誰も知らない結末へ――

【やるべき1作】HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』はもはや新説レベル ロトの伝説はここに生まれ変わる【ドラクエ1&2】

文●Zenon/ASCII

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 これはただのリメイクじゃない――新説『ドラゴンクエスト』だ。

 スクウェア・エニックスが10月30日に発売したHD-2D版『ドラゴンクエストI&II』(※)。本稿では先行して受領したPlayStation 5版のコードによるプレイレビューをお届け。本作の魅力を紹介できればと思う。
※本記事内では『ドラゴンクエストI』を『DQI』、『ドラゴンクエストII』を『DQII』と略しています

<目次>
●「巻物」の存在がエモい!
●便利機能で冒険もサックサク
●追加エピソードがすごく良い
●もはや“新説”と言うべき内容――これはやるべき1作

「巻物」の存在がエモい!

 本作で追加された新システムの1つ「巻物」。宝箱から手に入れたり、町の本棚から入手できたりする。巻物ごとに使えるキャラクターは決まっているが、これを使うとレベルアップ以外で特技や呪文の習得ができるので、ダンジョンや町をすみずみまで探索する重要性が増した。

巻物を使うと文字が光で浮かび上がり、使用者に吸い込まれていく演出が見られる。画像は「とうぞくのはな」習得時のもの

 さて、この巻物だが、記したのはかつて世界を救った「伝説の勇者ロトとその仲間たち」らしい。使えば誰もが技を習得できるわけではなく、「資質」のない人間には効果がない。

 いずれ来るであろう新たな脅威に備え、鍛え上げた秘伝の能力を巻物という形で後世に残してくれたご先祖様たち。先にHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(DQIII)をプレイしていた筆者は、かつての仲間たちの姿が脳裏に浮かんでとてもエモい体験ができた。

 ちなみに『DQI』の勇者はすべての巻物を習得可能で、盗賊やまもの使いの便利スキルも覚えられた。さすがはロトの血と意志を継ぐ者と呼ばれるだけのことはある。

世界を救った伝説の勇者ご一行、旅立ちの記念撮影。「巻物」の存在が、彼らの冒険と今を繋ぐ架け橋となる(『DQIII』より)

便利機能で冒険もサックサク

 特技の追加で冒険のバランスが一新されているほか、便利機能の追加で快適に遊べるようになったのも本作の特徴。

 「目的地マーカー」をセットしておけば次に行くべき場所がわかるので迷うことはないし、フィールドの各所にある隠しマップ「ひみつの場所」も大まかな位置を表示してくれる。ただし、キラキラ(フィールドに落ちているアイテム)の位置はマップなどでフォローされないので、自分で探す必要がある。

マップに表示されている複数の輪。「だいたいこの辺りに“ひみつの場所”があるよー」と教えてくれる

水の表現も美しい。HD-2Dは本当に良い発明だと思う

 さらに難易度を一番易しい「楽ちんプレイ」にし「死なない設定」をオンにすれば、HPが決してゼロにならない公式チート機能も使える。RPGが苦手だったり、早く物語を進めたい人はこれらを活用するとサクサク遊べるはずだ。

システム設定のゲームモード項目。快適な冒険を送るか、いばらの道を歩むかはプレイヤーしだい

 また、『DQI』『DQII』共通の新要素として「5つの紋章」がある。なかでも「いのちの紋章」を手に入れると、「超絶技」という特別なワザが使えるようになる。主な使用条件はHP50%以下で、戦闘中に特定の特技や呪文のコマンドを選び、ボタン長押しすると上位スキルへ変化するというものだ。戦略性が増して良い要素だと思う。

「ドラゴン斬り」は「竜王斬り」へ変化。派手な演出と強力無比な威力を発揮する(およそ倍くらいのダメージが出る)

 前述の「HPがゼロにならない機能」を使うと、新要素「超絶技」の使用条件(HP50%以下)もラクに満たせる。どうしても勝てない敵がいたらこの方法で超絶技を連発すれば気持ちよく勝てるだろう(普通に使うと次のターンで負けるギャンブルのような要素のため使いどころが難しい)。

追加エピソードがすごく良い

 1つだけ追加エピソードの例を出させてもらうと、原作の『ドラゴンクエスト』では竜王の城へ渡るためのアイテム「あまぐものつえ」を手に入れるため、「ぎんのたてごと」を入手する必要があった

