ドットコム時代にデータセンターの建築ラッシュが起こってから、すでに10年が経つ。この間、データセンターはITシステムの基盤インフラとして定着したが、その要件も大きく変化してきた。今回はモジュラー型データセンター「SGI ICE Cube」を提供する日本SGIに、データセンターのコスト構造について話を聞いた。
重厚長大なデータセンターからエコ重視へ
モジュラー型データセンターとは、可搬性に優れたコンテナユニットなどにラックを設置し、IT機器を集積する新しいタイプのデータセンターを指す。ファシリティの建築コストや電力コストを大幅に下げられるうえ、需要が増した際に逐一増設できるという柔軟性が大きなメリットだ。すでに米国ではモジュラー型データセンターの導入が進んでおり、昨年から外気冷却効果の実証実験を行なっていたIIJ(インターネットイニシアティブ)も5月に建設を正式発表した。
こうしたモジュラー型データセンターが注目される理由は、いまのデータセンターのコストに関する大きな課題がある。クラウドコンピューティングの本格的な導入期を迎え、事業者間の競争は激化する一方。しかし、データセンターの構築と運営には多大なコストがかかり、事業者にプレッシャーをかける。イチからデータセンターを建築する場合、建設の際には土地建物や設備、IT機器などの初期投資と減価償却費がかかる。また、運用の際には、IT機器や空調などの電力コスト、運用保守の人件費などが継続的にかかってくる。もちろん、ここにはソフトウェアのライセンスや開発費、保守費などは含まれていない。日本SGI マーケティング本部 データセンター戦略企画担当部長 増月孝信氏は「まず初期投資に関しては、土地建物や設備、IT機器など1000ラック規模で100~150億円くらいの投資が必要になります。電力代に関しては、サーバー1台を3年間使用すると、その電力コストはサーバー購入価格を上回る費用になります」と語る。
これらのうちコスト削減の鍵となるのが、電力消費と冷却である。サーバーの台数が増えるとともに消費電力はうなぎ登りに上昇しており、そのサーバーを冷却するための空調設備も多くの電力を消費する。データセンターの消費電力のうち、IT機器の占める割合は3割で、空調設備で3割以上の電力を消費しているのが実態だ。こうした電力消費と冷却の問題を解決する手段として、モジュラー型データセンターは大きな注目を集めている。増月氏は「エコロジとビジネスの両立を多くのデータセンター事業者さんが悩まれています。そこでSGI ICE Cubeで省エネ化で実現し、削減したコストをビジネスに回していただきます」とエコとビジネスの両立を大きなテーマに据えていると語る。
(次ページ、1200台のサーバーで年間5500万円以上のコスト削減)
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