希望に合わせ、スキマ時間にアルバイトができるプラットフォームだ。同社は2017年8月の創業だが、人手不足が深刻化する日本において急速に事業の規模を拡大し、2024年7月には東京証券取引所のグロース市場に上場を果たしている。
このニュースでは、会社としてのタイミーの勢いに驚くとともに、「そこまで人手不足が深刻化しているのか……」と、若干暗い気分にもなる。ワタミの子会社WATAMI FAST CASUALとタイミーは、横浜の新店舗のオープンに合わせて、業務提携も発表している。両社の狙いを考えてみたい。
飲食業界の人手不足は深刻
会社の公表資料を確認すると、提携の狙いについては、「外食産業の人手不足解消と事業成長を目指す業界初のモデルケースを共同で構築」とある。
飲食業界の人手不足は深刻だ。厚生労働省が発表した2025年2月の有効求人倍率は、「飲食物調理従事者」が2.65倍、「接客・給仕職業従事者」が2.78倍だ。有効求人倍率は、ハローワークに仕事を探しに来た求職者1人に対して、何件の求人があるかを示す。
ちょっと乱暴な説明だが、あるレストランのホールで仕事をしたい求職者1人が「接客・給仕職業従事者」の仕事に決まったとしても、そのレストランはまだ1.78人の人手が足りていないことになる。職業全体の有効求人倍率は1.19であることを踏まえると、他の業界と比べても、飲食業界は人手が足りない。
東京商工リサーチの調査によれば、2024年4月から2025年2月の間に、負債1000万円以上の飲食店の倒産が907件あった。同社の統計では、2025年3月の倒産件数は確定していないものの、飲食店の倒産は過去最多になることが確実視されている。907件の倒産のうち、人手不足が21件あった。
人手不足が直接の要因とされる倒産が多いのか、少ないのか判断はできない。しかし、厚労省と東京商工リサーチのデータからは、現在の飲食業界では、人手を確保し、事業を成長させることがとても難しい状況であることがはっきりする。この難しい課題を解決するためにワタミは、タイミーと組むことを決めたと考えられる。
とがったタイミーの働き方
スキマバイトの従業員をサブウェイに紹介するタイミーとは、どんな会社だろうか。
同社が開示しているブランドブックによれば、「スポットワークを手がける国内No.1の企業」だという。タイミーのウェブサイトには、スポットワークという新しい働き方が、詳しく説明されている。
もっとも目立つ特徴は、仕事が1日単位で完結する点だ。明日、3時間ほど時間が空くとしよう。その3時間について、求人を出している企業があれば、仕事を申し込む。求人さえあれば、当日であっても申込みができる。評判等に基づく求職者のランク付けはあるが、選考もないと書いてある。仕事が完結したら、その日のうちに、働いた分の時給が振り込まれる。
1日単位で働いたら、その日のうちに給料も受け取れる。1時間で完結する仕事もある。これまで、日本は新卒で企業に入社したら、平日はその会社に拘束される生活が当たり前だった。しかし学生や子育て中の人、年老いた親の介護がある人など、仕事とそれ以外の両立を迫られている人は少なくない。こうした人たちにとっては、スポットワークという働き方は大きな意味がある。
一方のタイミーに求人を掲載する企業側の事情は切実だ。特に、飲食店などの業種では人手が足りず、どうしてもシフトが埋まらない日が生じることはある。たとえば金曜の午後5時から9時まで、4時間だけホールで接客をしてほしいという需要は、けっこう高いのではないか。
ワタミの本音は、お試し雇用?

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