世界初の“超軽量・透明”な断熱材、事業化でカーボンニュートラル社会への貢献を目指す
三洋化成工業 事業企画部 大高剛史氏・森宏一氏・福本浩志氏×ティエムファクトリ CEO 山地正洋氏・CFO 倉田真弥氏
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解決したい課題を共有し、お互いに親和性の高いテーマ設定があった
──両社によるオープンイノベーションはどのような経緯で進んでいったのですか。
山地 もともと私は三洋化成工業さんにはずっと興味を抱いていたんです。当社は私が京都大学に研究員として在籍しているときに設立したのですが、その京都に本社がある三洋化成工業さんは“京都つながり”でもありますので、前から組みたいと思っていました。
そうしたなか、当時三洋化成工業の社長だった安藤孝夫さん(現・取締役会長)を共通の知人から紹介してもらいました。コロナ禍の初期だった2020年3月に最初の対話をさせていただき、そこで出資の話題が出て、5月には正式に出資が決定していただけるほど、トントン拍子で話を進めていただきました。
ただし、正直なところ出資面以外の効果は、当時はわかりませんでした。どこまで当社の技術に興味を持ってもらえるのかまで含めて未知数でしたが、おかげさまで研究者間を中心にお互い密にコミュニケーションしながら深い関係を築いていくことができました。
福本 社長直轄で始まったプロジェクトですが、コネクションを持たせてもらっていたときから、研究テーマが立ち上がってきた形です。
SUFAと当社シーズのシナジーが期待される9つのテーマが設定され、整理する場づくりや窓口をつくって、定期的に進捗や取り組みの進め方の議論を両者間で行なってきました。当社の界面活性技術がSUFAの強度・透明度などの素材価値向上に寄与することが期待されるシナジーの一つです。
山地 正直、我々のSUFAについて深く理解してもらい、協業できたメーカーはいままで他にいませんでしたので、やっと本当のパートナーに巡り会えたという感覚を抱いています。
製品がブラックボックスのまま協業していただいてもなかなか成果を出すのは難しいでしょう。お互いにオープンなコミュニケーションが取れたこと、また資本関係を築いてもらえたことも、事業化への本気を感じました。結果的にこうして語ることができますが、同じことをもう一回やれと言われても、なかなか難しい気がしますね。
福本 お互いに包み隠さず、オープンに話せる空気ができていています。
信頼関係が構築できたのも、当社が保有している断熱材やポリウレタン原料、樹脂添加剤とSUFAのパウダーを混ぜるなどして、いかにしてまとめて使いこなすかといった、解決したい課題を共有し、お互いに親和性の高いテーマ設定があったのも大きいでしょう。
こういった取り組みは、オープンに話さないと進みません。我々が持つケーパビリティやリソースをうまく活用し、取り組みを前進させることが大事だと考えています。
カーボンニュートラルな社会の実現に貢献したい
──協業においてどのような効果を感じていますか。
山地 さまざまな現場の課題感をアドバイスしていただいており、とても助かっています。特にベンチャーである我々としては量産の技術に関する知見がありません。
また、SUFAの高い汎用性があればどのような分野に展開できるのかといったような、この分野で実績のある大企業ならではの視点から、市場を踏まえて期待できるマーケットへのアプローチを教えてもらっています。
まだまだ市場に出回っていない、つまり世の中に普及していない素材なので、事業化となれば必ず量産の壁を経験するはずです。そこにアドバイスがもらえるのは大きな効果の1つだと感じています。
もちろん材料としてSUFAは世界一であると自負しています。しかしそれだけでは製品化はできません。どういった分野に使用するのか、どのように生産するのか、複合的な取り組みが必要になります。そうした知見や技術についてアドバイスをしてくれたのが三洋化成工業さんなのです。
森 当社としても、熱マネジメントやカーボンニュートラルといった分野は、新しいテーマとしてぜひ手掛けたいと考えていました。
しかしその領域での技術力についてはまだまだ足りないなと感じていたところに、ティエムファクトリさんとの技術面での補完関係を築くことができたのです。お互いの技術を合わせて活用することで、それぞれの技術的課題を解決できる理想的なパートナーの組み合わせだと言えるでしょう。
──両社のオープンイノベーションに関して今後の展望について聞かせてください。
福本 やはり、早く世の中に送り出して、社会のさまざまなところで使ってもらえる状態へと持っていきたいですね。そのためにはどういった手段があるのか、現在お互いに検討しているところです。
例えば、「太陽光をそのまま熱に変える仕組み」の創出など、貢献できる分野はいろいろと考えられます。また、SUFAのパウダーについても、関係会社の技術を活用し、基材に分散させて、例えば断熱パテとして用途の可能性を広げるなど、市場性の確認を進めています。
倉田 三洋化成工業さんを通じて素材を提供したお客様から直接フィードバックをもらえるので、当社単独で実施するマーケティングに比べて無駄打ちの心配が小さくなってくると期待しています。
スタートアップ側は仮説で攻めるものですが、それだけではそうそう商品は当たりません。ニーズはあっても、そこにマッチしないことは多いのです。これは素材ならではの問題でもありますが、お客様と事前にお話することで研ぎ澄まされてくるし、取るべきアクションを整理できるので、本当にありがたいですね。
大高 素材系というのは10年単位で市場が変化していきますので、ティエムファクトリさんと一緒に2030年までにはきちんとした事業にしていきたいですね。製品としての価値の本格的な検証はこれからですが、なるべく早く検証結果を出せたらと取り組んでいます。
この素材はいろいろと難しいことを認識していますので、ティエムファクトリさんをはじめとしたパートナーとのエコシステムを最大限に活用しながら、これから攻めていく構えです。
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