「紙のようにパソコンを使いたい」という欲求は、モバイルユーザーにとって究極の目標のひとつだ。だが、ノートPCもスマートフォンも多機能であるがゆえに、「紙のように」とはいかない。
今回紹介するキングジムの「ポメラ」(関連記事)は、「モバイルの理想」を実現するため、大胆な選択を行なったモバイル機器である。本連載では初の「純粋な非PC」となるが、その「割り切ったがゆえの操作感」をチェックしていこう。
イマドキ珍しい単機能商品
キーボードは予想以上に「傑作」
ポメラはPCではない。モバイルガジェットではあるが、電子辞書に似た「単機能商品」であって、ソフトや機能の追加は想定されていない。ポメラの目指す「単機能」とは、「フルキーボードによるテキスト文書作成」である。
ポメラはPCより、大昔に存在したワープロ専用機に近い。電源を入れるとテキストエディターが表示され、電源を切ると、その時の作業状態のまま保存される。まさに、「紙のノートを開いて閉じる」といった印象だ。
外観上で最も目立つのは、中央で折り畳むタイプのキーボードだ。PDAや携帯電話向けに同様の機構を使ったキーボードは存在しているので、決して目新しいものではない。いかにも「コンパクトさ重視」という印象であるため、タイプ感や剛性が気になる人も多いだろう。
率直に言えば、そういうイメージは捨てたほうがいい。広げた状態のタイプ感は、一般的なノートパソコンに大きく劣るものではない。カーソルキーなどが小さめであること、強めにタイプした場合、本体右側がすこしたわむことをのぞけば、タイプ感で不満は感じない。モバイル機器に限定すれば、「良好」な部類といっていい。
折り畳み式キーボードの問題点は、利用時にキーボードが動かないよういかに固定するか、という点にある。ポメラのキーボードはこの点がかなり優秀である。折りたたみ式ではあるが、立ったまま、不安定な状態でタイプしても問題ない。同様に、膝の上でタイプしても「勝手に折り畳まれる」ようなことはなく、快適にタイプできる。
本体底面を見るとわかるが、キーは中央のボディー部でがっちりとホールドされるようになっている。そのため、「上からタイプする」際には、がたつきがほとんど出ないように工夫されているようだ。問題は、ボディ部のないキーボード左右の端。左側には太くしっかりした「足」があり、机の上でもずれがないが、右側は薄い止め板で支える程度となっている。卓上にポメラを置き、キーボードの右側、特にEnterキーを強くタイプした時などに、少し違和感を感じることもあるが、使いはじめてほどなく慣れてしまう程度である。
実は筆者は、ある小型PCとポメラ同様のギミックを持つ折りたたみキーボードで取材活動をしていた時期がある。そのキーボードも決して悪くはなかったが、ポメラのものに比べてタイプ時の雑音が多く、机上で使うとがたついた。ポメラは打鍵音も小さく快適だ。
筆者は打鍵が強く、「親の敵のようにEnterキーをたたく」と言われたことも二度や三度ではない。そんな筆者でもきちんと使えるのだから、たいしたものである。お世辞抜きで「折りたたみキーボードとしては」、ポメラは現状最高レベルといって間違いではない。
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