新宿に拠点を置くIT企業であるアリスは、2010年からソリューションに力を入れ始め、低価格なサーバーとストレージを提供開始している。ある意味、「無個性」ともいえるコモディティ化されたこれらの「普通のハコ」は、大手の通信会社やSNSプロバイダーを魅了している。
韓国大手IT企業で1万台規模の導入を誇るサーバー
アリスが販売を手掛ける1つ目の製品は、韓国のイースリム・コリアの「e-Slim Server」。イースリム・コリアは2002年に設立されたIT企業で、データセンター向けのx86サーバーを提供している。2007年には日本法人イースリム・ジャパンを設立し、日本国内での製品供給を開始している。
イースリムのサーバーはすべてラックマウント型で、1U/2Uの製品のほか、数多くのHDDを搭載できる5U(最大48TB)ストレージサーバーまで幅広いラインナップが用意されている。データセンターがメインターゲットで、遠隔管理のための仮想コンソールを提供する「ESMS」というソフトウェアが標準搭載されている。
中身はインテル製のCPUやチップセット、DDR3メモリ、80PLUS認証電源など、とにかく汎用性の高い部品を用いており、ある意味「無個性」とさえ呼べるかもしれない。そのかわりHPやデルと比べて7割~8割くらいという低廉な価格が大きな魅力。そして、なにより韓国国内で幅広い顧客への実績がある。「ヤフーコリアやDAUM、SKテレコム、NHNなど韓国を代表する通信会社やSNSプロバイダー各社に1万台規模の導入実績があります」(アリス 開発営業部 ソリューション営業課 リーダー 李敏碩氏)という。これらを支えるのは高い信頼性で、0.1%という初期不良率、3.42%という障害発生率もきちんと公表している。
とはいえ、日本法人イースリム・ジャパンではなかなか韓国と同様の大きな成功に結びつかなかったのも事実。レンタルサーバーサービスや韓国オンラインゲームの日本法人にて採用されたものの、出荷数は数千台にとどまった。そのため、2010年7月にイースリム・コリアは日本国内総販売代理店契約をアリスと締結し、日本法人イースリム・ジャパンの営業権をアリスに譲渡したというのがここまでの経緯である。
アリス 開発営業部 部長 中山琢磨氏によると、検証機をユーザーに貸し出すと高い評価を得られていたが、今までは販売チャネル政策とメンテナンス(アフターフォロー)の2つが弱かったという。そのため、「日本と違い、韓国では製品のケアパックやワランティの文化がなく、代替機を交換するサポートメニューのみでした。ですから、私たちはダイワボウ情報システム(DIS)さんを筆頭にディストリビューター各社と提携し、販売網の拡大、大手サーバーメーカーと同様の保守パックメニューを作成し、全国保守の体制を構築しました。また、案件希望によっては顧客の要望に沿った保守メニューの提案も可能にしています」(中山氏)という。
アリスでは、2011年3月20日注文分まで1000台限定の低価格モデルを2機種用意しているという。
OEMの王者「ドットヒル」のストレージ
もう1つのアリスの商材が米ドットヒルシステムズ(以下、ドットヒル)のストレージだ。アリスは2010年10月に日本国内マスターディストリビューター契約をドットヒルシステムズと締結した。ドットヒルはサン・マイクロシステムズ、HP、ストラタスなどへのOEMベンダーとして知られており、現在でも40社以上のOEM、SIパートナーを持つ。2010年8月には累積30万台を達成しており、ある意味ストレージ業界のOEMの王者ともいえる。
製品は2Uのラックマウント型製品で、あらゆる環境に対応する「世界一の頑丈さ」を売りにする。2.5/3.5インチのディスクドライブ、AC/DC電源にも対応し、FCやSAS、10G iSCSIなど豊富なインターフェイスを誇る。最近のストレージは多機能を売りにしているが、スナップショットやボリュームコピー、遠隔管理などのソフトウェアも充実している。「米国ではOEMだけではなく、ドットヒルブランドの製品の売り上げも向上させようとしていました」とのことで、アリスがマスターディストリビューター契約を締結し、エントリモデルの2000と高性能モデルの3000のほか、拡張ユニットのJBODモデルを用意し、導入支援サポートや保守メニューを日本国内用に用意した。こちらも2011年2月28日注文分まで5モデルを半額で提供するキャンペーンを実施している。
低廉な価格でありながら高い実績を誇るこれら「普通のハコ」は予想以上に引き合いがあり、昨今ではHPやデルなどの大手ベンダーがひしめく案件でも勝利を収めることが増えているという。

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