「色々説明するよりも、まずは水門の姿を知ってほしかった」
―― サイトの構造についてですが、トップに説明もなくサムネイルが並んでいてすごく特殊ですよね。あれはどんな意図があるんですか?
佐藤 水門の標本を作りたかったんです。サイトを始めた当時は、水門といってもピンとくる人がほとんどいませんでした。そこで「水門とは……」と役割や構造を説明するより前に、まず「カタチを見てくれ」という気持ちがあって、各水門の大きさや建っている場所を無視して、ひとつの箱につめてバーンと見せたかったんです。そうやってバラバラの水門を標本の箱につめているわけなので、同じ水門の写真を複数枚並べるとわけが分からなくなります。このため、最初に「1門1枚」で紹介すると決めました。
とはいえ、皆に水門を見にいってほしいという思いもあるので情報は隠したくなかった。なので、サムネイルから進んだページには所在地情報や水門の名前のリストを置いています。
―― なるほど。言語を越えて海外の人にも見てもらうという意図かと思っていました。
佐藤 それはあまりなかったですね。単純にベッヒャー夫妻の見せ方を踏襲したというほうが強いです。ただ、海外の人に水門を見てほしいという使命感はちょっと持っていますね。実際、海外の産業系写真サイトに私のURLを送ったりして、色々とアプローチはかけているんですよ。でも、見に来てくれてメッセージをくれたことは皆無ですね。
運河に船を通すための水門が多い海外からしたら、日本の水門は特殊すぎてイメージが沸かないというのがあるんでしょう。実際、川の流れが急な地形にこれほど人間がいる国は日本以外にまずありません。つまり、治水向けのローラーゲート型水門も日本以外にあまり見ないので、原体験としてあの迫力に触れた経験がないわけですよ。
―― 最近は写真共有サイト「Panoramio」を中心に作品をアップされていますね。
佐藤 ええ、今後の写真はPanoramioに載せていくことになりますね。Floodgatesの標本自体は、あのまま手を加えず氷漬けにしようと思っています。あれはあれで600点近い標本が集まっていて価値はあると思うのですが、今の新しい画像を加えていくとピクセル数があわなくなってしまいます。そしてなにより、最近はデータベースを作るにも標本を作るにも最適なサービスがネットにありますから、そちらを利用するほうが効率的というのがありますね。
PanoramioはGoogle Mapと連動していて、撮影場所の情報から写真をマップ上に配置してくれます。こちらが何も整理しなくても、位置情報付きの写真をアップしたら勝手にリスト化もしてくれるわけですね。これがすごい便利なんですよ。私が不得手だったためにFloodgatesは、情報がデータベースになっていないんです。それが、Panoramioを使って初めてデータベースになりました。あちらの機能を利用すると、都県別に写真を区分けするのも簡単で、今は東京都と千葉県、埼玉県の水門データベースを作っています。
―― 1998年に比べたら、現在はデジカメの画質もネットの通信環境も飛躍的に向上しています。こうなると、より高い解像度の写真を載せたくなるという感じでしょうか?
佐藤 一時期は古い写真を新たに撮影した高解像度のものに差し替える作業をしていましたが、もうきりがないんですよ。それで標本写真を凍結させて、Panoramioに移ったというのがあります。
ただ、別に写真家のこだわりで高解像度の作品を見てほしいという意識はあまりないんですよ。水門写真は画質で成立している作品ではなく、対象物のインパクトが伝われば目的が達成できるものです。だから、どんなに低解像度でも、水門の様子が判別できさえすれば構わないと思っています。
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