知財がカギ スタートアップと大企業の共創事業のポイント
「初めての共創ビジネスに効く、スタートアップ・新規事業担当者向け知財セミナー by IP BASE in大阪」レポート
提供: IP BASE/特許庁
共創ビジネスが前提だからこそ――NTTコミュニケーションズにおけるオープンイノベーションと知財の取り組み
続いて、NTTコミュニケーションズの松岡和氏と木付健太氏が登壇し、「NTTコミュニケーションズにおけるオープンイノベーション活動及び知財取り組みについて」と題して講演した。
最初に木付氏が、NTTコミュニケーションズのオープンイノベーションプログラム 「ExTorch」の取り組みを紹介した。
「ExTorch」は、NTTコミュニケーションズの持つアセットと、スタートアップを中心としたパートナー企業の技術を掛け合わせて、新たな価値を共創するオープンイノベーションプログラムだ。
2019年と2021年の2回、共創プログラムを開催。2019年の第1期では6件のプロジェクトを採択し、1件のサービスがリリース、1件が事業化検討継続中だ。2021年の第2期では5件を採択し、うち3件が事業化検討継続中となっている。
第2期までは年1回のイベントに合わせた採択、伴走プログラムだったが、2022度以降は通年で支援プログラムを実施する体制に強化された。ExTorch事務局がパートナー企業やNTTグループ各社と情報共有しながら、パートナーとのマッチングや企画立案の壁打ち、外部メンターの支援から広報、知財、法務との連携などを常時行い、新規事業創出とオープンイノベーションを加速させていくという。
続いて、松岡氏が知財の取り組みを説明した。
NTTグループのビジネスモデルは「共創」が大前提となっているという。単独で事業を行うことは少なく、スタートアップなどのパートナー企業と一緒に技術やビジネスモデルを開発し、サービス提供事業者にICTツールを提供して、エンドユーザーがサービスを利用するという流れだ。
こうした中で、NTTコミュニケーションズではパートナーとなるスタートアップに対して、知財支援活動を行っている。具体的には、スタートアップ側の希望に応じて、知財の啓発、競合企業の特許調査、出願戦略の提案、発明発掘、出願手続きや費用面のサポートをしている。
また大企業との共創にも取り組んでいる。共創コミュニティ「OPEN HUB」を運営し、社会課題を起点として新規ビジネスの創出や社会実装をめざす活動を行っている。この「OPEN HUB」の新規事業創出の取り組みから、新規事業創出における知財の活用例を松岡氏は紹介した。
まず「ビジネスアイディエーション」での知財活用について。漠然とアイデア出しをすると、ほかと似通ったものや具体性に乏しいアイデアになりやすい。そこで、与えられたテーマ分野の特許調査を行い、特許情報を参考にしながら差別化したビジネスアイデアを創出することで、独自性の高いアイデアになり、新たな知財の獲得にもつながるという。
ビジネスアイデアを実現するためにも特許調査を活用している。ビジネスモデルを構成する要素技術について特許を起点に調査を行い、社内外の優位性の高いアセットを特定し、その技術やアセットを持つ部門や社外スタートアップとをマッチングすることで、競争力のある新規事業に仕立てるという。
差別化に貢献する知財活用として、オンラインワークスペース「NeWork」のケースを紹介。類似のオンライン会議サービスでは、デスクや椅子を配置するオフィスレイアウトが多いが、「NeWork」では、会議室や参加者をバブルで表現する独自性の高いデザインと機能を知財で保護して差別化している。さらに、競合企業と比較して知財の優位性を築けているかを可視化し、経営層への報告や顧客へのアピール材料として活用しているそうだ。
最後に、企業との共創や出資獲得における知財の重要性について。最近は企業の知財部でIPランドスケープが普及し、スタートアップへの出資や提携判断に利用されているという。そのため、知財を持たないスタートアップは、M&Aや出資、提携の際にマイナスの判断になる可能性がある。ぜひスタートアップには知財取得に積極的に取り組んでほしい、と助言した。