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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第157回

AIだけでゲームは作れるのか? Codexに6本作らせて見えた実力と限界

2026年05月18日 07時00分更新

文● 新清士

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Codexの性能がすごいぶん、人間の役割はさらに大きく

 Codexで多様なジャンルのゲームを短時間で開発できることが伝わったのではないでしょうか。これらのゲームの開発のために、筆者は一切コードを書いていません。Codex AppでのGPT-5.5とのチャットのやり取りだけで進めており、コード内容の確認さえしていません。Codexを優秀だと感じるのは、一発で、バグなく動作するバージョンまで一気に作ってくるところです。

 もちろん、限界はあります。まず、どこかで見たことがあるようなゲームのクローンを制作するほうが作りやすいようです。まったく見たことがないような、オリジナリティあふれるゲームを、Codexに最初から作らせるのは簡単ではないようです。これは、過去に人気があり、歴史的に積み重なっている古典的なゲームほど、インターネット上に多数の学習可能なデータが存在するのではないかと思われます。

 また、この短時間で作らせたゲームは、ほぼすべてが大して面白くありません。10分もプレイすれば飽きてしまうような粗い完成度で、ゲームとしての面白さを十分に獲得できているとは言えません。少なくとも現時点のLLMでは、ゲームの表面的なフレームを容易に作り出せるものの、何が人間にとって面白いのかを再現することはできないと推測できます。

 もちろん、ここからが、人間にとっての重要な役割が出てきます。様々なアイデアを出し、Codexに修正や拡張の指示をして、ディレクションをしていく必要があります。現状、簡単に作ったゲームがあまり面白くないのは、作り手のこだわりがまったく込められておらず、インタラクションそのものに人を引きつける粘りがないからなのでしょう。

よりパーソナライズされたゲームの時代へ?

 ただ、ゲーム開発の進め方は、すでに大きく変わろうとしています。AI登場以前は、この程度のモックを作るにもそれなりのプログラミングの専門知識が求められ、それを作るのは難しかったからです。しかし、スタート時点の達成水準が、AIによって大きく引き上げられつつあるのです。これは世界的な大きなムーブメントになっているインディゲームの分野にも、大きく影響をもたらすでしょう。それにより、まだ見たことがないゲームが登場する可能性が十分にあります。

 とはいえ、簡単なプロトタイプを作れることはわかった。では、そこから踏み込んで「何時間ものプレイに耐えうるような、本格的なゲームをAIとともに作ることができるのか」ということは、まだはっきりしていません。部分的にAIを使ってゲームを作ることはできても、たくさんのデータを扱い、複雑なゲームバランスを持つようなゲーム開発で、AIが入ったことで効率が大幅に良くなったという事例はまだまだ限られています。それでも、この先には必ず大きな成功例が登場してくると予想はできます。

 一方で、本文でご紹介した6本のゲームは、いずれも「30分〜1時間で作れる」ものでした。AIによって、これほどゲーム開発が容易になると、大量販売を前提とせず、特定個人を楽しませるためだけに作られる「よりパーソナライズされたゲーム」が登場する時代へとシフトしていくのかもしれません。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。2026年3月に発売したクラフト系サバイバルゲーム『Exelio』のAIによるキャラクターデザイン、3Dプロップの作成を担当。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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