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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第765回

GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ

2024年04月01日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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Blackwellアーキテクチャーは
コンシューマー向けにも適用されるかもしれない

 前回に引き続きBlackwellについて解説する。ちなみに現時点でもまだBlackwellのホワイトペーパーが公開されていない(Architecture Technical Briefは公開されたが、ここには個々のSMの構造などはまだ含まれていない)ので、前回説明した内容がどの程度妥当だったのかの確認はできていない。

 あともう1つ。これは公式発表ではないのだが、このBlackwellアーキテクチャーはデータセンター向けだけではなく、コンシューマー向けにも適用される予定という話が流れている。実際以下のとおりリリースされてきている。

これまでリリースされたGPU
登場年 コードネーム GPU
2012年 Kepler GeForce GTX 600/700
2014年 Maxwell GeForce GTX 750
2016年 Pascal GeForce GTX 1000
2018年 Turing GeForce RTX 2000
2020年 Ampere GeForce RTX 3000
2022年 Ada GeForce RTX 4000

 今年は刷新されると考えるのが普通だし、そうなるとBlackwellアーキテクチャーを使うと考えるのが妥当と言えば妥当である。ただその一方で、以下のようなあまりコンシューマー向けに向かない特徴が気になるところである。

  • プロセスがTSMC 4NPで、多少速度は上がってるにしてもトランジスタ密度はどの程度向上しているか疑問
  • NVIDIAはBlackwellでマイクロアーキテクチャーを刷新したと説明しているが、その一方で性能に関してはTensor Coreの大幅な性能改善がメインであって、CUDA Coreの方はどこまで性能が上がっているのか不明(スペックだけ見ているとCUDA Coreの方の性能向上はほぼなさそうに見える)
  • Ada Lovelace世代のAD102は609mm2で128SMであり、つまりSMあたり5.97mm2ほどでの実装となっている。これに対しB100/B200のものは783.4mm2で80SMと前回推定できており、つまりSMあたり9.79mm2ほどのエリアサイズとなる。この大型化の理由はTensor Coreの大幅強化と筆者は考えているが、逆に言えばTensor Coreを利用しないGPU的な用途にBlackwellをそのまま持ち込むのは猛烈に効率が悪い

 もちろん、例えばBlackwell世代はアプリケーションの設定と無関係に常時DLSSがTensor Coreで稼働しており、なのでGPUでのレンダリングの負荷が相対的に低くなって結果として性能が向上する、なんて方針であればこれでも良さそうだが、正直ちょっと考えにくい。あるいはTensor Coreが実はRay Tracing Engineの機能も搭載しているなどならあり得るのかもしれないが。

 仮にBlackwell世代からそのまま持ち込んでうれしい機能があるとすれば、マルチチップ構成だろうか? もしこれがコンシューマー向けGPUにも適用できるのであれば、それは意味があるだろう。ただ同じくマルチチップ構成(正確に言えばマルチGCD)を目論みつつ開発中止で消えてしまったNavi 40のことを考えると、AI向けでうまくいったからといって、GPU向けにそのまま使えるとは限らないので、これも可能性は低いだろう。

 まだ断言はできないが、今年登場すると思われるコンシューマー向けのアーキテクチャーは、Blackwellと異なるものになる気がする。これは過去にも事例がある。2018年はデータセンター向けがVolta、コンシューマー向けがTuringだった。Voltaも後追いでTitan Vというコンシューマー向け(?)のラインナップは用意されたが、基本はデータセンター向けのみである。

 Blackwellも同様にメインはAI推論/学習向けで、コンシューマー向けはまた違ったもの(そのコード名がBlackwellを継承するかどうかも不明)になるのではないかというのが筆者の推定である。このあたり、Blackwellのホワイトペーパーが公開されたら、もう少しクリアになるのだが。

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