お寺の4割が倒産の危機⁉お坊さんも「檀家満足度」を考える時代がやってきている
「坊主丸儲け」と言われたのも今は昔。少子高齢化の進む地域では檀家数が減少し、多くのお寺は経営の危機に直面しているという。地域のお寺は本業だけでは生活できず、兼業も少なくないが、住職不在で法要の相談など連絡が取れないことも多く、コミュニケーション不足は檀家離れをますます進めている。お寺は全国で約7万5000あるが、そのうち2万が空き寺で、2040年には4割のお寺が倒産するとも予想されている。令和5年度のICTスタートアップリーグに採択されている株式会社TERA Tech Inc.は、お寺のDX支援でこの問題解決に取り組んでいる。
同社が開発した「テラテク帳」は、年回忌法要のお知らせ業務を支援するサービスだ。紙で管理されていた檀家の家族・親族の連絡先、墓地の登録情報などをクラウドで一元管理し、法要の2カ月前に檀家の関係者全員へ案内を発送してくれる。外出中でもメールやWebで檀家との接点を増やすことで、顧客ならぬ檀家満足度の向上が期待できる。お寺は地域に密着した檀家情報を持ち、初詣や祭事などのイベントも含め集客では有利な面もある。
文書情報のデジタル化というサービス自体に目新しさはないものの、行政や企業が見落としていた宗教現場の業務課題への気づきがある。革新的なアイデアや技術でなくとも、既存技術をうまく活かせる場所を探し出すこともスタートアップの役割のひとつかもしれない。
文:スタートアップ研究部
ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。
※ICTスタートアップリーグとは?
ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
https://ict.startupleague.go.jp/