だから楽器じゃないんです、仲間なんです
―― 技術的な部分以外の特殊性ってありますか?
飴屋 DTMマガジンで連載されていた大須賀淳さんが企画した「UTAUフェスティバル※」ですね。そこで流れが変わりましたね。
※ UTAUフェスティバル : UTAUを中心とした夏のイベント。公式サイトはこちら
飴屋 地方から来られた方もいて、もう大規模なオフ会ですよね。それまではバラバラでやっていたんですが、コラボがたくさんできるようになった。藤本萌々子さんが海外に行っちゃうので、送別会に人がすごく集まったりとか。そういう「界隈」になりましたね。
―― たとえば「ボカロ界隈」ならPや、絵師さん、作詞の人なんかがいるわけですが、そこにUTAUは「中の人」もいるわけですよね?
飴屋 そうですね、中の人と近いんですよ。今はもうみんな知り合いです。
―― 歌声合成ソフトは普通「音源」として見なされているわけですが、その音源が自分の足で歩いてやって来るなんて、僕は想像できないんですけど。
飴屋 言われてみれば普通じゃあり得ないことかも知れないですね。
―― 何なんでしょう、これ。
飴屋 バンドをやっている感覚なのかも知れません。
―― あーっ、なるほど!
飴屋 だから楽器じゃないんです、仲間なんです。声を提供してもらって、みんなで音楽を作っているという。実際には、音源を作った本人ではなく、その人が作った声のキャラを歌わせているという感覚なんです。音源のキャラを描く絵描きさんもいますし。
―― 商業が絡むとそこら辺は垣根で囲われるわけですが、UTAUを通して独自の文化が成立してしまったわけですね。
飴屋 一度twitterで書いたことがあるけど、それは私も感じました。もう「UTAU」という言葉は、歌声合成ツールUTAUだけのものじゃなくて、UTAUという文化として、皆のものになってしまったんじゃないか。そういう感覚はあります。
―― もしボーカロイドと比べる点があるとしたらそこですね。なんか歌声合成とか技術的な話はどうでもいい気がしてきました。
飴屋 私の立ち位置はまさにそこです。今日は話ができて良かった。私も考えが整理できたし。
―― 僕も目からウロコでした。本当にありがとうございました。
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。
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