特技は「四季報の暗記」というビジネスオタクが「PTA名簿」に目を付けた
起業するならあえて未経験の業界に挑戦するほうがいいという説がある。ICTスタートアップリーグに採択されているpolyfit株式会社の大藪 聡史代表は、「四季報の暗記」が特技というビジネスオタク。新卒で資産運用会社に入社し、前職のデータ分析スタートアップである株式会社プレイドでは財務を担当してIPOを経験した同氏が次のフィールドに選んだのは教育業界だ。
教育現場は、教員の超過労働、不登校やいじめの増加、教育財源の地域格差といった課題を抱えている。同社が提供するクラウドPTA管理ソフト「Polyfit」は、PTA名簿管理や連絡業務を効率化するアプリで、紙の印刷や連絡にかかっていたコストを削減できる。
公開から現在、登録ユーザー数は1万人を超えて導入が広がっている。異業種参入は、内側からでは解決できない問題の打開策を見つけやすいが、既存プレーヤーからの反発も起こりやすい。その点同社は学校正面ではなく、PTAから攻める参入テクニックを見せている。教育委員会の決裁という参入障壁がある学校ではなく、PTA役員向けSaaSとすることで敷居を下げ、クチコミでユーザーを増やす戦略は、ITスタートアップならでは。「教員の働き方改革の盛り上がり」、「文部科学省のコミュニティ・スクールの推進」という機を狙った参入には、投資マニアの視点も生きていそうだ。
文:スタートアップ研究部
ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。
※ICTスタートアップリーグとは?
ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
https://ict.startupleague.go.jp/