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Citrix Synergy 2010 Berlinレポート

EU圏初のCitrix Synergyで喝采を得たのは?

2010年10月08日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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10月6日、Citrix Systemsはプライベート・イベント「Citrix Synergy」をドイツのベルリンで開催した。5月に米サンフランシスコで開催されたのに続いて、今回はドイツのベルリンでの開催となった。EU圏で開催されるのは初めてとのことだが、来場者数は多く、すでにEU圏でも知名度が高いことが伺える。会期は10月6~8日の3日間だが、これに先立って10月4~5日にはパートナー・イベントとして「Citrix Summit 2010」が開催されているので、実質一週間丸々続くイベントともいえる。

基調講演で「Work Shift」を語るCitrix SystemsのCEO、マーク・テンプルトン(Mark Templeton)氏

 Citrix Synergyとしての初日となった6日の午前には、同社のCEOであるマーク・テンプルトン(Mark Templeton)氏による基調講演(Opening Plenary Session)が行なわれた。同氏はまず、今回の開催が米国外で初めてのSynergyであることに触れ「Synergyがグローバルになった」と会場に語りかけた。続いて同氏はSynergyの位置づけについて、「Synergyは、これまでとはまったく異なる考え方をする場。エンド・ツー・エンドについて考え、スタックを縦断して考え、そしてテクノロジーがビジネスを達成するためにどのように“相助作用的に”(synergistically)結合できるかを考える場だ」とした。

 同氏のメッセージの中核となっていたのは、「Virtual Computing」というコンセプトの説明と、同社が目指す「Work Shift」の実現についてだ。基本的なメッセージの内容は同社がこれまでさまざまな機会に繰り返し述べてきたことのまとめであり、何か新しい要素が加わったわけではない。ただ、EU圏での初開催なので、まとめて一気に説明を行なったということだろう。

 まず、Virtual Computingに関して同氏は、シトリックスの仮想化技術への取り組みは水平的だと表現する。それに対して、競合他社の取り組みは垂直的だという。その意味は、特定の環境を想定してその環境内のさまざまなスタックを貫く形で「縦方向の仮想化」を推進するアプローチに対して、シトリックスのアプローチではさまざまなデバイスを含む多様な環境を「横方向」に仮想化し、インフラ全体を仮想化していこうとしている。この違いは、モバイルデバイスに対する対応の手厚さに端的に表われている。そして、このモバイルデバイスを活用する方向性の1つとなっているのが「Work Shift」というコンセプトだ。

 Work Shiftという言葉を、同社は「場所や端末の制約を受けずに、いつでもどこでも仕事ができる」という意味で使っている。オフィスに出かけていき、一定時間そこに留まって仕事を行ない、就業時間後はプライベートの時間になる、という就労スタイルを過去のものにするのが同社の目指す理想でもある。

 仮想化を活用してコストを削減し、変革の速度(Agility)を向上させる、という部分は仮想化に取り組む企業ならどこでも表明していることだが、その先の個々人の仕事とプライベートのバランスにまで目を向けている点が同社の特徴だといえるだろう。

 テンプルトンCEOの基調講演では、こうした同社の取り組みを完結にまとめて一気に紹介する形となった。

駆け足気味の新発表製品

 同氏の基調講演は、短時間で膨大な要素を盛り込んだためかやや駆け足。新発表製品に関しても簡単に概要だけ紹介して、詳細はそれぞれブレークアウト・セッションや展示ブースで、というやり方になっていた。

 基調講演の中で紹介された新製品や既存製品の機能拡張のおもなものを紹介しておこう。

 まず、日本ではまだローカライズが完了していないため未提供となっている「GoTo Meeting」の機能拡張が発表された。これはオンライン・カンファレンスのシステム/サービスだ。テンプルトン氏は、「従来のWebコンファレンス・システムは低解像度の小さなビデオしかサポートせず、一方でHDビデオ・システムではコンファレンス機能が貧弱で、分断された状態になっていた」と語り、GoTo Meetingではこの2つの機能を統合したと語る。

 会場で発表されて喝采を浴びたのは、従来英語のみだった対応言語にフランス語とドイツ語が追加されたことで、ドイツ開催のイベントにふさわしい発表となった。日本語対応の可能性についても語っていたが、「日本市場にはぜひ参入したいが、現在はまだ具体的な予定は固まっていない」としている。

XenDesktopのおもな機能拡張のポイント

 次に、会場からの大喝采を浴びたのがXenDesktopの新バージョンとなるXenDesktop 5の発表だ。クライアント管理のためのインターフェイスが刷新され、管理者がより多くのクライアントをより効率的に管理できるようになったのがバージョンアップのポイントだ。管理者向けのツールとして「Desktop Studio」や「Desktop Director」といったツールが追加され、“Ten minutes to Xen”(10分でXen)をキーワードとして初期導入が容易になったことをアピールした。

XenServer Feature Pack for v5.6のおもな機能拡張

 一方、XenServer 5.6に対しても機能拡張のためのFeature Packが発表された。新機能として、XenClient(クライアント・ハイパーバイザ)の効率を向上させるための機能「IntelliCache」、エンタープライズ環境向けにVM移動の際にネットワーク・ポリシーを追従させる「Distributed Virtual Switch」の追加が発表された。

 ただ、新規に仮想化されるサーバーのうちXenServerのシェアは2008年には3%だったが、2010年には18%に達すると予想されているというデータが示され、市場での急成長がアピールされても会場での反応は冷淡で、Xen Desktopの場合とは正反対に静まりかえっていたのが印象的だった

来場者の反応はいかに

 基調講演のあとで、ベルギーから参加したというカスタマーと話す機会があった。その参加者はXenApp(やその前身)を10年以上前から活用しており、最近はXen Desktopも使い始めているそうで、Xen Desktopのバージョンアップには関心が高いそうだ。一方、サーバーの仮想化に関してはすでにVMwareを使っているため、XenServerにはあまり興味がないと冷淡な反応だった。このあたりが、EU圏での実態に近いようだ。

 この参加者は、「VMwareの代替技術についてチェックは続けており、XenServerは機能面でVMwareに追いついてきているようだ」といいつつも、直近ではXenServerの採用を予定しているわけではないといっていた。Citrixは、デスクトップの仮想化ではトップランナーだが、サーバーの仮想化に関しては挑戦者の立場となっている現状が、基調講演に対する反応でも鮮明に表われていたといってよさそうだ。

最後にもう1つ、として紹介されたiOS 4.2対応のCitrix Receiverのデモ

 なお、どこかで見たようなスタイルではあるが、「最後にもう1つ(One more thing...)」としてデモが行なわれたのが、iPad用の次期OS「iOS 4.2」対応のCitrix Receiverの新機能紹介だった。

 Citrix Receiverを使えばiPad上にWindowsデスクトップを転送できるため、iPadを可搬型Windowsタブレットとして利用可能になるのだが、WindowsとiPadの操作性の違いも気になる点だ。iOS 4.2のリリースと同日にリリースできるという新バージョンのiPad用Receiverでは、WindowsアプリケーションとiPadのユーザー・インターフェイスの整合性を取るために画面上にマウスポインタを表示する機能などが追加された。

 また、iOS 4.2で追加される予定のマルチタスク機能を活用して、個人用PC環境と業務用のデスクトップに同時に接続しておき、瞬時に切り替えて利用できるといったデモが行なわれ、会場の大喝采を浴びていた。

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