東西のディープテック、ライフサイエンス分野のスタートアップが独自技術で競い合う
「東西サイエンスパーク DAY 2023」
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ここからは京都リサーチパークの推薦企業3社によるピッチを紹介していく。
電気刺激で脳卒中後の言語障害を緩和するGhoonuts株式会社
Ghoonutsは経頭蓋電気刺激により脳の働きを促進することで、脳卒中後の言語障害を緩和するための研究開発に取り組むスタートアップだ。脳卒中後、患者の20〜30%に言語障害が残るといわれている。しかし、限られたリハビリ期間には身体機能の回復が優先されるため、運動はできるが、脳機能の低下により仕事への復帰が難しいケースが多い。
言語障害を改善する電気刺激は複数存在するが、患者によって効き目に差が出る。そのためGhoonutsは脳波による脳活動の評価と脳刺激の両機能を搭載したデバイスの開発を進めている。パーソナライズされた脳刺激により、治療効果を最大化する技術だ。現在、健常者に向けたPoCを終え、患者を対象にした特定臨床研究に取り組んでいる。
Ghoonutsは上述の脳波計測と電気刺激デバイスを第二弾のプロダクトとして開発しつつ、第一弾として非医療機器の刺激デバイスを展開していく。コンパクトな仕様で、在宅ケアやリハビリ施設での活用を想定している。都志宣裕代表取締役は「患者が実際に利用できるプロダクトを目指し、資金調達や大学、医療機関との連携を進めていきたい」と語った。
がん免疫治療法の効果を高めるワクチンを開発している株式会社イムノロック
イムノロックはビフィズス菌を利用した経口ワクチン技術の事業化に取り組んでいる。具体的には抗がん剤や新型コロナウイルスのワクチンなどを開発している。従来、治療に効果的な抗原タンパク質の経口摂取は困難とされていたが、イムノロックは経口による腸管免疫系へのデリバリーに成功した。
がんには大きく分けて2種類のタイプがある。免疫的に活性化しており、がん免疫治療法が聴きやすい「hot tumor(熱いがん)」と免疫的に不活性で免疫治療法が効きにくい「cold tumor(冷たいがん)」だ。イムノロックのワクチンには「cold tumor」の免疫機能を呼び覚まし「hot tumor」にすることで、がん免疫治療法を有効化する機能がある。
イムノロックは2022年に治験薬の製造を終え、2023年1月からフェーズ1と定めた治験を実施している。出口戦略としてフェーズ1でのイグジットをベストと捉えているが、難しい場合は海外の企業や投資家とのアライアンスにより、フェーズ2の試験を実施した後のイグジットを見据えているという。
睡眠時無呼吸症候群を治療する非接触型機器を開発している株式会社マリ
マリは非接触の睡眠時無呼吸症候群を治療する装置を開発しているスタートアップだ。睡眠時無呼吸症候群は一般的に、いびきや睡眠不足を引き起こすと認知されている。しかし、最大の問題はいびきにより同棲するパートナーが睡眠不足に陥ることで、米国では3番目に多い離婚原因に挙げられているという。
既存のソリューションとして一般的なのが、低呼吸時に空気を送るマスク型の機器だ。しかし、寝づらくなるうえ、本人に自覚症状がないことも多いため、利用が中断されやすい。そこでマリは非接触型の機器を開発している。レーダーが低呼吸や無呼吸を検知すると、低周波音が照射される。目が覚めない程度に覚醒レベルを高め、正常な呼吸を再開させる仕組みだ。
現在、検知の技術が完成し、照射の技術を組み合わせている段階だ。機器の完成後には治験を実施していく。またレーダーによる検知はプライバシーの保護性能が高い技術だ。瀧宏文代表取締役は「将来的に医療機関での遠隔モニタリング技術としての可能性も見据え、開発を進めていきたい」と語った。
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