微細化が困難で、高密度化もそろそろ限界
ロードマップから紐解くDRAMの展望
下の画像は2008年のIDFにおいて、今は存在しないQimonda(※)の示したロードマップである。
※旧Infineoのメモリー部門が分社化したメモリーメーカー。一時期は世界No.3のポジションだったが2009年に破綻した。
Qimondaの場合、トレンチ型からスタック型への切り替えが予想より時間がかかり、これが破綻の1つの要因になったのだが、それはともかくとして2009年頃から6F2に切り替え、2011年からは8F2に移行する予定だった。
加えてプロセスの微細化も進めており、これによって大容量化を進める方向性を示していた。時期や実現するプロセスなどは、メモリベンダー各社によって若干違いがあるものの、基本的にはこの方向性でいけると考えていたのが2008~2009年という時期である。
ではその後、これがどう変遷していったのかを、ITRSのロードマップから引用したい。表1は、2008年~2013年のITRSのロードマップのPIDS(Process Integration, Devices, and Structures)の中で、DRAM Requirementの中にあるプロセスノードをまとめたものである。
縦軸が何年のロードマップかを示し、横軸はそのプロセスノードが何年に実現できるとみなしているかを示している。
表1 DRAM Pitch | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | |
2008 | 58 | |||||
2009 | 50 | 52 | ||||
2010 | 45 | 45 | 42 | |||
2011 | 40 | 40 | 36 | 31 | ||
2012 | 36 | 36 | 31 | 28 | 28 | |
2013 | 32 | 32 | 28 | 25 | 25 | 28 |
2014 | 30 | 28 | 25 | 22 | 22 | 26 |
2015 | 25 | 25 | 24 | 20 | 20 | 24 |
2016 | 22 | 23 | 21 | 18 | 18 | 22 |
2017 | 20 | 20 | 18 | 16 | 16 | 20 |
2018 | 18 | 18 | 16 | 14 | 14 | 18 |
2019 | 16 | 16 | 14 | 13 | 13 | 17 |
2020 | 14 | 14 | 13 | 12 | 12 | 15 |
2021 | 13 | 13 | 12 | 11 | 11 | 14 |
2022 | 12 | 11 | 10 | 10 | 10 | 13 |
2023 | 10 | 9 | 9 | 9 | 12 | |
2024 | 9 | 8 | 7 | 7 | 11 | |
2025 | 7 | 6 | 6 | 10 |
表を見てみると、2008年あたりのロードマップは保守的で、2013年あたりのロードマップに近いことがわかる。
逆に積極的なのが2010~2012年あたりで、2015年には20nmプロセスで製造に入り、2016年以降は20nmを切るとしている。ところが2013年のロードマップを見ると、2017年あたりまでは20nm台が維持され、10nm台に入るのは2018年以降となっており、2年ほど後送りになっている。
もっとおもしろいのは表2で、これはセルのサイズファクター、つまり6F2か4F2かを示すものだが、2008年はずっと6F2が続くとしている。
これに対し、2009年以降はほぼ3年後に4F2になるとしているが、導入時期が毎年1年づつ後送りになっている。要するに、ずーっと「あと3年」の状態から進歩していないわけだ。
表2 Cell Size Factor | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | |
2008 | 6 | |||||
2009 | 6 | 6 | ||||
2010 | 6 | 6 | 6 | |||
2011 | 6 | 4 | 6 | 6 | ||
2012 | 6 | 4 | 6 | 6 | 6 | |
2013 | 6 | 4 | 4 | 6 | 6 | 6 |
2014 | 6 | 4 | 4 | 4 | 6 | 6 |
2015 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 6 |
2016 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
2017 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
2018 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
2019 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
2020 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
2021 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
2022 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
2023 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | |
2024 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | |
2025 | 4 | 4 | 4 | 4 |
なぜ「あと3年」が続いているかというと、4F2を構成するにはWord LineとBit Lineの間にFETを縦構造で構築する必要があり、おまけにこのFETはプレーナ型を縦にしたというよりはFinFETに近い構造が必要とされる。結果として、このトランジスタを量産するのが非常に難しいという話である。
これもやや古い資料だが、2011年にSK Hynixが示した下の資料では、4F2は20nm以下になるまで導入されないことになっており、表2と組み合わせた場合、実際には2018年あたりまで導入されない見込みである。
そもそも、プロセスの微細化そのものが表2の通りに行くと考えているベンダーそのものがほとんどいない。ベンダーが20nm台で足踏みしているのは、トランジスタ自身もさることながら、トレンチの方がもう微細化が無理という話が強いからだ。 下の画像はこれを示したものだが、20nm世代になるとコンデンサーの直径は3Å程度になり、縦横比は100倍にも達する計算になるという。これはかなり難易度が高い。
結果としてどうなるかというと、高密度化が止まることになる。プロセスの微細化が無理で、かつセルのサイズファクターも当面変わらないとなると、同一ダイサイズで実現できるDRAMの容量は増えないことになる。
下の画像は、2013年のIDFにおけるインテルが発表した資料だが、このスライドの右側に着目されたい。今は4Gbit品が主流であるが、今年から少しづつ8Gbit品が投入されるとある。これはDRAMチップ1個あたりの容量で、2016年にはこの8Gbit品が主流になるとある。
問題は、この8Gbit品は既存の20nm台のプロセスで製造できるが、次の16Gbit品は20nm以下で、かつ4F2でないと難しく、これが実現する時期が今もって未定なのである。これまでDRAMはほぼ3年程度の周期で容量が倍増してきていたが、ついにその流れが止まりそうなのが現状だ。
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