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鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第10回

40万円だけど……エントリーユーザーに最適

親切さに驚きっぱなし! BOSEのホームシアターシステム

2010年07月21日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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映画再生でも広々とした空間をクリアーに再現
その迫力や臨場感はラージサイズ

別売のテーブルスタンド「GTS-20」(左、3570円/1個)はテレビ台の上に設置するときに使う。同じく別売のフロアスタンド「GFS-20」(右、1万5750円/ペア)はリアスピーカーを床置きで使うための背の高いスタンド。どちらも必要に応じて用意したい

 つづいてBDソフトで映画をいくつか見てみた。本機はHDオーディオの「ドルビーTrueHD」にも対応しており、BDソフトの高品位なサラウンドも優れた音質で楽しめるようになっている。

 サラウンドの表現はひとつひとつの音を明瞭に描き、音の配置などもしっかりと再現する。こうした音の定位の良さは、小型スピーカーの得意とするところで、スピーカーとスピーカーの間から音が出てくるような再現もしっかりこなす。部屋全体から音が鳴っているような、包まれるような雰囲気の再現も得意だ。

 高価な価格のシステムだけに、音の実力はかなり優秀。音量的にも8畳間ではボリューム位置の半分ほどで十分なパワフルさを得ることができ、それ以上の広さでも余裕をもって応えてくれる。逆に音量を絞ったときも音が痩せてしまうようなことはなく、ボーカルや声などを聞きやすく調整してくれる。このあたりは、ボーズ独自の自動音声調整機能によるものだ。

 気になったのは、同じHDオーディオである「DTS-HD Master Audio」には対応してないこと。BDソフトでは最近DTS-HD Master Audioだけを採用するタイトルも増えているからだ。試しに再生してみたところ、DTSコア部分だけが再生されるようになっており、ソフトによって音が出ないというようなトラブルは発生しない。

 とはいえ、クオリティ的にはDVDレベルになってしまうわけなので、「ドルビーTrueHD」と「DTS-HD Master Audio」の両方の音声を収録したソフトで聴き比べると、音質傾向の違い以上のクオリティの差を感じてしまった。

 DVD時代は、「ドルビーデジタル」はマンダトリ規格だったので、ドルビーのみの対応でもソフト再生の問題はなかったが、BDでは「ドルビーTrueHD」と「DTS-HD Master Audio」はどちらもオプション規格で、製作者が自由にどちらかを選べるようになっている。BDソフトでは、ドルビーとDTSの比率もちょうど半々になりつつあるので、BDソフトのおよそ半分近くが本来のクオリティで再現できないのは残念。将来的には対応を期待したい。


高級モデルだがエントリーユーザーに極めて優しい
こうした製品にもぜひとも注目を

 ボーズは昔から小さなスピーカーで、大型スピーカーのような迫力ある音を再現することを得意とするメーカーで、それは技術力の高さの証明でもあるのだが、「こんな小さなスピーカーがどうしてこんなに高いの?」と思われがち。

 実際のところ、5.1chスピーカーのシアターセットを探してみても、本機と同じ価格帯には国内製品は存在しない。エントリー向けのモデルなのだから、価格も相応にお買い得なものにしているわけだ。

 が、エントリー向けと高級モデルという要素は決して矛盾しない。オーディオマニアではないので、難しい操作や手間のかかる接続はナンセンスだが、良い音は追求したいという人はいるだろう。5.1chスピーカーシステムとしての実力を考えるなら、このくらいの価格になるのは当たり前と思うし、単品コンポでしっかりとした実力のAVアンプやスピーカーを揃えれば、やはり同じくらいの価格にはなる。

 というわけで、他の5.1chスピーカーシステムとの比較は意味をなさないシステムだなと実感した。同じ高級機だとしても、日本の機器の方向性は、自分で操る高性能スポーツカーで、BOSEの場合は、人を雇って運転させるロイヤルサルーン。国産車ならそのような車種も少ないながら存在するが、国産のAV機器には存在しない。

 この実力を持ちながら、決してマニアックではなく、誰でも安心して使えるフレンドリーさを持ち合わせていることは高級機としてほかにない貴重な価値観だ。こうした立派な高級機を発売できない、国内メーカーの事情がちょっぴり寂しく感じてしまったりする。


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