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「2~3年でエンドユーザーの通信環境は激変する」――IIJ深瀬会長

2001年05月02日 03時27分更新

文● 編集部 佐々木千之/中西祥智

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ADSL・CATVインターネットが本格的に普及し始め、FTTH(※1)も視界に入ってきたという現在、インターネット業界や通信業界は激しい競争にさらされている。しかし、我々消費者には、そういった競争の結果、2~3年後にはどういった状況になるのかが、なかなか見えてこない。

そこで、ASCII24では、日本で初めての商用ISP(Internet Service Provider)サービスを開始した、インターネットにおける先駆者の一人、(株)インターネットイニシアティブ(IIJ)取締役会長の深瀬弘恭氏にインタビューを行ない、今後のインターネットおよび通信業界の動向についてお話をうかがった。

※1 Fiber To The Home。電話局から各家庭までの加入者線を結ぶアクセス網を光ファイバー化し、高速な通信環境を構築する。

コンシューマー向けISPの収益構造は破綻

[ASCII24編集部(以下編集部)] まず、IIJも含めたISPは、今後どうなっていくのか?
IIJ取締役会長 深瀬弘恭氏IIJ取締役会長 深瀬弘恭氏
[IIJ取締役会長 深瀬弘恭氏(以下深瀬氏)] 今後、コンシューマー向けのISPの数は、減っていくだろう。法人が期待しているのは利用料金だけではないため、法人相手のISPは、現在の料金競争の影響をあまり受けていない。たとえば、安定した365日の運用体制、データのバックアップ、インターネットビジネスの仕掛け自体の共同開発など、トータルのソリューションをISPに期待している。一方で、接続料金を収益源にしている、コンシューマーを相手にしたISPというのは、収益構造が破綻しているのに近く、非常に苦しいのが実情だ。
[編集部] 接続料金以外の収益を模索しているようだが?
[深瀬氏] コンシューマー向けのISPも、接続料金だけではいけないということで、コンテンツに経営資源を割いてきている。しかし、インターネット上のコンテンツを囲い込むのというのは、実際には難しい。コンテンツとは、いわば“利権”だ。データベース内の情報のように囲い込みたいが、どうやって囲い込むかは、誰もまだ分かっていない。ひとつの方法としては、ポータルサイトの運用という形があるのだが。
[編集部] だが、ポータルサイトもうまくいっていないのでは?
[深瀬氏] だから、まだ解答がないということだ。コンシューマー向けのISPにとっては、出口が見つからない状況だろう。

びっくりするようなことは、もう起きない

[編集部] インターネット・通信業界の今後はどうか?
[深瀬氏] びっくりするようなことは、もう起きないと思う。たとえば、新しい通信キャリアーが突然出てきて、古いタイプの通信キャリアーが衰退していくとか、そういったことは起きない。技術革新を基にした料金の引き下げや、高速な通信網の整備などは淡々と進んでいく。しかし、それらは一般に想定されている範囲の話だ。
[編集部] 予想外のことが起きない理由は?
[深瀬氏] 周知のとおり、今の“インターネット”が始まったのは、1987年にアメリカの“UUNET”という会社がサービスを開始したのが最初で、商用サービスという意味では、たかだか10年少々の歴史しかない。110年からの歴史がある“電話”をビジネスとしていた電話会社は、10年前にはインターネットのことなど気にしていなかった。インターネットが世の中に受け入れられるとは、考えていなかったのだ。その理由は、インターネットがベストエフォートの世界であること、管理者が不在であることなど、電話会社の知っている電話網の世界とはまったく異質の世界だったためだ。しかし、それから10年経過した現在では“猫も杓子も”という状況になっている。

彼らは気付いてしまった

[編集部] どこでそう変わったのか?
[深瀬氏] “アンシャン・レジーム”(旧体制)の人々が考えを変え始めたのは、ここ5年の間だ。日本でいえば、NTTのような電話会社が、インターネットを無視しないで正面から検討し始めた。そして、彼ら(電話会社)は“気付いてしまった”のだ。次の世の中は、インターネットの上で、音声や画像などのデータをやり取りする世の中になるということに。気付いてしまえば、彼らは非常に強い。
[編集部] それは、資本や設備などの経営資源があるためか?
[深瀬氏] 電話会社には資本もあり、設備もすでに持っており、営業力もあり、人員も豊富だ。どうすればいいのかが分かれば、既存の経営資源を再配分して、ビジネスチャンスに振り向けていくことが可能だ。トラディショナルな電話会社が、すべてがインターネットになると考えていなかった段階は、ベンチャービジネスがチャレンジする機会は十分にあった。そういった時期にチャレンジしたのが、レベル3(※2)やグローバル・クロッシング(※3)といった企業だ。それらの企業は、電話会社が“気付く”前に走り出して、今、競争力を持っている。5年前までは、旧来の電話会社と、新しいサービスを提供する企業は別の方向を向いていた。だから、戦えたのだ。だが、電話会社が“気付いてしまった”現在では、同じ方向を向いている。この状況で競争することは、容易なことではない。これが、びっくりするようなことが起きない理由だ。
※2 米レベルスリー・コミュニケーションズ(Level 3 Communications)社。'85年に“Kiewit Diversified Group Inc.”として設立された、IPネットワークをベースにした事業を世界的に展開する通信事業者。'98年に現在の社名に変更した。

※3 米グローバル・クロッシング(Global Crossing)社は'97年に設立された通信事業者。

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