世界最大テックイベント「CES 2026」現地レポート

正直、クルマ好きには刺さらない。それでもAFEELAが“未来のクルマ”と言われる理由

文●山本 敦 編集●ASCII

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 ソニー・ホンダモビリティが「CES 2026」にブース出展し、新しいスマートEVのコンセプトモデルである「AFEELA Prototype 2026」を公開しました。CESの会場で、同社デザイン&ブランド戦略部ヘッドである、石井大輔氏にプロトタイプのデザインコンセプトを聞きました。

AFEELA Prototype 2026と、インタビューに答えていただいたソニー・ホンダモビリティの石井大輔氏

「オーバル」フォルムコンセプトの可能性を広げるデザイン

 「AFEELA Prototype 2026」の外観でまず目を引くのは、SUV(Sport Utility Vehicle)のカテゴリーに近いデザインでありながら、柔らかくマイルドな印象を与えるラウンドフォルムです。石井氏は、このデザインのコンセプトを次のように説明しています。

 「AFEELAの基本であるオーバル(卵型)フォルムコンセプトを継承しつつ、先進テクノロジーが車に乗る人を守るという、AFEELA 1から受け継いだ考え方を具現化しています」

 従来の自動車デザイン、特に走行性能を重視するモデルでは、エッジを効かせた鋭利なラインが多用される傾向にありました。しかし、AFEELAは当初から「走りの強調」を主眼に置いていません。石井氏は、「人とモビリティの関係を再定義することにフォーカスし、モビリティの方が人に寄り添う、やさしいテクノロジーを体現するコンセプトは、今回のプロトタイプにおいても変えていない」と強調しています。

CES 2026のプレスカンファレンスで初めて披露された「AFEELA Prototype 2026」。AFEELA 1よりもひとまわり大きな車体になりました

 この「やさしさ」を象徴するのが、徹底的に削ぎ落とされたエッジの表現です。居住性やテクノロジーとの対話を重視した結果、フロントからショルダー、そしてテールまでが一体となって全体を包み込むような、伸びやかな造形が実現されました。

 オーバルフォルムは、2023年に初めて公開されたAFEELAのプロトタイプに近い印象を受けます。石井氏は今回のPrototype 2026モデルでは、デザインを「ふくよかなフォルム」にして完成度を高めていると語っています。2台が並ぶ姿を目の当たりにすると、AFEELA 1の立体的で、シャープネスをアクセントに加えたデザインと、それぞれに異なる魅力が打ち出されていると感じます。

ソニー・ホンダモビリティが2023年に発表したAFEELAのコンセプトモデル。最終形のAFEELA 1に比べると、曲面を活かした温かみのあるデザインが、今回のプロトタイプに似ているように見えます

 石井氏は、AFEELA Prototype 2026の象徴的なデザインエレメントである「3つのループ」があると説いています。

 ひとつはボディーとキャビンの境界を示す上方のループ。もうひとつはリアからショルダー、フロントへと流れるループ。そして3つ目が、EVプラットフォームの存在を象徴するボトムのループです。特に3つ目のボトムラインは、プラットフォームの造形を削り取るような意図を持ってデザインされており、全体を柔らかく見せつつも、足元を引き締める効果を生んでいます。

車体を後ろから見ると、石井氏が言及する3層のレイヤーに分かれたオーバルフォルムのループがよくわかります

居住性とエンターテインメントの最大化

 今回のプロトタイプで車体サイズが拡大された背景には、ひとつの明確な狙いがあります。それは、車内でのエンターテインメント体験の価値を飛躍的に高めることです。石井氏によれば、ボディーの大型化は「居住性能を高めることで、その中でエンターテインメントを存分に楽しんだり、それぞれが好きなコンテンツを視聴できるようにするため」の必然的な選択だったそうです。

 興味深い点は、そのターゲット層の捉え方です。車内で多人数が賑やかに過ごすことよりも、ドライバー、またはドライバーと助手席に座るパッセンジャーがプライベートな空間と時間をゆったりと共有するという設計思想が、ここにも色濃く反映されています。「自分の好きなコンテンツを持ち込み、車内で楽しく過ごしていただく。そこに新しいモビリティの楽しみ方を提案できると考えている」と石井氏は説いています。

AFEELA 1の内装に使われているマテリアルは、人に触れる箇所の約70%がリサイクル素材になっています

テクノロジーと美学が共存する外装

 外装のディテールにも、SHMならではのこだわりが随所に散りばめられています。まずカラーリングですが、一見すると明るい色味に見えるものの、実際にはウォーム系のグレーが採用されています。正式なカラーリングの名称はまだ決定されていません。

 この塗装には特殊なパールが使われており、光の当たり方や天候によって、色の表情が劇的に変化します。さらに、この塗装には自然由来のマイカ(雲母とも呼ばれる鉱石)を使用し、熱をかけてパールをフラットに圧縮したのちに、さらに研磨工程で磨き上げるという高度なプロセスを経ています。

 これはAFEELAにパール塗装を用いても、車体に搭載するレーダーセンサーに影響を与えることなく、センサーの特性を最大限まで引き出すための工夫でもあります。

Core BlacのAFEELA 1の車体に近付くと、パール塗装が施されていることがよくわかります

 また、サステナビリティへの配慮も徹底されており、内装については人が触れる表面積の約70%にリサイクル素材が採用されています。

 AFEELA Prototype 2026はオーバルフォルムコンセプトの温かみを強調しながら、AFEELAが持つデザインの可能性に豊かな広がりがあることを証明するプロトタイプです。石井氏の言葉からは、モビリティが移動手段としてのみならず、人に寄り添い、個の時間を豊かにする「動く居住空間」としての完成度を高めようとするソニー・ホンダモビリティの強い意志が伝わってきました。

AFEELA Prototype 2026は2028年から、北米での導入が予定されています

筆者紹介――山本 敦
 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

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