人的エラーを極力排除するアッセンブリ工程
続いて通されたのが、アッセンブリ工程、いわゆる組み立て。先ほどの製作した基板とキーボードや液晶などの部品を組み立てて、VAIO Zのクラムシェルモデルとフリップモデルを1つのラインで製作している。
まず前工程として、フリップ部分の組み立てやスタンド部分などを組み立てる。アルミ素材とFPCハーネスを組み込んだり、機構部分をアルミ素材でサンドイッチしたりしているが、通常だとネジで固定したり、両面テープを使ってくっつけている。しかし、VAIO Zでは、剛性を確保するために接着剤を使用している。「両面テープと接着剤とでは、まったく剛性が違います。同じ素材を使用しながら剛性を高めるために、接着剤を使用した加工方法を採用しています」(大西さん)。
実際、サンプルとして両面テープで固定したものと接着剤で固定したものをひねって見たが、接着剤で固定したものはビクともしない。同じ素材でも加工方法によってこれほど差が出るのかと思うほどだ。ただ、接着剤は管理が大変なのであまり使いたくないとのこと。商品化するにあたり、導入初期段階から設計、生産技術メンバーと協議しながら導入しているそうだ。
アッセンブリのラインは、先ほどの実装とは違い、ほとんど人が作業にあたっている。そのため、人的エラーを極力排除するための工夫が随所に散りばめられている。そういった、組み立て作業を行なう際にサポートする専用器具を作るのが、生産技術の人たちだ。
例えば、キーボードフレームとパームレスト部分を接着剤で貼り合わせる際も、機械で適量の接着剤を塗布。位置合わせする専用の機器を使って人の手で貼り合わせている。この器具がないと、微妙なズレが生じてしまい、不良率が高くなってしまう。「試作段階から、そういった器具類を作り検証しているので、量産時にはほとんどトラブルもなく、みなさん作業できています」(大西さん)。
接着剤を塗布する際も、塗布した時間を管理。接着剤が固まる前に貼り付けを完了させる仕組みが取られている。「バーコードで時間を管理し、接着時の問題を排除しています。厳選したメンバーがしっかりやってくれています」(大西さん)。
接着時の位置合わせで、位置がわかりづらい場合は、マイクロスコープカメラを取り付けて人間の作業をフォローするようにしている。設計者と生産技術、現場の人の意見を聞いて、しっかり量産できる体制を随時整えている。
ほかにもタッチパネルをディスプレーハウジングに貼りつける際、位置がズレないようにする器具や、底面のビスを締める際にほかを傷つけないためのカバーをつけたりと、様々な工夫やそのための器具が用意されていて、スタッフの人たちは難なく作業をこなしていた。いくらサポートする器具があっても、スタッフの職人技には感銘した。
組み付けたあとは、正しく動作するかプログラムを実行する。SSDへテストプログラムをインストールし検査。ほかにも、シールドボックスでは無線の検査をしたり、液晶の検査はカラーパターンを撮影し神様画像と比較して確認したりする。キーボードのフィーリングに関しては、人間の感覚が頼りで、スタッフが1キーずつ叩いてチェックするそうだ。
最後は、OSのインストールやバッテリーの充放電、同梱するACアダプターのチェックを行なっている。1台1台にタグがついており、インストールされるソフトの情報をサーバーからダウンロードし、自動でインストールされる。
本体に貼るラベルも、製品1台1台違う。このため、見間違い、取り間違いの可能性が高いので、タグのバーコードを読み取ると、貼り付けるラベルが自動で剥離される。ラベルを取ると、貼る位置にLEDを照射して、位置決めもわかるようになっている。これなら、知らない人でもやれそうなくらいだ。そういった工夫をいれながら、いいものを作るために、スタッフの負担を軽くしている。
新製品の箱を開封して、貼られているラベルが少し曲がっているだけでも、心が折れることもある。そこまで注意を払って、作り上げる姿勢は、流石はMade in Japanと言えよう。
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