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東西のディープテック、ライフサイエンス分野のスタートアップが独自技術で競い合う

「東西サイエンスパーク DAY 2023」

特集
ASCII STARTUP イベントピックアップ

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 2023年4月21日、京都リサーチパークで、「東西サイエンスパークDAY 2023」が開催された。起業家支援をミッションに、株式会社ケイエスピーはかながわサイエンスパークを、京都リサーチパーク株式会社は京都リサーチパークを運営。東西のスタートアップエコシステムの連携強化を目的として、2021年10月に連携協定を締結した。

 両社が支援するスタートアップが事業会社や投資家と接点を持つ機会として、2022年からピッチイベント「東西サイエンスパークDAY」を実施、今回が2度目の開催となった。東西のスタートアップが3社ずつ登壇し、オーディエンス投票で東西の勝敗を決める。

 第1回は京都リサーチパークが勝利し、第2回となる今回はかながわサイエンスパークが勝者となった。本記事では当日のピッチの模様を、かながわサイエンスパークの登壇企業3社、京都リサーチパークの登壇企業3社の順で紹介する。ディープテックやライフサイエンス分野の最先端技術に興味がある方はぜひご覧いただきたい。

独自の超断熱材で水素社会の実現に寄与する株式会社Thermalytica

ピッチをするThermalytica経営戦略部 篠本遼 部長

 Thermalyticaは独自の超断熱材「TIISA」を開発し、エネルギーロスの削減に取り組むスタートアップだ。日本ではカーボンニュートラルやエネルギー調達リスクの低減などを背景とした水素社会の実現が国策となっている。

 水素社会を実現するためには、9000km離れたオーストラリアから水素を運搬してくることが必要だ。しかし、既存の断熱技術では-253℃の水素を断熱できないため、運搬中に大量に漏れ出しているという。そこでThermalyticaは最高性能の断熱材「TIISA」を独自開発した。

 一般的な断熱材の熱伝導率は30〜40mW/mK、高性能といわれるエアロゲルでは14〜26mW/mKだ。これらに比べて「TIISA」の熱伝導率は1mW/mKと、桁違いの断熱性能を示している。また「TIISA」のかさ密度はエアロゲルの10分の1であるため、利用コストを大幅に削減可能だ。

 「TIISA」は水素社会の実現に加え、EVバッテリーの熱暴走対策といった断熱を必要とするさまざまな分野への応用が期待されている。Thermalytica経営戦略部の篠本遼部長は「地球温暖化について、直近10年間における人類の選択や対策が、数千年に渡る影響を持つといわれている。Thermalyticaは数千年先を見据えて、地球のサスティナビリティを実現したい」と述べた。

AIで持続可能な水処理プラントを設計、運用するFracta Leap株式会社

ピッチをするFracta Leap株式会社 北林康弘 代表取締役

 Fracta Leapは米国AIスタートアップFracta社の子会社で、デジタル技術を活用した水不足の解決に取り組んでいる。2050年、世界で50億人が水不足に陥るという予測がある。また、日本人の1日あたりの水使用量は生活用水や産業用水、輸入食料に含まれる仮想水などをあわせると3000リットルに上るといわれており、水処理技術の抜本的な変革が必要だ。

 Fracta Leapは水処理プラントの設計自動化と運転最適化により、水処理インフラ全体の効率化を図る。水処理プラントは構造が複雑なため、熟練者が膨大な工数をかけて設計に取り組んでいる。しかし、人手不足や水需要の増加により、持続可能な水処理インフラの実現はが難しい。そこでFracta Leapは専門的な技術者でなくても使える水処理プラントの自動設計アプリケーションを開発した。

 また現状の水処理プラントで用いられているRO膜装置はライン全体の消費電力の60%を占め、大量の二酸化炭素を排出する課題を抱えている。Fracta LeapはRO膜装置の運転をAIにより最適化することで、運転費用を4割、二酸化炭素排出量を1割削減することに成功した。今後は東アジアや赤道付近の国など、水不足が深刻なエリアでの技術実装を目指す。

簡易操作のロボットで現場業務をDX化するugo株式会社

ピッチをするugo株式会社 松井健 代表取締役CEO

 ugoはロボットと運用プラットフォームの開発、製造により現場業務のDX化に取り組んでいる。警備や点検、清掃、棚卸しなどの現場業務はDX化が遅れており、人手不足も深刻だ。ugoは遠隔で誰でも簡単に利用できるロボットと運用プラットフォームにより、属人的な業務を効率化する。

 ugoのロボットの特徴は自動でも遠隔でも操作できるハイブリッドな仕様だ。現場業務における作業内容や環境の変化に柔軟に対応できる。ロボットは小型やアーム付きといった5種類のラインナップから用途にあわせて選べる。また、プラットフォームはノーコードで誰でも簡単に業務を自動化できる。

 ugoは事業会社と連携し、ハードとソフトの改善や価格と機能のバランス調整などを高速で実現している。結果として、商業ビルや工場、介護施設、データセンターなどへの幅広い導入実績につながっている。松井健代表取締役CEOは「パートナー企業とのエコシステム形成を最も重視しており、活用事例を共有する自社イベントも毎年開催している。ロボットを活用した新しい産業の創出や海外展開にも取り組んでいきたい」と述べた。

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