最新パーツ性能チェック 第221回
ベンチマークによっては8C/16TのRyzen 7 1800Xすらも喰らう
やっぱり凄かったCoffee Lake-Sの物理6コア、Core i7-8700K&Core i5-8400徹底レビュー
2017年10月05日 22時01分更新
比較対象には前世代のほか、Core XやRyzenも用意
今回の検証環境は以下の通りだ。今回の見どころはズバリ、Ryzenシリーズに呼応するようにコア数を増やしたCoffee Lake-Sがどの程度の性能を出すかだ。また、6コア/12スレッドのCore i7-8700Kがお買い得かどうか、同じ6コア/12スレッドの「Core i7-7800X」及び「Ryzen 5 1600X」も準備した。CPUの設計思想の違いがパフォーマンスにどう影響するか見ものだ。
さらに、Core i5-8400には価格的に同格(米ドルベース)のCore i5-7400を比較対象として準備。2コアの増加はどの程度性能に影響するのか、さらに物理コア6基のRyzen 5 1600Xのコストパフォーマンスに迫れるかどうかがポイントだ。
今回すべてメモリーはXMP(Ryzenの場合はマザーボードのD.O.C.P.)を利用してDDR4-2666動作に統一し、各コア倍率は“Auto”とした。また、今回6コア以上のCPUが多いことからCPUクーラーは簡易水冷ユニットを使用している。
【検証環境】
CPU:
Intel「Core i7-8700K」(6C/12T、3.7GHz、最大4.7GHz)
Intel「Core i5-8400」(6C/6T、2.8GHz、最大4GHz)
Intel「Core i7-7700K」(4C/8T、4.2GHz、最大4.5GHz)
Intel「Core i5-7400」(4C/4T、3GHz、最大3.5GHz)
Intel「Core i7-7800X」(6C/12T、3.5GHz、最大4GHz)
AMD「Ryzen 7 1800X」(8C/16T、3.6GHz、最大4GHz)
AMD「Ryzen 5 1600X」(6C/12T、3.6GHz、最大4GHz)
CPUクーラー:
Corsair「H110i」(簡易水冷、280mmラジエーター)
マザーボード:
ASUS「PRIME Z370-A」(Intel Z370)
ASUS「PRIME Z270-A」(Intel Z270)
ASUS「ROG STRIX X299-E GAMING」(Intel X299)
ASUS「PRIME CROSSHAIR VI HERO」(AMD X370)
メモリー:
Corsair「CMU16GX4M2A2666C16R」(DDR4-2666、8GB×2)×2
グラフィックボード:
ASUS「ROG STRIX GTX1080TI-O11G-GAMING」(GeForce GTX 1080Ti)
ストレージ:
Samsung「960 EVO M.2 MZ-V6E500B/IT」(NVMe M.2 SSD、500GB)
電源ユニット:
Cooler Master「 V650 Semi-Modular RS650-AMAAG1-JP」(650W、80PLUS GOLD)
OS:
Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」(Creators Update)
電力計:
ラトックシステム「REX-BTWATTCH1」(Bluetoothワットチェッカー)
3DCGレンダリングは順当な結果、6C/12Tではやはり8700Kが最強
ではベンチマーク祭りといこう。トップは定番の「CINEBENCH R15」だ。マルチコアテストでは8コア/16スレッドのRyzen 7 1800Xが最速になるのは十分予想できるが、それに対してコア数が少ないCore i7-8700Kがどこまで迫れるのか、そして3種類の6コア/12スレッドCPUの着順が気になるところだ。
なお、今回ベンチマーク結果を比較するためのグラフは、CPUの論理コア数の多いもの、論理コア同数の場合は価格の高いものが上にくるよう並べてある。日本国内におけるCore i7-8700Kの価格は不明だが、原稿執筆時点におけるCore i7-7800Xは約370ドル(Amazon.comによる)に対し、Core i7-8700Kの1000個ロット当たりの価格が359ドルという数字を根拠に順列を決定している。