 しかし本作では、あまぐものつえを獲得する条件が変更。新たにエピソードが追加され、別の条件を満たすことで入手できるようになっていた。

負けるとわかっている戦いに若者を送り出すことなどできぬと言う賢者

 こうした追加エピソードはいくつもあるが、無理矢理ではなく自然な形で落とし込まれていると感じた。冒険に深みを与え、ボリュームもアップしているので満足度が高い。

 ローラ姫がなぜ洞窟に監禁されていたのか、『DQI』の勇者はロトの血をひいているのかなどの疑問も、追加エピソードや会話で補完される。

本来『DQI』にはいなかったはずの盗賊カンダタがいる理由とは? 『DQIII』のカンダタにゆかりのある場所で衝撃の事実が明らかになる……かも(ヒント:教会の2階)

 また、『DQII』では仲間たちがよくしゃべるため、ストーリーがすごく人情味ある感じで楽しいのも嬉しいポイント。サマルトリアの王子がとくによくしゃべり、イベントや戦闘がとてもにぎやかで、ある種の感動を覚えるほどだった(直前まで『DQI』の一人旅をしていたせいもある)。

空気が読めないサマルトリアの王子。ノーテンキな発言で雰囲気をなごませてくれるあたりはとても「らしい」キャラクターだと感じた

もはや“新説”と言うべき内容――これはやるべき1作

すべての原点であるドラゴン戦。これぞ「ドラゴンクエスト」だ!

 HD-2D版『DQIII』は、なるべく原作を変えずにクオリティだけを上げることを目指したのに対し、HD-2D版『DQI&II』は思いっきり変えるが根っこは変えない、という方針だとプロデューサーの早坂将昭氏は語っていた。テーマは“ロトの物語の大団円”とのこと。

 実際にプレイするとその方針はすごく伝わってきて、「早速知らない展開が来た!」「お約束は守ってる、えらい」「演出とボイスが付いたことで感情移入がスゴいぞ!」「世界はこんなに広く、美しかったんだ……!」など、個人的に感動するシーンも数多く存在した。

「ドラゴンクエスト」にボイスが付くのは賛否あると思うが、筆者は大変良いと感じた(設定でオフにもできる)。ムーンブルクの王女プリンちゃん可愛い(名前は変更可)

 また、『DQII』ではサマルトリアの王女がプレイアブルキャラクターとして追加。まさかの4人旅で冒険はより賑やかに! 序盤にサポートメンバーとして参戦するが、気まぐれな行動を起こすこともある遊び人のような性能で驚かされる。サマルトリアの王子と似て多才で、差別化もできていると感じた。

サポートメンバー時、サマルトリアの王女には行動指示ができず、習得スキル構成なども未知数だった。体術や呪文で戦う模様

 本作は、ただグラフィックを現代風にしただけのリメイクではなく、大きな変化が加わったもはや“新説”『ドラゴンクエストI&II』というべき作品。時代を越え、物語やキャラクターの解像度を引き上げた“最初の三部作”に相応しい出来だと感じた。

 HD-2D版は一気に作られたからこそ「ロト三部作」としてのまとまりもあるし、通して遊ぶことでしか気付けない仕掛けやエモさもある。これは初めて遊ぶ人はもちろん、昔原作版をやった人も【やるべき1作】であると、自信をもってオススメしたい。

『DQIII』では呪いの研究をしていた家の子ども

『DQI』では装備の呪いを解けるようになったおじいさん

『DQII』では子孫が新たな道を見つけている。連綿と続く歴史の流れに「ロトの伝説」の息吹を確かに感じる

 

【ゲーム情報】

タイトル:ドラゴンクエストI&II
ジャンル:RPG
販売:スクウェア・エニックス
開発:アートディンク&SQEX浅野チーム
プラットフォーム:Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PlayStation 5/Xbox Series X|S/PC(Steam/Microsoft Store on Windows)
発売日:発売中(2025年10月30日) ※Steam版は10月31日予定
価格:7678円(パッケージ版/ダウンロード版)
CERO:B(12歳以上対象)

※本記事内の画面写真は一部拡大・トリミング処理を施しています。