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マイクロソフト・トゥディ 第165回

“負け組”マイクロソフトは、何をしでかすかわからないチャレンジャーになった

2015年10月09日 11時00分更新

文● 大河原克行、編集●ハイサイ比嘉

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 2014年2月に、米マイクロソフトのCEOにサティア・ナデラ氏が就任して以降、マイクロソフトが大きく変革したのは、自他ともに認めるところだろう。

「モバイルファースト、クラウドファースト」への転換

 最大の変化は「モバイルファースト、クラウドファースト」の方針を掲げ、Windowsプラットフォームにこだわらない施策を相次いで打ち出してきた点だ。

 たとえば、Office製品は、従来ならWindows向けに最優先に開発され、Windowsプラットフォームならではの最大の差別化製品に位置づけられていた。

 だが、「モバイルファースト、クラウドファースト」の方針のもとでは、もっとも普及しているモバイルデバイスにおいてOfficeを活用してもらうことで、Officeの利用者の裾野を拡大することを優先。それを実行するために、iOS向けおよびAndroid向けにOfficeの無償提供を開始した。従来のマイクロソフトには考えられなかったことである。

Windowsだけに留まらず、MacやiOS、Androidでも動作するマルチプラットフォームに対応した

 ナデラCEOがiPhoneを活用したデモストレーションを行なったり、先頃行なわれた「Office 2016」の日本国内の発表会見では、日本マイクロソフトの平野拓也社長が、発売されたばかりのiPhone 6sを手に機能を紹介するといったことは、従来ならばあり得ないものだったが、モバイルファーストという観点では自然な取り組みとなる。

「Dreamforce 2015」基調講演に、米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが登壇。なんとiPhoneを使ったデモストレーションを行なった。iPhoneの画面は、マイクロソフトのOfficeのアイコンだらけだった

日本マイクロソフト 平野拓也 代表執行役社長。「Office 2016」製品発表会見では、iPhone 6s ローズゴールドを手に「Office 2016」版「PowerPoint 2016」をデモ

 そして、Windowsそのもののライセンス形態の変更にも踏み込み、モバイルデバイスの主流となる7型以下のディスプレーを備えたデバイス向けには、Windowsの無償提供も開始した。これも、モバイルファーストという方針に照らし合わせれば、当然のものだといえる。

 一方で、クラウドファーストという観点でも、従来のようなオンプレミス中心の事業形態では見られなかった提携が相次いでいることが見逃せない。

 セールスフォース・ドットコムやIBM、Twitter、シスコシステムズ、ネットスイートなど、従来はライバルと見られていた企業や距離感があった企業と、マイクロソフトが提携。クラウドビジネスを一緒になって推進する姿勢をみせている。

米マイクロソフト サティア・ナデラ(Satya Nadella)CEO(写真左)と、米セールスフォース・ドットコム マーク・ベニオフ(Marc Benioff)会長兼CEO(写真右)。2014年10月の戦略的提携を発表以来、両社の関係はより緊密になっている

 囲い込みが難しいクラウド時代のビジネスモデルを構築するという点で、提携戦略は不可避。クラウドファーストの実践ではこれも当然となる。

“大きく出遅れていた”という反省

ケビン・ターナー(Kevin Turner) COO

 マイクロソフトが「モバイルファースト、クラウドファースト」を打ち出した背景には、IT産業における今後のキートレンドにおいて、大きく出遅れていたという反省がある。

 モバイルファーストを例にとれば、PC市場では9割以上のシェアを持っていたマイクロソフトだが、スマホやタブレットを加えたデジタルデバイス市場において、マイクロソフトのシェアはわずか14%にすぎない。負け組の位置だ。

 また、クラウドファーストを打ち出した背景には、マイクロソフトが、クラウドビジネスの取り組みにおいて“クラウドボーン”と呼ばれる企業から後れをとっていたことが否めない。

 つまり、マイクロソフトはIT業界の巨人ではなく、いつの間にか追いかける立場に陥ってしまったというのが実態だった。これが、10年という期間を待たずに起こってしまったのである。

 マイクロソフトのケビン・ターナー(Kevin Turner) COOは、「我々はチャレンジャーである」と、何度も繰り返し語る。

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