ASCII Power Review 第281回
ユニボディデザインで操作も斬新ですが納得しました
ついに発売開始の未来型カメラ「Sigma BF」をプロカメラマンが実写レビュー
2025年04月24日 00時01分更新
今年のCP+直前に発表され、会期中行列が絶えなかったシグマのフルサイズミラーレスカメラ「Sigma BF」がいよいよ発売となる。
アルミの塊から削り出した繋ぎ目のないボディーに、ボタンや端子などを極力排除したシンプルな外装。それに合わせた独自のメニュー操作など超個性的なカメラだ。
カメラマニア的には興味はあるものの使い勝手が気になるところ。発売前に試用する機会を得たので率直な印象をお伝えしていこう。
アルミ削り出しの完全ユニボディー
細かい工夫とローレット加工でグリップはGood
ボディーはスクエアな形状でサイズも小柄。同社の「fp」シリーズよりもわずかに横長だが奥行はスリムな感じである。ただ手にしてみると、まさに金属の塊と重厚感が伝わってくる。

今回試用したIシリーズの「45mmF2.8DG」を装着した状態。なお「BF」発売に合わせIシリーズレンズ9本もシルバーカラーの追加や、ブラックの一部外観変更、そしてちょっぴり値上げといったリニューアルがされている。
フラットなボディーなのでホールドが心配だったが、前面の右手が掛かる部分には滑り止めになるパターンが刻まれ(ラバーが貼られているわけではない)、背面には親指が掛かるサムレスト(シグマ的にはサムグリップと呼ぶ、これも削り出しだ)があり、意外と構えやすかった。
全体をぐるりと見渡しても、直線的なデザインが基調となっている。上面からみると少し台形になっているのが何気にカッコよく、シャッターボタンの形状も凝っている。
正面と背面の片側の角は丸みをもたせ、手に当たった時に痛くないように工夫されている。
ストラップホールは右側側面のみなので、いわゆる片吊りになる。しかも純正ではハンドストラップ(別売で価格は7700円)しか用意されていない。今回の試用では自前のネックストラップ(安物)を取り付けたが、なにせカメラが高価なだけに少し不安を感じた。ネックストラップを使いたいのなら、信頼性の高い製品を選んだほうが精神安定上よろしそうだ。
端子は左側面のUSB Type-Cがひとつあるだけ。またメディアスロットは搭載されず、230GBの内蔵ストレージのみなので、データの転送やバッテリーの充電は、すべてこのType-Cでおこなう。なお外付けSSDを接続し内蔵ストレージから転送することは可能だ。
底面はさすがにラバー張りがあり、バッテリーと一体化したデザインになっている。(Ph9)
新規に採用されたバッテリーは「BP-81」だが、公称撮影可能枚数は約260枚。実際の撮影でもRAW+JPEGで150カット300枚撮影時に残27%と少しスタミナ弱めだった。
もちろんUSB給電が可能なのでモバイルバッテリーでも動作はできるが、このデザインのカメラにケーブルをぶら下げて撮り歩くのは少しイケてない感もある。長時間の撮影をしたいときは予備を用意したほうがいいだろう。
最小限の操作ボタンと画面タッチで操作
A/S/Pモードの選択は頭を使う
操作液晶は3.15型210万ドットの固定式で、当然EVFは装着できない。明るい屋外での撮影では液晶画面が見えにくいこともあったので、液晶の輝度を上げるなど対処が必要だ。
操作系を細かく見ていくと、まず電源ボタンだが長押しで起動し、起動時に軽く押すと即座にスリープに入る。カメラというよりスマホの感覚に近い操作感だ。
十字キーのセンターボタンを押すと画面上下に撮影時の主な設定項目が表示される。それから十字キーの上下左右で移動して項目を選択、もう一度センターボタンを押すと詳細な設定画面が表示される。
動画モードは連写の項目に、測距点の多点と1点を切り換えるにはAFモードの項目からと少し配置にクセはあるが、使っていればすぐに慣れるだろう。
センターボタンを押さなくても十字キーの左右で項目を変更し、回転させて設定を変更することもできる。ただ露出モードをオートに切り替えるなど詳細な設定はできない。また撮影中不用意に動いてしまうことも多々あったので、項目をロックするなどの機能も欲しいところだ。
露出モードはP(プログラム)やA(絞り優先)といった項目ではなく、シャッタースピードをオートにすればA(絞り優先)、絞りをオートにするとS(シャッタースピード優先)、両方をオートにするとP(プログラム)になる。
最初はわかりにくく感じたが、よくよく考えれば昔のシャッターダイヤルや絞りリングの操作(現在でも富士フイルムのX100Ⅵなどがそう)と同じで、アナログがデジタルになっただけ。そんな簡単なことに気が付かなかった自分の頭の固さを反省したい。
ただ撮影時の情報表示では、どの項目がオートなのかわからない。こちらもオートの項目だけ色を変えるなどの工夫が欲しい。
十字キー右下のオプションボタンを押すと液晶下部のカメラの機能設定が表示され、上段が撮影時の画面表示のオンオフ、中断が液晶輝度や電子音などの調整。下段でシステムメニューに移行する。
またオプションと再生のボタンは感圧式のハプティックボタンを採用。これにより再生ボタンを軽く触れると直前に撮影した画像が表示され、離すと即座に撮影画面に戻れる。これが思いのほか快適で、ぜひ一度体験してみて欲しい機能だ。
フルサイズ2400万画素でAFは高速
高感度特性も優秀
撮像素子の解像度は2460万画素と無印の「fp」と同じだが、像面位相差AFが入った。そのおかげだけでピント合わせは迅速で、失礼ながらシグマのカメラとは思えないほど素早かった。
またAF-Cで測距点1点のときは自動的にトラッキングに切り替わる。まず被写体に測距点を合わせ、その後に構図を整えるという撮り方ができるので、従来の測距点移動やAFロックのような手間が省け、スナップでも快適に撮影ができた。
解像感は2400万画素クラスとしては標準的だが、あまりシャープを強調しすぎない画像処理で、従来のシグマより柔らかい描写のような気がする。
オートホワイトバランスはシーンによってはアンバー傾向やマゼンダ被りなど少し暴れる傾向もあった。ただ発売前の製品なので、最終調整や今後のファームアップで対応する可能性もあり、RAW現像でも補正できる範囲なので、それほど気にしなくてもいいだろう。
ボディ内手ブレ補正は非搭載でシャッターは電子のみと「fp」シリーズ同様の仕様だ。ブレ防止のために、できるだけ速いシャッタースピードで撮影したいが、街中の街灯など光源によってはフリッカーが発生することもあるので、シーンによってはシャッタースピードを調整するなど対応が必要だ。
高感度はISO 1万2800程度は安心して常用できそうだが、それ以上の感度になると少しノイズ処理が強めに感じる。撮影時のノイズ処理の強弱設定はないので、こちらも好みに調整したいならRAWで撮影して後から現像で調整しよう。

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