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3D都市モデルの開発環境を構築した「PlateauKit + PlateauLab」がPLATEAU AWARD 2023グランプリ獲得

「PLATEAU AWARD 2023 最終審査会・表彰式」レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

提供: PLATEAU/国土交通省

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スケールアップ技術「Scaling Up PLATEAU」が「逆激励賞」を受賞

逆激励賞を受賞したSagar Patel氏(右)と、審査員の川田 十夢氏(左)

 京都に住んで十年になるというSagar Patel氏がプレゼンテーションを行ったのは、都市全域など大規模なスケールでPLATEAU3D都市モデルを扱うための技術。ビジュアルクオリティを維持しつつ、いかにレンダリングパフォーマンスを向上させるかに主眼を置いたものだ。

 Patel氏は自身のデジタルアート作品を制作するためにPLATEAUの3D都市モデルをUnityで利用してみたが、アート作品においては不要になるデータが多く、データサイズの観点から満足に扱えないという問題に行き当たった。そこで、新たなUnity Mesh APIを開発し、とにかくデータの軽量化を図った。Unity Mesh APIを使うことでデータに持たせる情報を「Vertex Attributes」と「Format」のみにし、その後、単一のハイポリメッシュにマージしてアセットファイルに書き出す。これにより、建築物モデル、地形モデルも半分以下のサイズになったという。

デジタルアート作品のためにPLATEAUを使おうとしたところ問題に行き当たった

問題解決のためのワークフロー。アセットファイルにできれば、他のUnityプロジェクトでも容易に使える。また、fbxファイルに書き出せばUE5でも使える

 デモでは、京都、金沢、渋谷などさまざまな地域のデータを使った作品が紹介された。

 逆激励賞の授賞理由を川田氏は次のように述べた。

川田氏:普通、奨励賞は審査員から激励という意味で授与するものですけど、今回はPLATEAUの運営側が逆に激励してもらったプレゼンテーションでした。そのため、特別賞として「逆奨励賞」を贈りたいと思います。軽量化したビューアやデータの整備も進んでいるのですが、僕がいいなと思ったのは「データが軽くなったらこんな見せ方ができるんだよ」というのをビジュアルで見せてくれたこと。次にPLATEAUを使ってビジュアルを作る人のヒントになったと思うんですね。この点が賞に値するということで選ばせてもらいました。おめでとうございます。

受賞したPatel氏は「PLATEAUのいろいろ面白い使い方を知ることができて、今日はとても楽しかった」とコメント

ファイナリストの4作品

 受賞には至らなかったが、ファイナリストとして壇上に上がった4つの作品を紹介する。

「PLATEAU Window:Horizon」(PLATEAU Windows)

 PLATEAU Window:Horizonは、3D都市モデルを用いてまだ見ぬ風景を可視化するシミュレーションシステム。なお、遠景はCesiumデータを用いて描写している。時間帯や天候などを設定できる景観シミュレーションのほか、CADやBIMデータをインポートすることで室内の什器配置シミュレーションも可能。スマホで簡単に操作できるため、建物が竣工する前からテナント営業を行う不動産業界の支援ツールとして開発された。

外観や内装、風景、日照、天気などさまざまなシミュレーションができる

PLATEAUデータを中心に多様なデータを組み合わせることで東京だけでなく複数の都市に対応する

「Echoes of the PLATEAU」(河野 円)

 これまでにもTouchDesignerとPLATEAUを組み合わせた映像作品を生み出してきた河野氏が開発した、TouchDesignerでの3D都市モデル利用を容易にするツールを紹介した。TouchDesignerでPLATEAUのデータを読み込む際のトラブルを回避するもので、インポート範囲の指定や座標変換、センタリング処理を行う。オブジェクトデータのパスとセンタリングの情報をCSVにまとめて書き出すことができ、このCSVファイルを他のプロジェクトで読み込めば必要な範囲のモデルを容易に再現できる。また、QGISを介しPLATEAUのCityGMLデータを読み込み、TouchDesignerの映像表現に活用するという作例も紹介した。

「東京都庁」で検索し、PLATEAUのモデルを表示

プレゼンでは3D都市モデルの属性情報を活用した映像作品の例も示された

観光ルート作成ゲーム 「Kyoto Itinerary」(まつだす)

「KYOTO PLATEAU Hack 2023」で開発した、京都の観光課題である渋滞対策を楽しみながら学ぶゲームをベースに、ハッカソン後も開発を継続。ゲームの流れは、京都に次々とやってくる観光客を、他の観光客とバッティングすることなく、制限時間内に目的地まで誘導するというもの。穴場スポット探しや人探しをするミニゲームなど遊びのポイントも充実させた。現在、Webブラウザで遊べるデモ版が公開されている。将来的には英語版のリリースも考えているという。

「Kyoto Itinerary」のデモ版も公開されている

キャラクターの発言から穴場スポットを引き当てるとミニゲームが発生

「ぐりぐりインフォメーション」(株式会社ウィーモット)

 ぐりぐりインフォメーションは観光客向けの地図サービス。クライアントは自治体の観光課や観光施設を想定している。ブラウザ上で3Dマップを“ぐりぐり”動かしながら情報を閲覧できる。観光スポット、観光アイテムなどのコンテンツ紹介がポップアップで表示されるほか、地下鉄などの公共交通機関のリアルタイムデータから時刻表を閲覧できる。クライアントが使う管理画面ではGLBファイルの読み込みも可能で、ユーザーが準備したモデルを使うことも可能。観光以外にも不動産への活用も期待できる。

デモでは東京・浅草の雷門周辺が示された

赤いピンで表示されているところが地下鉄の出口。地上のマップにも表示されているため、ホームとの位置関係なども確認できる

 以上が当日の最終審査対象作品だが、このほか今回のPLTEAU AWARDではファイナリストに残らなかったものの今後のさらなる可能性が期待される作品に対して奨励賞が授与され、会場ではそのうち3作品がプレゼンテーションを行った。

「AI Texture Generator」(武村 達也)

 AI Texture GeneratorはPLATEAUのテクスチャをOpenAIのAPIを使って自動生成するスクリプトをまとめたUnityパッケージ。現状、対象とするのはCityGMLのLOD2のみ。軽量な動作、および簡単な操作で人間には考えつかないようなデザインを大量に作成できる。

「AI Texture Generator」で生成したさまざまなテクスチャを紹介した武村 達也氏

「STYLY(スタイリー)を使った地域メディアプラットフォーム NIIGATA XR PROJECT」(STYLY × 新潟市)

 現実の街にいくつもの"楽しみ"を重ねていくプラットフォーム。PLATEAUを使った3Dマップを作成し、その上に多層的に設置されたレイヤーにXRコンテンツを配信できる。新潟市とのプロジェクトでは新潟市がXRコンテンツ作成のスクールや補助金といった体制を整備し、新たな産業として定着させることを狙いとしている。

「NIIGATA XR PROJECT」についてイベントでの利用例を紹介する株式会社STYLY 取締役COOの渡邊 信彦氏

「月島・西仲通り商店街の ARアプリ製作」(花本 想良)

 もんじゃ専門店が軒を連ねる月島・西仲通り商店街の観光案内ARアプリ。PLATEAUの3D都市モデルで商店街のNavMeshを作成、目的地を設定するとそれに従ってエージェント(「明太もちチーズもんじゃ」を模したキャラクター)が案内するというもの。

商店街の各店舗の情報はデータベーススクリプトを作成して一括して管理している

商店街をオリジナルキャラクターが道案内してくれる

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