予想通り8コア/16スレッドのRyzen 7 1800Xはシングルコアテストが遅いものの、マルチコアテストでは圧倒的な強さを発揮。そして、次点がCore i7-8700K。同じ6コア/12スレッドのCore i7-7800Xよりも良いスコアーが出ているが、Core i7-8700Kのマルチコアテスト時は4.3GHz動作(タスクマネージャー表示)なのに対し、Core i7-7800Xが3.9GHz動作であるためだ。そして、Ryzen 5 1600Xに対してもCore i7-8700Kは優秀なIPCを活かし悠々と勝利。
Core i7-8700Kは価格的にはCore i7-7700Kに少し上乗せしただけの製品だが、CINEBENCH R15のスコアーでは約1.47倍も伸びている。米国ではさらに高価なCore i7-7800Xの存在意義は、メモリー帯域の太さとCPU直結のPCI Expressレーン数だけとなってしまった。マルチGPUやIntel VROCを使わず、シングルGPU&NVMe SSD1枚程度のシンプルな構成で攻めるなら、Skylake-XのローエンドよりもCoffee Lake-Sのハイエンドのほうが圧倒的に速いのだ。
続いてはCINEBENCH R15と同じ3DCGレンダリング系ベンチである「V-Ray Benchmark」でも検証してみよう。CPUとCUDAの両方が試せるが、今回はCPUのみのテストを実施する。
CINEBENCH R15と違い、V-Ray Benchmarkでは処理時間で比較するので棒グラフが短いほうが優秀。ここでも8コア/16スレッドのRyuzen 7 1800Xが最速だが、そのすぐ後ろにはなんと6コア/12スレッドのCore i7-8700Kが迫り、同時にRyzen 5 1600Xを20秒近く引き離している点にも注目したいところだ。
一方、6コア/6スレッドのCore i5-8400は4コア/4スレッドのCore i5-7400に対して大差をつけて勝利。さすがに4コア/8スレッドでクロックも高いCore i7-7700Kよりは遅いが、安めのCore i5でも3割以上のスピードアップを果たしているのは非常に大きい。
動画エンコードでRyzen 7 1800Xと同等以上の成果、総合性能でも圧倒
3DCGレンダリングの次はマルチスレッド性能が効く処理として動画エンコードを試してみよう。「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を用い、再生時間3分のAVCHD動画をMP4形式に変換する時間を比較する。コーデックはx264(H.264)及びx265(H.265)とし、画質重視のVBR 2pass変換とした。ビットレートなどのパラメーターはソフト側のデフォルト値で計測。
このベンチはH.264とH.265で傾向が異なる。まず、H.264はV-Ray Benchmarkと同様に物理コア数最多のRyzen 7 1800Xがトップ、そしてそのすぐ後ろ(誤差と言ってもいいレベル)にCore i7-8700Kが肉薄。Core i7-7700Kも物理4コアCPUとしてはとても速い部類のCPUだったが、Core i7-8700Kに対して3分遅れ、さらに格下のCore i5-8400にも負けるなど、物理コア数の多さはこういった用途では正義であることがわかる。
しかし、H.265の処理ではRyzen勢が一気に処理時間が長くなる。これはTMPGEncの使用する処理がRyzenと相性が悪いことを示しているが、H.265ではCore i7-8700Kが最速。H.264ではRyzen 5 1600Xに完敗したCore i5-8400もH.265では逆転勝利している点が興味深いところだ。
次にPCの総合的なパフォーマンスを見る「PCMark10」のスコアーをチェックしよう。あらゆる用途を想定した“Extended”テストを実施した。
総合スコアーにおいても分野ごとのテストのスコアーにおいても、コア数と動作クロックが両方高いCore i7-8700Kがトップ。8コア/16スレッドのRyzen 7 1800Xも決して低いスコアーではないが、アプリ起動時間や表計算などの比較的CPU負荷の軽いテスト項目ではクロックが上がりきらずにスコアーが伸び悩んでいる印象。それに対して、Ryzen 5 1600Xは総合スコアーで1800X超えを果たしているのが興味深いところだ。
また、6コア/6スレッドのCore i5-8400は4コア/8スレッドのCore i7-7700Kに比べて大きくスコアーが下落。定格クロックもブースト時のクロックも低いことが原因と考えられる。特にDigital Contents Creationテストが伸びない(その中でも特にPhoto Editingが奮わない)。コア数が多くても高クロックで動かないとスコアーは稼げないベンチと言える。
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