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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第3回

「日本は本当に広い」──“廃道”に人生を捧げるマンネリ知らずの管理人

2007年07月23日 18時00分更新

文● 古田雄介

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図書館や国土地理院関連施設で“ワクテカ”


── 山行がのレポートには、道が開通した当時の新聞記事などが引用されていますが、どこから情報収集しているのですか?

平沼 記事を書くための情報収集は、市町村史を調べるために図書館をよく利用しますね。あとは地形図は古いものも東京の九段下にある国土地理院関東地方測量部や道路の工事誌で調べます。

 廃道を見つけるための調査も、やはり図書館に行きます。最新版に描かれていない道が昔の地形図にあれば、まずはアタリ。さらに、その道が車道や馬車道を連想させる太さで描かれていたら、これは大アタリを期待しますね。

 中には、利用期間が短くて、地図に一度も載っていない道というのもあるんです。市町村史に記述された工事計画や開通の記事だけで確認できる道を見つけると、もうワクテカ*1です(笑)。市販の道路地図帳にも、今の道に加え旧道が一緒に載っている場合があります。そういう旧道の中にも廃道になっているものもありますが、地図に載っている道は大概誰かが探索した後ですね。

*1ワクテカ ワクワクテカテカの略。期待して何かを心待ちにする様態を表す。


── 新しいスポットを探すのもかなり大変ですね。

平沼 そうですね。レアな道を図書館で見つけて現地に行ってみても、平凡すぎてネタにならないなというのもありますし。あまりにも藪になってて道として面白みがなかったり。

 廃道といっても、そこが道であった痕跡がないと読者の期待に添えませんから。そのあたりは実際行ってみないと分からないですね。お蔵入りにしたスポットも山ほどあります。最近のぺースだと、実際行った3割くらいしか掲載していないですね。

9代目の愛車

廃道歩きのお供は、中学時代からマウンテンバイクと決めている。現在の愛車は9代目


── 長くやっていると同じような景色でも感動が薄れるというか、マンネリを感じることも増えてきますか?

平沼 あるはずなんですけど、自分でも不思議と飽きないんですよ。過去の記事を読み返すと、色んな廃道で変わり映えのしない景色がいっぱいあるんです。でも、歩いている時は意外と楽しい。「この藪かき分けたら何が出てくるのかな」とか、「この先はどういうふうになっているのかな」とか、リアルタイムで体験する廃道は、本当に面白い。


── ちなみに、廃道のある場所というのは勘で分かるようになりますか?

平沼 トンネルの通った峠がある場所は可能性が高いです。特に、有名な街道筋で幹線道路になっている場所は、4代も5代も旧道がある場合もあるんです。

 江戸時代の道は人や馬が通れれば良かったのですが、明治時代になると馬車が登場するから、勾配がある程度緩やかな道が必要になる。さらに、昭和に入ると自動車が普及してくるので、幅の広い道が作られる。

 昭和以降も交通が発達してくると、曲がりくねった元の道よりトンネルが欲しくなってきますよね。トンネルも一回掘ったら終わりじゃなくて、古くて危険になると新しいトンネルが作られる。なので、時代を追うごとに、江戸、明治/大正、昭和初期、昭和中期、平成に完成した道というのが存在する場合があるんです。峠は廃道の宝庫ですね。

道路レポート

平沼氏がもっとも注力している“道路レポート”。タイトルからも峠道が多いのが分かる


(次ページに続く)

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