DSLプロバイダーの(株)アッカ・ネットワークスは26日、都内で記者懇談会を開催し、今後の事業方針を説明した。
アッカ・ネットワークスの長期的戦略 |
継続性や安定性重視の事業、品質重視のサービス
同社代表取締役社長の坂田好男氏は「私たちは、ベンチャーといえども、通信というサービスを提供する以上、通信キャリアークラスの品質を提供し、継続的に発展できるしっかりした会社にしていきたい」、同社取締役副社長の湯崎英彦氏も「投資家にリターンするためには急成長しなければならないが、同時に事業体としての安定性を重視し、通信業界で長期的なプレーヤーを目指す」とし、継続性、安定性を重視していることを強調した。
アッカ・ネットワークス代表取締役社長 坂田好男氏 |
もっとも、「当面のライバルは先行する2社(東京めたりっく通信、イー・アクセス)だが、究極のライバルは、笑われるかもしれないがNTT東西」(坂田社長)と、ベンチャースピリットの片鱗も垣間見せた。
先行する2社との競争において、同社の強みはサービスの品質にあるという。同社副社長の池田佳和氏によると、同社は提携先のDSLプロバイダー米コバッド社(Covad Communications Company)のノウハウをOSS(Operation Support System)システムとして導入しており、運用の高品質化、低コスト化が可能だとしている。
たとえば、同社はサービスをISP(Internet Service Provider)を通じて提供しているが、OSSによってさまざまな情報がリアルタイムにISP側で確認できるため、エンドユーザーからの問い合わせをISPが迅速に処理できるという。
アッカ・ネットワークス取締役副社長 湯崎英彦氏 |
“Voice over DSL”は?
同社は自らを“コミュニケーションサービスカンパニー”と位置付けており、当面提供するのはDSLサービスだが、中長期的には光とDSLを組み合わせたサービスや、コンテンツデリバリーからASPサービスまで、幅広い分野を見すえている。
その長期的なビジョンの中で、同社は音声をデジタル化してデータと共にDSL回線上を送る“Voice over DSL”を検討している。しかし「それをやろうとすれば、交換機を持っている相手と組まなければならない。NTTコミュニケーションズ(※1)やKDDIなどだが、たとえばNTTコミュニケーションズと組めば、同社の地域参入(NTT法によって、NTTコミュニケーションズの市内電話事業への参入は規制されている)という問題になる。まだ話せる段階ではない」(坂田社長)という。
※1 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)は、アッカ・ネットワークスの大口株主当面は光、xDSL、ISDNが共存
また、FTTH(Fiber To The Home)について、坂田社長は「キラーコンテンツが出るかどうかにもよるが、5年くらいは光、xDSL、ISDNなど、それぞれが共存する。光が本格的に立ち上がるのは2003年ごろ、xDSLと並ぶのは2005~6年ごろだろう」と予測している。
光ファイバーや機器などの価格が銅線と同程度になっても、それを敷設する工事費のコストダウンには限界がある。そのため、“ラスト1マイル”が光ファイバー化されるには、まだまだ相当な時間がかかるというのが同社の予測の根拠だ。同社では、道路の端までを光ファイバーで、そこから先をたとえばVDSLで、という“FTTC(Fiber To The Curb、Curbは縁石という意味)”を有力視している。
NTT東西について
総務省が25日、東日本電信電話(株)と西日本電信電話(株)に対して、DSL営業活動の改善について行政指導を行なった。(【参考記事】総務省、イー・アクセスの申出を認めNTT東西に行政指導)これは、DSLプロバイダーのイー・アクセス(株)の意見提出によるものだが、アッカ・ネットワークスも「昨年の会社設立から、今年1月のサービス開始まで、NTT東西との交渉には非常に苦労した」(湯崎副社長)、「事実に基づいた抗議、事務の効率化や改善の要求などを行なってきた」(池田副社長)としている。
アッカ・ネットワークス副社長 池田佳和氏 |
坂田社長は、特に申込者の名義確認について「父親が名義人で使用しているのは子供など、名義人と使用者が違うことはめずらしくない」ため、名義確認そのものが疑問だと語った。
エンドユーザーのメリットは?
1月にDSLサービスを開始したばかりの同社は、現在の加入者数は1000人単位、1日の申し込み数は100人単位、目標加入者数は1~2年後に10万から20万人、数年後に100万人とし、正確な数字はまだ公表していない。
今回の懇談会では、ベンチャー企業とは思えないほど“安定性”、“信頼性”、“高品質”などの言葉が出た。アッカ・ネットワークスは現在、ISP向けのホールセールスに特化しており、それらはISPとって大きなメリットになるだろう。しかし、エンドユーザーが重視するのは“通信速度”、“利用可能エリア”、そして“価格”だ。ISPから複数のADSLプロバイダーの選択肢がエンドユーザーに提供された場合、高品質・高信頼性だけでは説得力が弱い。アッカ・ネットワークスには、エンドユーザーに対して、数字など具体的にアピールできるものが必要ではないだろうか。