ストレートに文字入力を考えたキングジムの勝利
ポメラに「DM100」という新製品が登場した(万が一ポメラ知らない人は調べてくださいね、関連記事)。見た目は、私がふだん持ち歩いている「VAIO P」によく似ている。いわば「ワラジ形コンピュータ」である。要するに、キーボードの大きさがそのままフットプリント(本体をテーブル上に置いたときの投影面積)になっている。
この大きさというのは、キーボードで文字を入力することに特化していることをそのまま形で表現しているという点において、とてもカッコいいと思う。
ワラジ形コンピュータの元祖は、1989年に米PoqetPC社が発売した製品名も「PoqetPC」だろう(中身はIBM PC互換機だった)。その後、富士通がこの会社を買収して、それまで同社も積極的に取り組んできたモバイル技術と融合して1991年に「OASYS Pocket」を発売する。たぶん日本のモバイルの歴史の初期の金字塔的マシンといえば、次のようになる。
ソニー「Typecorder」(1979年)
エプソン「HC-20」(1982年)
NEC「PC-8201」(1983年)
富士通「FM16π」(1985年)
東芝「J-3100SS」(1989年)
NEC「UltraLite」(1989年)
富士通「OASYS Pocket」(1991年)
これが、その後のNECの「MobileGear」、東芝の「Libretto」、ソニーの「VAIO U」、そして、NTTドコモの「SIGMARION」、「W-ZERO3」というスマートフォンまでいくことになる(もっとあるのだがこの話が主題でないのでここまでにさせてください)。そういえば、私もOASYS Pocketにアナログ携帯電話の通信カードを繋いでパソコン通信していた。
いま手元にあるワラジ形コンピュータを並べてみた。PoqetPC、OASYS Pocet2、MobileGear、MobileGearII、ZEOSPocket、Microbok、PERSONA、VAIO P。ほかにも、LibrettoやVAIO Uなど数台あったのだが見つからず
このモバイル道、思えば遠くまで来たものだ。
ポメラという製品がなぜ凄いのかというと、たぶん誰もが考えて、技術的にはパソコンメーカーなら4秒で作れてしまうような製品である。しかし、いままでどの会社も発売したことのなかった製品を形にして出してしまったことだ。このネット時代に、「文字入力」に特化してどのカテゴリに入れたらいいか分からないような製品である。
キングジムの方は、当たり前のことをしたとキョトンとしているのかもしれないが、現実のPCの世界はもう少し曲がっている。この業界ではOSやCPUメーカーが彼らのデバイスやソフトを生かした方向性を示して進むようになってひさしい。しかも、専門家ほど、情報機器メーカーほど、「こうでなければならない」という先入観や、強迫観念や、常識というものにとらわれている。
