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ゼロからはじめる最新サーバー選び -基礎編- 第5回

サーバーOSやサーバーアプリケーション、仮想化ソフトそして管理ツールを見ていこう

サーバーを便利なツールにするソフトウェアとは?

2010年12月09日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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急速に広まる仮想化環境

 ここ数年、サーバーの仮想化(Virtualization)が急速に普及している。仮想化とは、実際のサーバーのハードウェアデバイスを抽象化して、物理サーバー上に「仮想マシン(Virtual Machine)」を作成するソフトウェアである。この仮想マシンは、一般的で普及率の高いデバイスで構成されたサーバーをエミュレーションする。この仮想マシンにサーバーOSを導入することで「仮想サーバー」を構築するのがサーバの仮想化である。これは、ハードウェアとOSの間に仮想化ソフトを一枚噛ませることにより実現する(図1)。

図1 サーバ仮想化の仕組み

 サーバー仮想化が普及する背景としては、サーバー用のCPUがマルチコア/マルチプロセッサー化され、複数の処理を並列で実行する能力が高まったことが挙げられる。従来は、サーバーアプリケーションごとに1台のサーバーを用意するというのが、サーバー安定運用のテクニックであった。複数のアプリケーションを1台のサーバーで運用すると、あるアプリケーションの障害で他のアプリケーションが停止してしまう可能性があるからだ。

 しかし、この運用ではマルチコアCPUを搭載したマシンの能力が「遊んでしまう」ことになり、もったいない。仮想化技術では、あるアプリケーションがクラッシュしても、最悪その仮想サーバーが停止するだけだ。従来のように1つのアプリケーションが他のアプリケーションを「道連れ」にすることはない。そこで、1台のサーバーマシン上で複数の仮想マシンを動作させ、複数のサーバ機能を統合することが行なわれるようになった(図2)。

図2 アプリケーションごとに仮想サーバを構成できる

 実際に従来の複数のサーバーマシンを、1台のサーバーマシン上の複数の仮想サーバーへ統合してみると、ハードウェアコストの削減、保守コストの削減、運用管理工数の削減、サーバリソースの有効活用など、メリットが大きいことも明らかになった。つまり、システムのコストパフォーマンス向上と、運用管理の効率化が実現するのである。

 以下は、代表的なサーバー仮想化ソフトウェアである。

  1. Hyper-V(マイクロソフト)
  2. VMware Infrastructure/vSphere(ヴイエムウェア)
  3. XenServer(シトリックス・システムズ)

サーバーを支える管理ツール

 サーバーは、会社の基幹業務システム・対外的な顔であるWebサイト、重要な情報が保存されるデータベースなど、企業や組織の生命線となる機能を搭載する装置である。これらの機能が期待通りに働くように、サーバーの稼動状態を健全に保つことは、管理者のきわめて重大な責任である。

 

 しかし、管理業務を人力で行なうことは、サーバーの台数が増えたり、担当する業務の種類が増えてくると、どんどん困難になってくる。そのため、通常はサーバー管理ツールを使って作業を自動化する。また、サーバーは遠隔地のデータセンターに設置するケースが多いので、その場合はサーバーを遠隔操作するツールも必要になる。ほとんどのサーバーベンダーは、自社ハードウェアのデバイスレベルまで監視・遠隔操作できる管理ツールを提供しているので、これとOSおよび上位のアプリケーションソフトを監視・管理できるツールを組み合わせて運用する。最近のサーバーOSには標準添付される管理ツールが増えているが、有償の商用ソフトも根強いニーズがある。

 以下は、代表的なサーバー管理ツールである。

  1. JP1(日立製作所)
  2. Systemwalker(富士通)
  3. System Center(マイクロソフト)
  4. Tivoli(IBM)
  5. BOM for Windows(セイ・テクノロジーズ)
  6. Hinemos(NTTデータ)

 最後のHinemos(ヒネモス)は、オープンソースで開発された管理ツールで、基本部分は無償で利用できる管理ツールである。同様のツールにNagios(ナギオス)があるが、ヒネモスは国産ソフトであるため日本語の技術文書類がそろっている点、および管理対象がWindowsやLinux、商用UNIXと幅広い点で優位性がある。

画面2 NTTデータが開発したオープンソースの管理ツール「Hinemos」

管理以外にもあるツール類

 管理ツールのほかに、サーバー専用のツールがある。たとえば、データベースサーバーやファイルサーバーなど、大量のデータを保管するサーバーでは、データのバックアップは必須である。ほとんどのサーバーOSにはバックアップ機能が標準で添付されるが、より高性能で使いやすい製品のニーズが高く、商用およびオープンソースのバックアップツールが多数ある。商用製品では、ネットワーク経由のバックアップ、バックアップメディアのラベル管理、複数パターンのバックアップスケジュールを設定できる、バックアップジョブの監視や報告、ほかのジョブとの連繋など、さまざまな機能が搭載されている。

 サーバー向けのウイルス対策ソフトもある。サーバーには、クライアントPCに比べてデータ量が桁違いに多い、サーバーにウイルスが仕込まれると影響が大きいなど、クライアントPCとは異なる状況がある。そのため、Webサーバーやファイルサーバーへの書き込み要求があったデータをリアルタイムでチェックしたり、マルチコアCPUの能力を活かして並列スキャンを行なったり、といった機能が追加されている。

 また、サーバーの可用性を高めるため、複数のサーバーをネットワークで接続し全体をあたかも1台のサーバーであるかのように扱える「クラスタ構成」という技術がある(図3)。

図3 可用性を高めるクラスタシステムの基本動作

 これを実現するツールも商用およびオープンソースでいくつか出ている。クラスタリング機能が標準添付されるサーバーOSもあるが、比較的小規模なクラスタしか構築できないことが多い。そのため、10台を超えるような大規模なクラスタを構築する場合には、別途クラスタリングソフトが必要になるケースが多い。

 各分野の代表的な製品には以下のようなものがある。

サーバの関連ツール
バックアップBackup Exec/NetBackup(シマンテック)、ARCserve Backup(CA)
ウイルス対策Open Space Security(カスペルスキー)、Protection Suite(シマンテック)、ServerProtect(トレンドマイクロ)、Endpoint Security and Data Protection(ソフォス)
クラスタCLUSTERPRO(NEC)、ClusterPerfect(東芝ソリューション)、Red Hat Cluster Suite(レッドハット)、Heartbeat(OSS)

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