あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ第回

屋久島から全国へ! ヒョンデのEVバス第一号が納車 運行はGW明け予定

文●鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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 今月22日、屋久島にてヒョンデの新型中型電気路線バス「ELEC CITY TOWN(エレク・シティ・タウン)」の納車式が行なわれたので、その様子をレポートします。

カーボンフリーの電気で動く電動バスが屋久島に!

 九州の南、大洋に浮かぶ屋久島は、世界自然遺産に認定されるように緑豊かな島です。その特徴は、島全体が大きな火山岩からなり、九州最高峰の宮之浦岳(1936m)を筆頭に標高1000m超の山が40ほどもあるということ。そして1年の半分が雨と言われるほど、雨の多いということです。

 土地に高低差があり、水が豊かということで水力発電に向いており、実際に島で使われる電力の約99%が水力発電で賄われています。しかも現在のところ発電能力に対して、島の生活で使われる電力は1/4ほど。それ以外は産業用に使われているとか。つまり、カーボンフリーの電力が有り余っているのです。

納車式で最初の挨拶を日本語したのが韓国から駆け付けたヒョンデ・グループ副会長の張在勲(チャン・ジェフン)氏でした

ヒョンデの電気バスの導入を決めたのが岩崎産業の代表である岩崎芳太郎氏。九州エリアの経済界の重要人物です

 その特徴を活かし、屋久島町では15年ほども前から積極的に電気自動車(BEV)の導入を進めてきました。屋久島で電気自動車を購入した人に対しては、国の補助金以外にも1台につき55万円という街の補助金が用意されています。ちなみに、屋久島のような離島では、ガソリンの価格が高いのも常識です。筆者がチェックしたところ、島のガソリンスタンドで販売されるレギュラーガソリンの価格は200円ほどになっているようです。

 また、縄文杉に代表されるような屋久島の自然にとっても、エンジン車よりも排気ガスのない電気自動車の方が環境に優しいという点も見逃せません。

 そんな屋久島で路線バスを運行している会社が、鹿児島を本拠とする岩崎産業です。同社は鹿児島県内のバス路線の約75%を運行するように、南九州エリアで最大級の公共ネットワークを展開する企業です。今回、ヒョンデが新型中型電気路線バス「ELEC CITY TOWN」を5台、納車したのが岩崎産業でした。

岩崎産業の岩崎氏やヒョンデの張氏をはじめ、屋久島町長の荒木氏などがテープカットを行ないました

ヒョンデの電気バスの日本導入第一弾となる「ELEC CITY TOWN」

 岩崎産業の代表である岩崎芳太郎氏は、ヒョンデの電気バスを導入した理由として、品質の高さをあげます。「ヒョンデの貸し切りバスであるユニバースを10年ほど使っていますが、燃費が良く、故障もあまりしません。さすが世界3位の自動車メーカーであるヒョンデだけある」と説明します。

 さらに「今あるディーゼル・エンジンのバスを電気バスに切り替えてゆく方針」であるとも言います。その理由は、車両のメンテナンス費用の安さや、給油用インフラ刷新の困難さ、補助金の存在などをあげます。ちなみに、ヒョンデの「ELEC CITY TOWN」には1台あたり1769万2000円もの補助金が交付されます。

ヒョンデの電動バス、日本導入第一弾だからこそ
日本でのテスト走行は慎重に行なった

 そんな「ELEC CITY TOWN」は、ヒョンデによる電気バスの日本第1弾モデルとなります。乗員定員55名の中型路線バスで、145kWhのリチウムイオンバッテリーを天井部に備え、一充電走行距離208km(韓国環境部認証値)の性能を持っています。モーター出力は160kW (約218PS)。充電はチャデモによる急速充電で最短50分。おもしろいのは入力用のコネクト部が2つあって、2つ同時に行なうことで、より早い充電が可能になるそうです。

「ELEC CITY TOWN」には145kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載され、航続距離は208km。2口あるチャデモによる急速充電は最速50分となります

 車両安定装置やドライバー異常時対応システムなどの安全装置を装備。座席には乗客向けのUSB充電端子が用意されています。ヒョンデはこの屋久島への納車を皮切りに、本格的に日本の電気バス市場へ挑戦することになります。

 また、ヒョンデはこの日の納車にあたり、事前にテスト車を用意して、屋久島の急峻な運行コースに対して時間をかけて試乗を重ねたとか。その結果、片道数十kmにもおよぶ上り坂のコースでも、何の問題もなく走行ができたそうです。ヒョンデにとって重要なモデルということで、慎重に導入されたことがうかがえます。

「ELEC CITY TOWN」の運転席。ドライバーモニターなどが備わっています

「ELEC CITY TOWN」の室内。座席横にはUSB端子が設けられています

 納車式には、バスを導入した岩崎産業の岩崎氏をはじめ、屋久島町長の荒木耕治氏、ヒョンデの日本法人の社長である七五三木敏幸氏が顔を揃えるだけでなく、韓国からヒョンデ・グループ副会長の張在勲(チャン・ジェフン)氏も駆け付けました。屋久島への電気バスの導入は、バス会社だけでなく、地元の自治体、そしてメーカーにとっても重要なイベントであったのです。

 納車式は、各参加者の挨拶にはじまり、テープカットセレモニー、記者会見、そして会場周辺をコースにした「ELEC CITY TOWN」の同乗試乗が行なわれました。

インバーター類は、車両の後ろにまとめられています。2口あるチャデモの入力から1つのインバーターにまとめられ、屋根の上の2つのバッテリーに電力を送ります

乗車定員51名ですが、座席は18席となります。低床であり、乗降中は車体を傾ける機能も備わっています

早ければゴールデンウィーク明け
遅くとも梅雨明けには運行スタートの予定

 「ELEC CITY TOWN」の走りは、電動車らしいスムーズかつ、静かなものでした。一番騒々しいのはエアコンの音だったりします。また、ギヤチェンジやクラッチミートのショックがないのも特徴です。聞くところによると、回生ブレーキはオフにして空走させることもできれば、オンにして効き目を2段階に調整することもできるため、運転に慣れれば、ペダルの踏みかえが減って運転が楽になるとか。

今回の納車にあわせ、ヒョンデから岩崎産業と屋久島町に、IONIQ5とインスターが贈与されました

 岩崎産業の担当者によると、運行は「なるべく早く、できればゴールデンウィークの連休明けには始めたい」とのこと。ただし、縄文杉を見に行くトレッキングへのコースにはシートの数が足りなくなるかもしれないため、ハイシーズンは山岳コースではなく、海沿いの平らなコースでの運用する予定だそうです。つまり、最悪でも梅雨明けの屋久島のハイシーズンになれば、電気バスの運行が始まります。

 「世界自然遺産の屋久島で、ほぼカーボンフリーの電力で走る電気バスに乗る」というのも、旅の目的なるのかもしれません。

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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