米マイクロソフトが発表した同社2015年度第4四半期(2015年4月〜6月)の業績は、赤字転落という厳しい内容となった。
売上高は前年同期比5%減の221億8000万ドル(約2兆7570億円)。営業損失は20億5300万ドル(約2552億円)の赤字、純損失は31億9500万ドル(約3971億円)の赤字となった。赤字幅としては過去最大の規模だ。
だが、この話題に触れても、マイクロソフト社内の雰囲気は、むしろポジティブだ。それどころか、「この決算内容は、マイクロソフトの変革がうまく行っている証」との声すら出ている。
減収赤字転落の決算のどこが「うまく行っている」ことにつながっているのか。
減損費用、リストラ関連費用を除くと、実は過去最大規模の利益
今回の第4四半期の決算を見てみると、赤字の最大の要因は、買収したノキアによるスマートフォン事業の構造改革の影響だ。
約8000人規模の人員削減を実施するなど、スマホ事業のリストラに取り組んでいるマイクロソフトは、この第4四半期に、ノキアの買収に関する減損費用として75億ドル(約9323億円)を計上するとともに、リストラ関連費用として7億8000万ドル(約970億円)を計上。これが赤字の元凶になっている。
ところが、この費用を除くと、実は、過去最大の規模の利益になっているという。
過去最大の赤字を計上したはずの決算が、実は過去最大の利益という、なんとも不思議な決算内容となっているのだ。
そこに、「うまく行っている」という理由がある。
そして、「うまく行っている」理由はそれだけではない。
昨年2月にCEOに就任したサティア・ナデラ氏が取り組んでいる変革の成果が出ていることが、部門別の業績から浮き彫りにできる点が見逃せない。
たとえば、デバイス&コンシューマ部門は売上高は、前年同期比13%減の87億ドル(約1兆円)。そのうち、WindowsやOfficeによるライセンス収入は、34%減の32億3300万ドル(約4019億円)と大幅に減少した。このうち、Windows OEMによる売上高は22%減少、コンシューマ向けOffice製品は、なんと42%の減収となった。
ここだけを見れば、明らかに業績が悪化しているといえるだろう。だが、マイクロソフトの戦略は、ナデラCEOの就任以来、大きく変化している。ナデラCEOは、「コンサンプション」(消費)や「ユーセージ」(使い勝手)といったキーワードを打ち出しながら、まずは利用してもらうところにフォーカスしているからだ。
日本マイクロソフトの樋口泰行会長が、「使ってもらってなんぼ」という言葉で表現しているように、マイクロソフトの基本方針は、今や利用者数の増加を最優先テーマとしている。
その具体的な施策が、Windowsのライセンスを無償提供したり、iPadなどのタブレットに対して、Officeを無償で提供したりといったものになる。
ビジネスモデルの変革が進展している証
日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「一例をあげれば、マイクロソフトは、昨年から9型以下のデバイスに対してはWindowsを無償で提供している。当然、ライセンス収入は大きく減少する。それにも関わらず、ノキアを除いた利益が過去最高となっているのは、我々が目指したビジネスモデルへの変革が進展している証だ」とする。
実際、ライセンスビジネスでは、収益が大幅に減少する一方で、ハードウェアの売上高は、前年同期比44%増の19億3300万ドル(約2403億円)と大きく成長している。ハードウェアの売上高のうち、Surfaceの売上高は前年同期比117%増と、実に倍増以上となる8億8800万ドル(約1104億円)を達成。年間でも65%増の36億ドル(約4475億円)という実績になった。また、Xboxの販売台数は27%増の140万台と、こちらも成長している。
また、Office 365 Consumerの登録ユーザー数は、1520万人にのぼり、第4四半期だけで新たに300万人近い登録ユーザーが増加したという。
BingやXbox LIVEなどオンラインサービスも好調で、売上高は前年同期比31%増の23億ドル(約2859億円)。オンライン広告収入も同21%増と成長した。
そして、Windows Phoneのライセンス売上高は前年同期比68%減の3億8200万ドル(約475億円)と大幅に減少したが、ハードウェアでは、Lumiaブランドのスマートフォンの販売台数は前年同期比45%増の840万台と、こちらも大きく増加している。
このように、ライセンス収入の減少とは裏腹に、サービスの利用者数、ハードウェアの出荷台数は増加しているのである。
この連載の記事
-
第215回
PC
「クリエイティブ」に向かうWindows 10とSurfaceファミリー -
第214回
PC
日本企業の変革を象徴、世界最大規模の「Office 365」大型導入 -
第213回
PC
資生堂、オンライン会議中の顔を美しく見せる「Tele Beauty」を開発 -
第212回
PC
女子高生AI“りんな”は母親思いのカープ女子!? 自分の子供より返事が多いというユーザーも -
第211回
PC
Office 365が3ヵ月無料試用OK、セットアップも支援 - 働き方改革週間締め切りは9月30日 -
第210回
PC
Windows 10企業導入の障害は、WaaS(Windows as a Service)と180日ルール -
第209回
PC
アクア、DMG森精機 - IoTの協業発表が相次ぐ日本マイクロソフト -
第208回
PC
MS SQL Server 2016は、オラクルの牙城をいかに崩すか、PostgreSQLにどう対抗していくのか -
第207回
PC
起死回生の製品になるか? 「Microsoft Dynamics 365」 -
第206回
PC
2096名で挑む大規模ライフハック! - 日本マイクロソフトが掲げる”本来”のテレワーク -
第205回
PC
日本MSが開催イベント名称・内容を再編 - グローバルイベントとの名称統合を実現してほしい - この連載の一覧へ