このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第258回

半導体プロセスまるわかり 微細化よりも高密度化に進むDRAMの未来

2014年06月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

微細化が困難で、高密度化もそろそろ限界
ロードマップから紐解くDRAMの展望

 下の画像は2008年のIDFにおいて、今は存在しないQimonda(※)の示したロードマップである。
※旧Infineoのメモリー部門が分社化したメモリーメーカー。一時期は世界No.3のポジションだったが2009年に破綻した。

IDF 2008でQimondaが示した、メモリーのロードマップ。このスライドは、70nmプロセスで製造したメモリーよりも、65nmプロセスで製造したメモリーの方が省電力ということを示すもの

 Qimondaの場合、トレンチ型からスタック型への切り替えが予想より時間がかかり、これが破綻の1つの要因になったのだが、それはともかくとして2009年頃から6F2に切り替え、2011年からは8F2に移行する予定だった。

 加えてプロセスの微細化も進めており、これによって大容量化を進める方向性を示していた。時期や実現するプロセスなどは、メモリベンダー各社によって若干違いがあるものの、基本的にはこの方向性でいけると考えていたのが2008~2009年という時期である。

 ではその後、これがどう変遷していったのかを、ITRSのロードマップから引用したい。表1は、2008年~2013年のITRSのロードマップのPIDS(Process Integration, Devices, and Structures)の中で、DRAM Requirementの中にあるプロセスノードをまとめたものである。

 縦軸が何年のロードマップかを示し、横軸はそのプロセスノードが何年に実現できるとみなしているかを示している。

表1 DRAM Pitch
  2008 2009 2010 2011 2012 2013
2008 58  
2009 50 52  
2010 45 45 42  
2011 40 40 36 31  
2012 36 36 31 28 28  
2013 32 32 28 25 25 28
2014 30 28 25 22 22 26
2015 25 25 24 20 20 24
2016 22 23 21 18 18 22
2017 20 20 18 16 16 20
2018 18 18 16 14 14 18
2019 16 16 14 13 13 17
2020 14 14 13 12 12 15
2021 13 13 12 11 11 14
2022 12 11 10 10 10 13
2023   10 9 9 9 12
2024   9 8 7 7 11
2025   7 6 6 10

 表を見てみると、2008年あたりのロードマップは保守的で、2013年あたりのロードマップに近いことがわかる。

 逆に積極的なのが2010~2012年あたりで、2015年には20nmプロセスで製造に入り、2016年以降は20nmを切るとしている。ところが2013年のロードマップを見ると、2017年あたりまでは20nm台が維持され、10nm台に入るのは2018年以降となっており、2年ほど後送りになっている。

 もっとおもしろいのは表2で、これはセルのサイズファクター、つまり6F2か4F2かを示すものだが、2008年はずっと6F2が続くとしている。

 これに対し、2009年以降はほぼ3年後に4F2になるとしているが、導入時期が毎年1年づつ後送りになっている。要するに、ずーっと「あと3年」の状態から進歩していないわけだ。

表2 Cell Size Factor
  2008 2009 2010 2011 2012 2013
2008 6  
2009 6 6  
2010 6 6 6  
2011 6 4 6 6  
2012 6 4 6 6 6  
2013 6 4 4 6 6 6
2014 6 4 4 4 6 6
2015 6 4 4 4 4 6
2016 6 4 4 4 4 4
2017 6 4 4 4 4 4
2018 6 4 4 4 4 4
2019 6 4 4 4 4 4
2020 6 4 4 4 4 4
2021 6 4 4 4 4 4
2022 6 4 4 4 4 4
2023   4 4 4 4 4
2024   4 4 4 4 4
2025   4 4 4 4

 なぜ「あと3年」が続いているかというと、4F2を構成するにはWord LineとBit Lineの間にFETを縦構造で構築する必要があり、おまけにこのFETはプレーナ型を縦にしたというよりはFinFETに近い構造が必要とされる。結果として、このトランジスタを量産するのが非常に難しいという話である。

 これもやや古い資料だが、2011年にSK Hynixが示した下の資料では、4F2は20nm以下になるまで導入されないことになっており、表2と組み合わせた場合、実際には2018年あたりまで導入されない見込みである。

これは2011年に開催されたSEMATECH Symposium Koreaというイベントで、SK HynixのSung-ki Park氏が示した“The Future Memory Technologies”というスライドからの抜粋

 そもそも、プロセスの微細化そのものが表2の通りに行くと考えているベンダーそのものがほとんどいない。ベンダーが20nm台で足踏みしているのは、トランジスタ自身もさることながら、トレンチの方がもう微細化が無理という話が強いからだ。  下の画像はこれを示したものだが、20nm世代になるとコンデンサーの直径は3Å程度になり、縦横比は100倍にも達する計算になるという。これはかなり難易度が高い。

コンデンサーの直径と縦横比の関係。こちらもSEMATECH Symposium Koreaで、SK HynixのSung-ki Park氏が示したスライドから抜粋

 結果としてどうなるかというと、高密度化が止まることになる。プロセスの微細化が無理で、かつセルのサイズファクターも当面変わらないとなると、同一ダイサイズで実現できるDRAMの容量は増えないことになる。

 下の画像は、2013年のIDFにおけるインテルが発表した資料だが、このスライドの右側に着目されたい。今は4Gbit品が主流であるが、今年から少しづつ8Gbit品が投入されるとある。これはDRAMチップ1個あたりの容量で、2016年にはこの8Gbit品が主流になるとある。

DRAMの密度予測。データはIHS Electronics & Mediaのもの。出典はIDF Sanfrancisco 13における“Memory and Intel Products”というセッションの資料である

 問題は、この8Gbit品は既存の20nm台のプロセスで製造できるが、次の16Gbit品は20nm以下で、かつ4F2でないと難しく、これが実現する時期が今もって未定なのである。これまでDRAMはほぼ3年程度の周期で容量が倍増してきていたが、ついにその流れが止まりそうなのが現状だ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン