最新パーツ性能チェック 第299回
Comet Lake-SのポイントであるPL1設定別の挙動や性能も詳しく解説
Core i9-10900Kを筆頭に第10世代Core超徹底検証!Ryzenよりもゲームで強いって本当?
2020年05月26日 14時00分更新
PL1設定別の消費電力とクロックの傾向
システム全体の消費電力に関しては速報でお伝えした通りだが、PL1=125Wと無制限の差をより詳しく解説するために第10世代Coreプロセッサーのデータだけを抜粋した。また、グラフの見方を改めて説明すると、「アイドル時」はシステム起動10分後の安定値、「高負荷時(ピーク)」は超高負荷テスト「Prime95」のSmallFFTテストを10分起動した時のピーク値、「高負荷時(安定)」はSmallFFTを一定時間回した後(Power Limitが発動した後)にやや低めで安定する消費電力を意味する。
PL1を無制限にした場合や、物理6コア以下のCPUの場合は高負荷時(ピーク)と高負荷時(安定)はほとんど変わらない(下がっても数W程度)。しかし、8コア以上のCPUでは、PL1をある値以下(今回はCPUのTDP)に設定すると、消費電力の安定値が2つ出現していることがわかる。
このテストでも上位CPU、特にCore i9-10900Kの消費電力がPL1=無制限で大幅に伸びるが、Core i5やi7ではさほど増えないこともわかる。言い方を変えれば、Core i9-10900Kを一般的なPL1=無制限で運用する場合はかなりワットパフォーマンスを犠牲にしているということだ。この点においては、7nmプロセスを採用するZen2世代Ryzenのワットパフォーマンスが際立つ結果になったと言ってもいい。
Core i7とi9の高負荷時(安定)と、Core i5の高負荷時(ピーク)がほぼ200W前後であることから、インテルの定めているTDP=125Wという指標は、CPUにある程度高負荷をかけ、一定時間経過した後の安定値のことを示唆している感じにも見える。これは仮説にすぎないが、コア数が最大8コアになった第9世代Coreプロセッサーでも同様の傾向は確認できている(今回の検証環境では160W弱で安定する)ので、何らかの法則があるようだ。
では、PL1=125Wと無制限で、クロックや温度の動きにどのような違いが出るのだろうか? モニタリングツール「HWiNFO」を利用して、動画エンコード時のCPUのAverage Effective Clock、CPUパッケージ温度、そしてCPU Package Powerを開始から7分程度追跡してみた。
まずはCPUのAverage Effective Clockの推移だ。この処理ではCPU各コアの占有率はほぼ100%近くになるため、Average Effective Clockは全コア動作時の最大クロックにかなり近いものとなる。
最も印象的な値を示しているのはCore i9-10900Kだ。PL1=無制限の場合、エンコード処理が本格的に始まる1分過ぎあたりから、Average Effective Clockはほぼ4.8~4.9GHzまで到達する。これに対し、PL1=125W時は4.2GHz前後で上下し、低い時は3GHz台まで下がることもある。
ただし、時間軸左端ではCore i9-10900KのPL1=125W設定でも無制限設定とほぼ同じようなクロックを出している。もう少し詳しく見ると、Core i9-10900Kの各コアに立つ「Power Limit Exceeded」フラグは開始1分程度のところで全コアにほぼ一斉に付く。このフラグが立つまではPL1=125Wと無制限の間に差はないが、125Wのリミットをオーバーした瞬間にクロックが低下し、処理時間に差が出るということになる。
同様にCore i7-10700KでもPL1=125W設定ではAverage Effective Clockが低下するが、Core i9-10900Kほどの差はない。さらにCore i5-10600Kにいたっては、PL1=125Wと無制限の差はほとんど見られない。これは前掲のblenderなどの比較でも、上位CPUほど差が開く結果と合致している。
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