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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」第36回

「オタクはUKパンク」? 英国記者が見た、日本の音楽文化

2010年09月25日 12時00分更新

文● 四本淑三  翻訳● 盛田諒

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日本のオタクはUKのパンクス

―― では逆に、日本とイギリスの音楽シーンにつながりがあると思ったことは?

イアン ZINEカルチャーという目から見ると共通したものがあるんです。アニメーションやマンガ、インターネット……日本のオタクカルチャーがそれですね。

―― ほほー。

イアン オタクと呼ばれる人たちは、同人誌や同人アニメ、同人ゲームといったものを山ほど作ってきました。そこからコンシューマーゲームになり、コンシューマーアニメになることもあった。たとえば「ひぐらしのなく頃に」がそうでしたよね。

ひぐらしのなく頃に

ひぐらしのなく頃に : 同人サークル「07th Expansion」制作のサウンドノベル。当初はコミケで販売され、ネットの口コミから火がつき、小説、マンガ、アニメ、実写映画と様々なバリエーションを生み、いずれも高いセールスを記録。

―― おお、確かにその通り。

イアン ですが、どうですか? あのアートワークを見たら……ただのファンが描いたようにしか思えない。あれをプロのゲームプロデューサーが見たら「こんな絵で売れるわけがない」と思うかもしれません。

 でも、そこから何かをクリエイトしようと思う人にとっては「これならできるかも!」と思いますよね。それは80年代に生まれたUKのパンクミュージックシーンも同じです。

―― あ、なるほど!

イアン 1970年代の、たとえばエマーソン・レイク&パーマー。超絶技巧で、もはやエイリアンのような。そこに現れたのが、ラモーンズです。すべての歌は1~2分で終わり、コードもたった3つだけ。それならできる、と皆こぞってラモーンズのコピーをはじめた。それと同じに見えませんか? これくらいの絵なら書ける。HTMLくらいなら書ける。そういった形で、ブームに巻きこまれていったのだと。

後半は新宿を歩きながら話を聞いた

―― 誰でもできるということで、敷居が低くなったわけですよね。

イアン それに彼らはアニメの「新作」が流れた途端、インターネットにユーザーコメントを書きこみますよね。それはパンクがブームになったときのミュージック・ギークたちと同じことです。「新作出たね。昨日知った? 遅いね、一昨日には出てたよ!」……。それが姿形を変えているだけだと思いませんか。

―― うわーっ、気づかなかった! エリート志向がパンクとオタクの共通点なのか!

イアン ですが、オタクカルチャーにはやや問題があります。ある特定のグループだけが大きくなってしまい、そこに外から入りづらいんです。つまり、とても分かりづらい。アニメを知らない人から見たら「気持ち悪い」とさえ言われることがあります。

―― たとえば音楽で言えばボーカロイドとか?

イアン ええ。初音ミク(ボーカロイド)はオタクカルチャーの中から生まれ、ついにサクマサン(佐久間正英さん)までプロデュースしています。これはポピュラーとのクロスオーヴァーの流れにあるように思えます。初音ミクの声はリアリスティックである必要はむしろありません。キャラクター(声の感情や性格)は必要なく、ただシンプルにボーカロイドという「声」がそこにあればいいのです。

佐久間正英さんがボーカロイドで作った「FALL」。使ったのは「巡音ルカ」だ

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