熱狂から現実志向へシフトしたスタートアップ。キーマンが語るVivaTech10年の変化と次の展望
Viva Technology マネージングディレクター、フランソワ・ビトゥゼット氏に聞く
スタートアップはどのように成長し、大企業はその関わり方をどう変えてきたのか。変動する経済環境の中で、グローバルでのスタートアップ・エコシステムはどこへ向かうのか。CESを上回る規模で世界最大級となったオープンイノベーションを象徴するスタートアップ・テックイベント「VivaTech」のマネージングディレクターであるフランソワ・ビトゥゼット(François Bitouzet)氏に、10年の変遷を踏まえた現在地と、次の時代に向けた展望を聞いた。
グローバルなビジネスプラットフォームへ進化したVivaTech
欧州を中心に、グローバルのスタートアップや大企業、投資家が一堂に会する場として急速に存在感を高め、現在では世界トップレベルのスタートアップ・テックイベントに成長したフランス発の「VivaTech(Viva Technology)」。2026年の今年は、10周年の節目を迎える。来場者数は年々増加し、出展スタートアップや参画する企業数も増大。前回は来場者数でも18万人を記録し、CESを上回る規模だと言えばその盛り上がりが伝わるのではないか。今年は会場規模をさらに拡張し、約7万平方メートルに拡大する予定で、そのスケールは10年前の姿からは想像できないとビトゥゼット氏は語る。
フランソワ・ビトゥゼット(François Bitouzet)氏
Viva Technology マネージングディレクター。通信、イベント、デジタル分野で20年以上の経験を持ち、欧州のイノベーションとスタートアップ・エコシステムの発展を牽引している
VivaTechには明確な設計思想がある。ひとつは、BtoBを前提としたビジネス創出の場になること。もうひとつは、特定分野に特化しない“ジェネラリスト型イベント”にすることだ。
「創設した当時は、DX推進を掲げる大企業が新しい視点と発想をもたらすスタートアップとの連携・買収に積極的であり、同業種だけでなく、異なるテクノロジー領域や産業分野のプレイヤーとの出会いを求めていた」
普段はなかなか交わらない異分野の大企業やスタートアップの接点となり、新たな価値創出につながる場を作ろう。その目論見は成功し、気づけば製品やサービスのショーケースにとどまらない、欧州最大のビジネスプラットフォームのひとつとなった。「実際、2025年には公式アプリ上だけで60万件以上のビジネスコネクションが発生し、イベント外も含めればさらに多くの接点が創出された」
内製化から再連携へ。AI時代の企業とスタートアップの関わり方
VivaTechの歩みは、そのまま欧州におけるスタートアップ・エコシステムの変化と成熟の軌跡でもある。ビトゥゼット氏は、その背景をマインドセットの変化とAIの台頭という二つの視点から読み解く。
2016年前後、欧州の企業にとって、「イノベーションは外部から取り入れるもの」という認識が支配的だった。スタートアップへのCVC投資や、尖ったスキルを持つ人材の確保が加速し、オープンイノベーションは一種のブームとして広がっていく。
しかしその熱は、2020年前後のコロナ禍を境にいったん収束する。大企業は半ば強制的に巻き起こったDX進展を背景に、外部との連携よりも内製化へと軸足を移し、スタートアップとの協業は鈍化した。社内に設置されたオープンイノベーション関連組織やChief Innovation Officerの存在感も次第に薄れ、その優先度が下がっていったのは日本も変わらない。
だが欧州においてこの流れを反転させたのが、ChatGPTを皮切りとする現在の生成AI・エージェントAIなどの進展である。ビトゥゼット氏は、「特に生成AIの登場でオープンイノベーションは再び熱を帯びている」と指摘する。大企業は当初、AIを活用したイノベーションを自社内で完結できると考えていたが、現実は自前で実現することが難しいと認識を改めつつある。その結果、AI領域で独自の技術やサービスを持つスタートアップとの連携が、有力な選択肢として浮上した。
日本では製造業や医療、建設など、特定分野の専門知識とAIを掛け合わせたスタートアップが評価されているが、フランスの場合、2023年設立のMistral AIが世界的なAI競争において主要なプレイヤーとなるべく急成長をとげるなど、政府のバックアップも含め、英独仏を中心とする欧州ではAIスタートアップへの資金調達も活性した経緯がある。
VivaTech2025初日のクロージングセッションでは、NVIDIAのジェンスン・フアン氏、Mistral AI CEOのArthur Mensch氏、そしてフランスのエマニュエル・マクロン大統領が登壇した
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