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ASCII STARTUP 今週のイチオシ!第23回

東大ベンチャーH2Lに直撃

腕がハックされる!体感がヤバい触感型ゲームコントローラー「UnlimitedHand」

2016年05月20日 07時00分更新

文● 北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田 元

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 東大スタートアップのH2L株式会社により昨年8月に発表された「UnlimitedHand(アンリミテッド・ハンド)」は、これまでのコントローラーの概念を覆すとんでもない仕様から注目を集め、米Kickstarterで75000ドルをたちまち集めた。

 その仕様とは、内蔵された機能的電気刺激により腕の筋肉を収縮させてプレイヤーに擬似的な触感を与えるというもの。ゲームコントローラーはプレイヤーからの入力デバイスであり、フィードバックといってもバイブレーションなどの刺激がせいぜいだったが、UnlimitedHandでは身体の内側から刺激をもたらすことができる。VRゲームの楽しみの1つである”没入感”をより高める可能性があるというわけだ。

 人体への触覚や力の感覚を通じて情報を伝える「ハプティクス」(触覚技術)と呼ばれる研究分野は、HMDで視覚をジャックされた状態でゲームなどをプレイするVR(バーチャルリアリティ)との相性がいい。ゲーム内の衝撃を感じたりキャラクターを触ったりできることで、体験の幅は確実に広がりを見せる。

 2020年には約400億ドルまで達する予測もあるVR市場に、新たなコントローラーデバイスという切り口で進出したH2L。最初の量産を終え、開発者向けキットを世に出した同製品の可能性について、同社代表取締役の岩崎健一郎氏にうかがった。

H2Lの岩崎健一郎代表取締役

求めていたのは、世の中へのインパクト

PossessedHand。28個の電極を使った14チャンネルの機能的電気刺激キット。

 H2Lの創業は2012年7月で、まもなく4期目。同社はもともと「PossessedHand(ポゼストハンド)」という大学・研究所・医療機関向けのデバイスを開発していたスタートアップ。UnlimitedHandは、その研究成果から生まれたものだ。

 従来、手指を制御するような機能的電気刺激は、筋肉の構造を理解した専門家にしか扱えないものだった。だがPossessedHand付属のソフトウェアを使えば、電気刺激に使用する電極パッドの位置、電気刺激の大きさについて全パターンの刺激を与え、学習ができる。筋肉の専門的な知識がなくても扱えるアプリでのキャリブレーション機能が特徴で、一度学習しておけば、簡単な操作で適切なパッドの位置と電気刺激の大きさが生成され、望む指が動かせる。組み合わせによって、複雑な動きも制御可能だ。

 「原理はEMS(Electric Muscle Stimulation) という筋肉に電気的な他動運動をさせることにより筋を訓練し強化する方法。リハビリなどで使うような手の動きは、電気刺激で操作できる。PossessedHandは脳科学や医学分野の研究者や医者向けの研究機器として販売していた」(岩崎氏)

UnlimitedHandはPossessedHandの技術から生まれた電気刺激により腕がハッキングされたように”操作される”

 そもそもH2Lは、東京大学の同じ研究室のメンバーが卒業後につくった企業だ。PossessedHandも、H2Lの共同創業者である工学研究者の玉城絵美氏が東京大学大学院博士課程在学中に研究・開発したもの。米『TIME』誌の「The 50 Best Inventions」にも選出されるなど、当初から高い評価を得ていた。

 1セット80万円の同デバイスは、各種研究施設やリハビリを行う医療機関に受け入れられ、事業的にも好調に推移していたが、なぜVRゲームのコントローラーにかじを切ったのか。岩崎氏によれば、H2Lを経営していく中で「PossesedHandだけでは、技術を広めるのに時間がかかることがわかった」というのが大きかったという。

 「もともとがまん強いほうではないが、特に医療機器の場合、5年から10年かけてようやく審査が一段階進むというスピード感だった。開発当初より、PossessedHandはVR体感装置やリハビリテーション向け装置や脳研究との連携などへと将来発展させて行く予定で、可能性を探るためにさまざまな応用を検討していた」

 現在のVR市場立ち上がりの動きと将来の活性化予測は、H2Lにとって技術を生かすまたとない機会だ。いかに優れた研究成果であっても、それが生かされるべきスピード、しかるべき場所になければ、宝の持ち腐れとなる。イノベーションを実現させ、世の中へのインパクトを与えるには、もってこいのタイミングだった。

 PossessedHandでのノウハウを生かし、手を自分の意志で動かして、どこが動いているのか分析して、さらにゲーム内でのシンクロした動きにフィードバックする機能を、そのままVRゲームでの入出力にしようというのが、UnlimitedHandでの試みとなる。

 H2Lのビジョンは、VRの一分野であるテレイグジスタンス(遠隔操作での臨場感・存在感)を実現させるというもの。かねてより、視覚や聴覚はできていたが、触覚がVRでは足りていなかった。H2Lでは現在も、製品開発だけでなく手の動きをセンシングしてフィードバックする研究を継続している。

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