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3D都市モデルの開発環境を構築した「PlateauKit + PlateauLab」がPLATEAU AWARD 2023グランプリ獲得

「PLATEAU AWARD 2023 最終審査会・表彰式」レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

提供: PLATEAU/国土交通省

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イノベーション賞は「360°歩行映像のPLATEAUへの動的なプロジェクションと洪水可視化-Floodeau-への応用」

 グランプリ以下、7つの部門賞が贈られた。各部門賞の受賞作品を紹介していく。

 イノベーション賞は東京大学 相澤研究室 360-CV班の「360°歩行映像のPLATEAUへの動的なプロジェクションと洪水可視化-Floodeau-への応用」が受賞。

イノベーション賞を受賞した東京大学 相澤研究室 360-CV班の坂野氏(右)と、審査員の川田 十夢氏(左)

 同研究室が研究対象としてきた360°映像をPLATEAUと組み合わせた新たな応用例を提案した。相澤研究室には、秋葉原などの各地域を360°カメラで撮影し構築してきた360°映像のデータベースがある。それらを動画版ストリートビュー「ムービーマップ」として公開してきたが、あくまで映像であったため実世界の3次元情報は持っていなかった。

 一方で、現在公開されている3D都市モデルはLOD1の地域が多い。そのため、バーチャル空間に実世界の景観を再現しようとしても、テクスチャがない白い箱が並んだ形となり、十分なリアリティが得られない。提案した作品では、簡易なモデルであるPLATEAUの建築物モデルLOD1に対して、リアルな外観情報を持つ360°映像を組み合わせることで新たなバーチャル空間の創造を可能とする。

 仕組みとしては、バーチャル空間内のアバターの位置に応じて、360°映像中の該当する画像フレームをPLATEAUの建築物モデルに貼り付けるイメージだ。対象地域の360°映像から、画像フレームごとに建物の領域を抽出し、PLATEAUと映像側の位置合わせを自動で行っている。

 建物領域の推定は機械学習で行うが、技術的なキモは「映像の相対的な動きと建築物モデルの位置合わせ」の部分になる。Visual SLAMで求めた映像中のカメラ軌跡を用いて、映像と3D都市モデルのズレが最小となるように最適化処理を行うアルゴリズムになっており、PLATEAUと360°映像を正確に組み合わせることが可能となっている。

位置合わせの概要

 応用として、このシステムを使ってPLATEAUの3次元浸水リスクデータを可視化するアプリケーション「Floodeau」を開発した。洪水のリスクをPLATEAUのジオメトリ情報によって整合性を持った形で合成でき、さらに360°映像のビジュアルがあることによって現実の文脈の中で浸水リスクを捉えられる。

洪水可視化システム「Floodeau」

 イノベーション賞授賞の理由を川田氏は次のように述べた。

川田氏:技術的に突き抜けているということと、我々がコンピューティングの次の段階として相手にしなければいけない生成AIや空間コンピューティングといわれる領域を視野に入れた有用な作品だということで、イノベーション賞に選出いたしました。Floodeau(フラドー)のネーミングもよかったです。

受賞した東京大学相澤研究室 360-CV班の坂野氏は「PLATEAUと360°映像を卒論でずっとやってきて、最終的に面白いものが作れたというのは自分でも満足しています」とコメント

エモーション賞は東京上空でバーチャルランニング体験できる「Beat Running over the city」

 続いて、エモーション賞はおなかソフトの「Beat Running over the city」が受賞。この作品は、運動のテンポに同期した音楽とVR映像の中でランニングできるVRアプリ(Meta Quest 3で実装)だ。

エモーション賞を受賞したおなかソフトの伊藤 周氏(右)と、審査員のちょまど氏(中央の画面)、代理でプレゼンターを務めた国土交通省の椿 優里氏(左)

 iPhoneアプリ「BeatRunning」を介して歩行テンポを検知し、音楽のテンポに反映する。例えば、BPM120程度の歩行テンポであれば、BPM100の音楽を1.2倍で再生するというイメージだ。また、ランニングマシンから取得した移動距離によってVR映像を動かし、音楽、運動、映像が一体となった体験を提供する。

音楽、運動、映像が一体となった体験を提供する

 3D都市モデルを使うことで、どこでもバーチャルランニングの舞台とすることができる。今回は東京全域のデータを読み込んでおり、東京上空ならどこでも好きな場所でバーチャルランニングができるようになっている。

 狙いは、飽きさせない運動体験。音楽や背景などを変えることで運動を持続することができるとする。

 プレゼンではランニングマシン(トレッドミル)を持ち込み、走る速度に合わせたBMPの変化や、東京上空のバーチャルランニング体験の様子を自らデモ形式で紹介した。

プレゼン時にもマシンを持ち込んで実演

 

 今後は、コースの選択、曲調に合わせた映像などをブラッシュアップしていく予定だ。また、リアルとバーチャルを行き来する仕掛けも考えていくという。

 審査員のちょまど氏はエモーション賞授賞の理由を次のように語った。

ちょまど氏:選定理由としては、作品自体の持つ爽快感です。音楽に合わせて東京上空を走るというコンセプトが非常にすばらしい。エモーショナルだなと思いました。今すぐ使いたいアプリです。会場にトレッドミルを持ってくる人を初めて見ました。発表も作品自体も、もうすべてがエモいです。すばらしい作品発表をありがとうございました。

 オンライン参加だったちょまど氏に代わり、会場で代理プレゼンターとなった椿優里氏(国土交通省都市局)も次のようにコメントを寄せた。

椿氏:私も一次審査に参加させていただきましたが、審査チームの中でも、これは面白そうだと高い評価でした。おめでとうございます。

受賞したおなかソフトの伊藤 周氏は「せっかくトレッドミルを持ってきているので、ぜひみなさんに体験していただきたい」とコメント

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