飯田橋クラウドクラブ(略称:イイクラ) 第19回
クラウドについて来られない人たちとマイクロソフトの役割
商習慣、リテラシ格差、文化……クラウドの未来はどうなる?の巻
2016年01月15日 11時00分更新
Microsoft Azureの戦略を語り尽くす飯田橋クラウドクラブのマイクロソフト編(2015年版)もいよいよ最終回! 最後は2016年に大きな焦点の当たるエンタープライズでのクラウド導入のみならず、クラウドが拡げる新しい未来について語り尽くすぞ。
今回の登場人物(敬称略)
デプロイ王子:デプロイ王子としておなじみ、Microsoft Azureの第一人者である廣瀬一海。MVP(Microsoft Most Valuable Professional)受賞者でありながら、AWSのサービスにも詳しい。昨年まではアイレット cloudpack事業部 シニアソリューション アーキテクトだったが……。
パクえ:日本マイクロソフト Azure技術部 クラウド ソリューション アーキテクト 吉田 雄哉。2015年1月に入社し、マイクロソフトの中の人として2年目に突入。"パクえ"というのは"パブリック クラウド えばんじぇりすと"の略。2016年もより多くの企業のためにクラウドを語るぞと意気込んでいる。
土居:日本マイクロソフト Azure技術部 クラウド ソリューション アーキテクト 土居昭夫。2015年秋までNTTPCコミュニケーションズでホスティングサービスの担当管理職。クラウドサービスは前々職のGMOクラウド以来。ひょんな事からマイクロソフトに入社。
真壁:日本マイクロソフト Azure技術部 クラウド ソリューション アーキテクト 真壁 徹。2015年秋までHPのクラウド技術者として、OpenStackなどOSSを活かしたクラウドに挑戦。マイクロソフトの挑戦に共感し主戦場を移す。
青木:三井情報 R&D部ITイノベーション室 プロジェクマネージャー 青木賢太郎。コミュニティ活動ではJAZUG(Japan Azure User Group)コアメンバーとして、みんなが幸せになれるように活動中。最近はAzureのハイブリッドクラウド向けサービスやデータ分析あたりに興味があるらしい。AzureのMVP(Microsoft Most Valuable Professional)でもある。
得上:オークファン 執行役員 技術統括部長 得上竜一。マイクロソフトのイベントでもおなじみML(Machine Learning)の第一人者で、オークファンのデータ分析サービスの立ち上げを進めている。
ASCII大谷:TECH.ASCII.jpの担当記者 大谷イビサ。連載のホスト・執筆者。お酒で舌をなめらかにして、Microsoft Azureの話を聞こうとしている。今年もイイクラをよろしくおねがいします。
エンタープライズのクラウドの課題は商習慣
ASCII大谷:ベンダーはどんどんサービスを進化させていますけど、正直ユーザーがついていけているとは思えません。ここらへんどうですか?
デプロイ王子:クラウドはコストがわかりにくいという慢性的な問題がある。既存の商習慣といかにうまく合わせていくのかは、第二次クラウド戦役の大きな課題です。さっき出た営業さんがどうやって売るかわからないという課題もそこに起因しますよね。
ASCII大谷:昨日、クラウド忘年会のために私も2015年の記事をまとめていたんだけど、AzureのOpenライセンスの記事がけっこう読まれていました。みんなわからないんだなあと。
真壁:お客様も予算まとめて預けるからそれでやってくれというところと、Pay as you goで使った分だけ支払いたいというところと、くっきり二分化していている。今年がまさに分岐点かもしれない。
土居:商慣習の違いって、すべて会計制度がベースになっている。会計制度ではあらかじめ予算があり、その中で動いているので、クラウドいっぱい使ったからといって費用の上方修正はなかなかできない。これがくびきになっていて、予算の中でしかできない。真壁さんが指摘していたPay as you goの人たちはそういうくびきから解き放たれているところ。
真壁:そういう人たちって、クラウドにお金をかけると儲るというところ。一方で、予算が決まっている会社はCPUをいくら使ってもコストが変わらないことを求める。
デプロイ王子:損益分岐点の考え方があきらかに違いますよね。
土居:年間で予算を考える会社と、今どきのスタートアップは会計の見方も違う。スタートアップは短期的にでも儲れば、お金をつっこむ。
得上:うちはちょうどそういう端境に来てる。おかげさまで僕も今年から上場企業の役員になったんだけど、売上利益の予算は3年先まで決まっている。そうすると、クラウドを使うのがいきなり難しくなる。オンプレミスは減価償却の世界なので、すでに一定数の使われていると安いし、クラウドはスケールする可能性のあるところしか使えない。売り上げに対して、リニアに伸びるモノにしかクラウドが入れづらくなってる。今年に入って、新しいラックを契約しましたからね(笑)。
真壁:おっしゃる通りです。そういう会社増えています。
(次ページ、「蛇口をひねると水が出る」に慣れた世代はどうする?)
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