サーバを導入する際に、まず、どのようなサーバマシン(ハードウェア)を購入すべきか考えなければならない。今回は、適切なサーバを選択する手順を紹介する。
用途から決めるサーバー選び
第1回で説明したように、サーバーは何らかのサービスを提供するコンピュータである。そのため、サーバーマシンを導入するにあたり、まず最初に「どのサービスを提供するのか」、すなわち用途を明確にする必要がある。その用途に応じて、重視すべきリソース(コンポーネント)とそのスペック、冗長構成の有無といった要件が決まってくる。
サーバーの代表的な用途と、重視すべきコンポーネントの関係を表1に示す。ただし、サービスを提供するためのアプリケーションソフトには、各コンポーネントの最低スペックが明示されていることもあるので、スペックを決定する際には、必ずそちらも参照しておこう。
HDDが重要なファイルサーバー
ファイルサーバーの任務は、データファイルを置く共有ディスクや印刷データを一時的に収容するスプール領域の提供なので、HDDの読み書きに負荷が集中する。このため、
- HDDの容量
- HDDのI/O速度
- キャッシュに使われるメモリの量
- ネットワークの速度
の順にリソースのスペックをチェックする。ユーザー数(クライアントPCの台数)が増えると、ネットワークの帯域が不足することもあるため、大規模な環境ではギガビットEthernetのポートを複数搭載する、あるいは増設できることが望ましい。ファイルサーバーでは、サーバー全体の性能はHDDのI/O速度に依存する。そのため、CPUについては現行製品を選べば、問題なく余裕がある。
ファイルサーバーに保管されるデータは、非常に重要で、長期間保持する必要がある内容が多い。そのため、磁気テープなどの外部媒体へのバックアップが必須であり、大容量のバックアップ装置を接続するための高速な外部接続インターフェイスが必要である。
低機能で十分なプリントサーバー
プリントサーバーは印刷データをスプールする領域の提供が任務なので、ファイルサーバーと同じくHDDの読み書きに負荷が集中する。しかし、データの量はさほどでもなく、長期間保持する必要もないので、HDDのI/O速度やキャッシュに使われるメモリの量が十分にあればよい。実際にはプリントサーバーを単体で設置するケースは少なく、たいていの場合はファイルサーバーの兼用として使われる。
用途によって必要スペックが異なるWebサーバー
Webサーバーは、コンテンツの持ち方により重視するリソースのスペックが異なる。静的なコンテンツがメインなら、動作のほとんどがHDDの読み出しであるから、ファイルサーバーと同様に考える。ただし、ほとんどの場合、ファイルサーバーよりもHDDの容量は少なくて済む。
一方、動的なコンテンツがメインなら、データベースを同一のサーバー内に置く場合はデーターベースサーバー、別のサーバーに置く場合はアプリケーションサーバーとして考えればよい。
冗長化が大切なメールサーバー
メールサーバーも、HDD1のI/Oに負荷が集中する。多数の宛先があるメールを配送したり、メーリングリストの処理を行なうなど、ピーク時の処理量は非常に多くなる。このため、ファイルサーバーよりもさらにI/O性能の高いHDDが要求される。ユーザー数や利用状況に応じて、HDD容量も増やしていく必要がある。また、HDDのI/O待ちの間に到着するメールを取りこぼさないよう、メモリも多く積んだほうがよい。CPUに関してはファイルサーバーと同様に、現行製品なら特に性能が不足することはない。
メールは業務遂行のため重要なツールのため、障害などでデータを失う事態は防止しなければならない。多くの場合、24時間365日のノンストップ運転となるため、サービスを停止して外部のテープ装置等へのバックアップすることは不可能で、HDD装置の冗長化が必須である。
HDDよりCPU/メモリ重視のアプリケーションサーバー
ここでアプリケーションサーバーとは、別のデータベースサーバーにアクセスして動的にWebコンテンツを生成したり、業務処理を行なうサーバーを想定する。データが別サーバーにあるため、内蔵HDDにはOSとアプリケーションが収まれば済む。サーバー内で日々増えていくデータはログファイルだけなので、この手のサーバーであれば、バックアップもOSやアプリケーションをアップデートするタイミングで取ればよい。
結局、アプリケーションの負荷に応じた、CPUとメモリの性能があればよい。また、アプリケーションソフトが、マルチプロセッサに対応した製品であれば、CPUのマルチプロセッサ化も性能向上のために有効となる。
高性能が求められるデータベースサーバー
データベースサーバーといえば、ほぼ例外なく、Oracle DatabaseやマイクロソフトのSQL Serverといったリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)を稼動させるサーバーである。どのRDBMSでも、性能向上ためCPUやメモリ、HDDを極限まで駆使する。すなわち、これらのパーツを高性能なもので固めるだけでなく、そのバランスにも注意を払う必要がある。どれか1つだけ拡張しても、他の要素がボトルネックとなりスループットが向上しないことが多いからだ。
最近のRDBMSはマルチプロセッサ環境で並列処理を適切に実行する製品が多く、そのような製品を利用するのであれば、CPU搭載数を増やして性能を向上させることができる。
また、重要なデータを扱うデータベースサーバーは、定期的なバックアップが必須である。業務によってはノンストップの運転が要求されることがあるので、SAN(ストレージエリアネットワーク)に対応したディスク装置を接続できる外部インターフェイス(FC:ファイバチャネルなど)が必要である。
幅広い性能が必要な仮想環境・クラウド基盤サーバー
最近のトレンドである仮想環境やクラウド基盤のサーバーでは、従来なら複数のサーバーで実現していた機能を単体サーバーで処理することになり、負荷が集積されるため、必然的すべてのリソースに高いスペックが求められる。
(次ページ、設置場所による条件も忘れずに)
この連載の記事
-
第7回
サーバー・ストレージ
サーバー選びの最終ポイントは保守サポート -
第5回
サーバー・ストレージ
サーバーを便利なツールにするソフトウェアとは? -
第4回
サーバー・ストレージ
サーバーを特徴付けるハードウェアのいろいろ -
第3回
サーバー・ストレージ
フォームファクターで分類するx86サーバー -
第2回
サーバー・ストレージ
信頼性から省電力まで!最新サーバーのスペックを見る -
第1回
サーバー・ストレージ
コーヒーサーバーとメインフレームから見るサーバーの基礎 -
サーバー・ストレージ
ゼロからはじめる最新サーバー選び -基礎編-<目次> - この連載の一覧へ