光でがんを治療する。体深部まで届ける「光カテーテル」
細胞には光が効く。でも奥には届かない
「光で病気を治す」と聞いて、どんなイメージを持つだろうか。メスで切ったり薬を飲んだりする治療よりも、なんとなく体にやさしそう。でも「本当に効くの?」と少し頼りなく感じる人もいるかもしれない。
しかし考えてみれば、私たちの体は日常的に光の影響を受けている。日焼けは紫外線が細胞に作用することで起きる現象だし、朝日を浴びると眠気が取れるのも、光が体内時計やホルモン分泌などの生理機能に影響を与えているからだ。
医療の世界でも、光を使ってがん細胞を攻撃する「光線力学療法(PDT)」や「光免疫療法(PIT)」といった技術の研究が進んでいる。ただし、光は皮膚や内視鏡が届く範囲では利用できるものの、脳や膵臓、肝臓など体の奥深くまでは届きにくい。体の外から照射しても、途中の組織で吸収されてしまう。
体の奥に光を届ける。イルミメディカルの「ET-BLIT」とは
名古屋大学発スタートアップのイルミメディカル株式会社が開発する「ET-BLIT(イーティーブリット)」は、この光が届かない問題を解決するための技術だ。血管内治療で使われるカテーテル技術を応用し、血管を通じて体の奥へ光を届けるプラットフォームとして開発が進められている。
これまでカテーテルは、「焼く」「切る」「薬を届ける」「ステントを留置する」といった用途で進化してきた。ET-BLITは、そのカテーテルの内部に光ファイバーや超小型光源を組み込み、レーザー光を患部近くまで届ける機能を持たせるものだ。すでに動物実験では血管外組織への高効率な光到達も確認されているという。
カテーテルと光半導体。日本の得意技が交わる
ET-BLITの実用化に向けて、イルミメディカルは日亜化学工業株式会社と共同開発を進めている。
日亜化学工業といえば、青色LEDで知られる企業だが、現在は医療用途も見据えた超小型レーザー光源の開発に取り組んでいる。両社は、イルミメディカルの血管内光治療技術と、日亜化学工業の次世代レーザー光源技術を組み合わせ、体深部へ光を届けるカテーテルシステムの開発を進めている。
興味深いのは、この技術が日本の得意分野の組み合わせによって生まれていることだ。細いカテーテルの中に光を届ける仕組みを組み込み、限られた空間に高度な機能を詰め込む。医療機器の精密加工技術と、世界トップクラスの光デバイス技術。その両方が求められるET-BLITは、日本企業だからこそ挑戦できた技術とも言える。
光を届けられれば、治療の選択肢は広がる
現在はがん治療への応用を目指して開発が進められている。将来的には、神経疾患や再生医療領域への展開も視野に入れており、アルツハイマー病などへの応用可能性も検討されている。
光カテーテルの実用化次第では、医療の可能性は大きく広がっていきそうだ。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります
































