2014年2月に、米マイクロソフトのCEOにサティア・ナデラ氏が就任して以降、マイクロソフトが大きく変革したのは、自他ともに認めるところだろう。
「モバイルファースト、クラウドファースト」への転換
最大の変化は「モバイルファースト、クラウドファースト」の方針を掲げ、Windowsプラットフォームにこだわらない施策を相次いで打ち出してきた点だ。
たとえば、Office製品は、従来ならWindows向けに最優先に開発され、Windowsプラットフォームならではの最大の差別化製品に位置づけられていた。
だが、「モバイルファースト、クラウドファースト」の方針のもとでは、もっとも普及しているモバイルデバイスにおいてOfficeを活用してもらうことで、Officeの利用者の裾野を拡大することを優先。それを実行するために、iOS向けおよびAndroid向けにOfficeの無償提供を開始した。従来のマイクロソフトには考えられなかったことである。
ナデラCEOがiPhoneを活用したデモストレーションを行なったり、先頃行なわれた「Office 2016」の日本国内の発表会見では、日本マイクロソフトの平野拓也社長が、発売されたばかりのiPhone 6sを手に機能を紹介するといったことは、従来ならばあり得ないものだったが、モバイルファーストという観点では自然な取り組みとなる。
そして、Windowsそのもののライセンス形態の変更にも踏み込み、モバイルデバイスの主流となる7型以下のディスプレーを備えたデバイス向けには、Windowsの無償提供も開始した。これも、モバイルファーストという方針に照らし合わせれば、当然のものだといえる。
一方で、クラウドファーストという観点でも、従来のようなオンプレミス中心の事業形態では見られなかった提携が相次いでいることが見逃せない。
セールスフォース・ドットコムやIBM、Twitter、シスコシステムズ、ネットスイートなど、従来はライバルと見られていた企業や距離感があった企業と、マイクロソフトが提携。クラウドビジネスを一緒になって推進する姿勢をみせている。
囲い込みが難しいクラウド時代のビジネスモデルを構築するという点で、提携戦略は不可避。クラウドファーストの実践ではこれも当然となる。
“大きく出遅れていた”という反省
マイクロソフトが「モバイルファースト、クラウドファースト」を打ち出した背景には、IT産業における今後のキートレンドにおいて、大きく出遅れていたという反省がある。
モバイルファーストを例にとれば、PC市場では9割以上のシェアを持っていたマイクロソフトだが、スマホやタブレットを加えたデジタルデバイス市場において、マイクロソフトのシェアはわずか14%にすぎない。負け組の位置だ。
また、クラウドファーストを打ち出した背景には、マイクロソフトが、クラウドビジネスの取り組みにおいて“クラウドボーン”と呼ばれる企業から後れをとっていたことが否めない。
つまり、マイクロソフトはIT業界の巨人ではなく、いつの間にか追いかける立場に陥ってしまったというのが実態だった。これが、10年という期間を待たずに起こってしまったのである。
マイクロソフトのケビン・ターナー(Kevin Turner) COOは、「我々はチャレンジャーである」と、何度も繰り返し語る。
この連載の記事
-
第215回
PC
「クリエイティブ」に向かうWindows 10とSurfaceファミリー -
第214回
PC
日本企業の変革を象徴、世界最大規模の「Office 365」大型導入 -
第213回
PC
資生堂、オンライン会議中の顔を美しく見せる「Tele Beauty」を開発 -
第212回
PC
女子高生AI“りんな”は母親思いのカープ女子!? 自分の子供より返事が多いというユーザーも -
第211回
PC
Office 365が3ヵ月無料試用OK、セットアップも支援 - 働き方改革週間締め切りは9月30日 -
第210回
PC
Windows 10企業導入の障害は、WaaS(Windows as a Service)と180日ルール -
第209回
PC
アクア、DMG森精機 - IoTの協業発表が相次ぐ日本マイクロソフト -
第208回
PC
MS SQL Server 2016は、オラクルの牙城をいかに崩すか、PostgreSQLにどう対抗していくのか -
第207回
PC
起死回生の製品になるか? 「Microsoft Dynamics 365」 -
第206回
PC
2096名で挑む大規模ライフハック! - 日本マイクロソフトが掲げる”本来”のテレワーク -
第205回
PC
日本MSが開催イベント名称・内容を再編 - グローバルイベントとの名称統合を実現してほしい - この連載の一覧へ