DVDプレーヤーやBDレコーダー/プレーヤーには、メーカーのロゴマークとは違うさまざまなマークが本体に付いていることに気付いた人も多いだろう。これが何かというと、多くは対応するサラウンド方式のマークなのだ。一般には5.1chサラウンドとか、7.1chサラウンドと言われるサラウンド方式だが、その種類は実に多い。
ホームシアターを自分の家でも実現しようと思ったとき、スピーカーが5本(あるいは7本)とサブウーファーが必要ということくらいは知っていても、対応するサラウンド方式のことはあまりよく知らず、プレーヤーやAVアンプを選ぶときにわからなくなってしまう人も多いだろう。
また、「前方スピーカーだけで後方の音も再現できるバーチャルサラウンドがある」などと言われると、ますます混乱してしまうかも。そこでホームシアターで採用されるサラウンド方式について解説してみよう。
サラウンドの種類は、映画の進化とともに増えていった
現在のサラウンド方式の種類がこんなに多いのは、実は映画の進化に合わせて次々と新しい方式が追加されていったためだ。わかりやすく説明するために、まずは簡単に映画の歴史を振り返ってみることにする。
映画の音も、初期はモノラル(1ch)だった。次いで左右が独立したステレオ(2ch)になる。映画の映像がモノクロからカラーとなり、画面も4:3のスタンダードサイズから横長のシネスコサイズなどに進化し、臨場感を高めていったのと同じように、音も進化していったのだ。
そして、いよいよ映画にサラウンド音声が採用される。これが「ドルビーサラウンド」だ(映画用音声フォーマットとしては、「ドルビーステレオ」、「ドルビーSR」などの別の名称が使われるが、ここでは混乱を避けるためにドルビーサラウンドに統一している)。
方式は、フロント左右、センター、そして後方のリアの4ch。前方3chと後方1chで構成されるので、3-1方式とも呼ばれる。これを初めて採用した映画が1976年の「スター誕生」。有名なところでは1977年の「スター・ウォーズ」だ。
この頃は、音声記録はまだアナログ記録で、しかも4ch分の音声を従来と同じ2ch分の音声としてフィルムに記録していた(マトリックス記録)。
デジタル記録の採用で、サラウンドの効果が飛躍的に向上
「ドルビーサラウンド」は、当時としては十分な臨場感があったが、アナログのマトリックス記録のため、後方の音は7kHz以下に制限されており、現在のサラウンド再生のように、音が前方から後方へ自由自在に動き回るような効果は得られなかった。
そこで、当時としては最新のデジタル記録と音声圧縮技術を採用することで、前方3chに加えて、後方もステレオ化された2ch、低音専用の0.1chを加えた5.1ch方式のドルビーデジタルが登場する。
5ch分の信号はそれぞれ独立した信号として記録され、後方チャンネルの帯域制限もないため、サラウンドの効果は飛躍的に向上した。これを初めて採用した映画は1992年の「バットマン・リターンズ」だ。
これとほぼ同時期に、dts社が独自のサラウンド方式である「dts」を開発。「ドルビーデジタル」がフィルムにデジタル音声を記録していたのに対し、「dts」はフィルムには同期用のタイミング信号だけを記録し、音声は別途CD-ROMで供給する方式を採用した。
CD-ROMの同期再生のために映写機の改良や対応機への交換が必要なデメリットはあったが、フィルムの狭いエリアに音声を使わないため、より情報量が多く高音質なサウンドを実現できることが特徴。チャンネル数は5.1chで、デジタル記録、全チャンネル独立記録というのは共通だ。1993年の「ジュラシック・パーク」で初採用されている。
このほか、映画館だけの方式だが、ソニーは「SDDS」という7.1chのサラウンド方式を開発している。こちらは1993年の「ラストアクションヒーロー」が初採用作品だ。これは同じフィルムのそれぞれ違う場所に信号を記録するため、1本のフィルムでも3つの方式にすべて対応できた。映画館ではそれぞれ対応する映写機を使うことで自由にサラウンド方式を選ぶことができる。