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第7回 「VAIO、法人向く。」の現在を探る

VAIO Zの製造工程も公開

VAIOブランドを支える安曇野FINISHの秘密に迫る

文●飯島範久 編集●ASCII

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安曇野FINISHの重要性を再認識

 筆者もVAIO製品を使っていて、安曇野FINISHのカードを持っているが、安曇野FINISHを始めたのはVAIO株式会社になってからである。当初は「ワンストップフィニッシュ」という言葉を使う予定だったが、それを「安曇野FINISH」に変えたそうだ。

 基本的にVAIO Z以外の製品は、海外の協力工場で生産し、船便で日本へ送り届けられている。通常なら海外でアッセンブリまで行ない、製品チェック後、日本へ届けられそのまま出荷される。ソニー時代はその手法を取られていたが、VAIO株式会社になり、より初期不良の低減と品質の確保を行なうべく、港に届いた製品を安曇野まで運び、そこで全数チェックしアッセンブリしたあと出荷するという方式に切り替えた。

↑安曇野FINISHの工程を説明していただいた技術&製造部 製造課の坂本直樹さん。

 今回見学したのは、VAIOの11、13、15インチのPCを受け入れているライン。海外協力工場で生産されたものは、箱に詰められた状態でここへ届けられる。「開封後、本体を取り出してまずは外観検査です。この検査は傷やよごれ、すき間など50から60項目あり、認定された人のみが担当しています。ここでNGとなった製品は、協力工場へ戻されます」(坂本さん)。実際にNGとなった製品も見たが、パッと見どこが悪いのかわからないレベル。一部塗装ムラがありNG判定されたものだが、そんな外観の違いも逃さない目をもった担当者がしっかりチェックしているのだ。

↑まずは外観チェック。普通じゃ気が付かない傷や色ムラなど、厳しい目でチェック。

 外観チェック後は、底面のネジを外して内部検査。ここでも30項目近くあるという。チェック後、SSDやTPMなどを取り付けて、もう一度電気的な検査後、キーボードのフィーリングなどもチェックしている。あとは、OSなどをインストールするエージング工程も先ほどと同様。速いものでは1時間、遅くとも3時間で終了するそうだ。

↑エージング工程。画面が緑色になると作業終了。

 インストールまで終わると、梱包の工程だ。ここで、もう一度外観検査を行なう。ここで作業したため、傷などが付いていないかの確認だ。ラベル貼りは、先ほどと同様にタグを読み込むと、必要なラベルにランプが付き、とったラベルの位置をLEDで表示して貼り付ける。最終的にカラバリやキーボードの印字内容の検査を通過し、同梱する付属品は、冊子などの入れる順番が決まっているので、順次ランプが付いてそれを入れていくようになっている。箱詰めしたら、完成登録され出荷される。

↑同梱するものも、ランプで順次知らせてくれる。

 こうして安曇野FINISHの工程を見てきたが、単に外観や中身をチェックするだけでなく、SSDやOSのインストール、シール貼りや付属品の梱包はすべて安曇野で行なっており、検査に次ぐ検査で海外から直送されるより非常に安心感がある。

 「かなり手間をかけてやっていることがわかったかと思いますが、僕らのポリシーとして、VAIOロゴの付いた製品は、きちんと安曇野で最終仕上げをしてお客様へ届ける、信頼を得るためにあえて行なっていることです。本来ならやる必要のないこともありますが、それが1つの付加価値になっているので、こうした取材を通してお客さまへ伝わっていけばと思います」(坂本さん)。

↑VAIOのサイトで安曇野FINISHを紹介するページに坂本さんは登場している。

 「安曇野でいいものを作ろうという意識は、ソニー時代から変わっていません。VAIOになってから、より一層強くなり安曇野FINISHによって、修理で戻ってくることが激減していますので、実績としては十分出ていると思います」(塩原さん)。

↑「ソニー時代には、このように各工程を公開するなんて考えられませんでした。今はEMS事業もあり、アピールの一貫としても公開しています」と語る塩原さん。

 高品質を維持する努力。それには製造現場と設計、生産技術が一体となって、常に高水準の製品を組み上げられるようにした、教育と設備の賜物だ。

 「生産現場としては、納得できる理由がしっかりあるので、商品化に協力しようという気分になりますね。作業では品質を担保できないとなると、設備を入れたり、設計で改善したり、関係部署全員で協力しながらいいものを作り上げていくと言う感じです。雰囲気はいいですよ」(大西さん)。

 お客さまにいい製品を届けたい。そんなVAIOの魂を肌でビンビン感じた。

↑「熟練者が作っているから大丈夫という意識でいると、気が付きにくい面があります。やりやすさを追求し、作業を安定化させることが品質を確保することにもつながります」と語る大西さん。

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