独自VPSとPLATEAUで創る都市のデジタル広告がグランプリ。未来のプロダクトアイデアをスタートアップ8社がプレゼン
「PLATEAU STARTUP Pitch 02」レポート
提供: PLATEAU/国土交通省
この記事は、国土交通省が進める「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」についてのウェブサイト「Project PLATEAU by MLIT」に掲載されている記事の転載です。
「PLATEAU STARTUP Pitch」の第2弾が2024年1月19日、東京渋谷のPlug and Play Shibuyaで開催された。当日はスタートアップ8社が集結し、ビジネス領域で3D都市モデルをいかに活用できるか、新たなサービスやプロダクトのアイデアを競った。
昨年に続き開催された「PLATEAU STARTUP Pitch #02」では、データサイエンスや音声ARなどさまざまな領域からスタートアップ8社が集結。3D都市モデルを活用した新たなビジネスのアイデアを持ち時間6分間のプレゼンテーションで競った。
審査員は、長野泰和氏(株式会社ANOBAKA 代表取締役社長/パートナー)、佐藤文昭氏(東急不動産ホールディングス株式会社 企画戦略部 グループリーダー)、桜井駿氏(株式会社デジタルベースキャピタル 代表パートナー)、内山裕弥氏(国土交通省 総合政策局 情報政策課 IT戦略企画調整官 / 都市局 都市政策課 デジタル情報活用推進室)の4名。今回は以下の5点で評価が行われた。
(1)3D都市モデルの活用
(2)プロダクトアイデア
(3)課題解決力
(4)ビジネスとしての可能性・期待度
(5)ピッチの魅力、プレゼン力
なお、当日の進行は田原彩香氏(ビジネスタレント協会 代表)と、古橋大地氏(青山学院大学 地球社会共生学部 教授)が務めた。
PLATEAUのデータとARを利用し都市空間を広告に!
広告配信のプラットフォーム「Spatial Ads」(株式会社palan)がグランプリを受賞
今回グランプリを受賞したのは株式会社palanが提案した、都市空間を広告配信のプラットフォームにする「Spatial Ads」だ。
「Spatial Ads」は空間を拡張する新しい時代のOOHサービス。OOH(Out Of Home)とは看板・大型ビジョンといった街中の広告をはじめ、電車内や駅構内の交通広告、チラシなど、人が行動する動線上に置かれる屋外広告の総称だが、「Spatial Ads」ではPLATEAUとARを活用して広告を都市空間上に展開する。
2月に米国でApple Vision Proが発売されたが、物理世界と仮想情報をさまざまな情報をスキャンすることで重ね合わせ、デジタルコンテンツにより直感的にアクセスできる「Spatial Computing(空間コンピューティング)」という概念が注目を集めている。株式会社palanのCEO齋藤瑛史氏が狙うのは、同社が提供するAR作成サービス「palanAR」にPLATEAUの3D都市モデルを取り込んで現実空間と位置合わせを行い、都市の空間に広告を配信しようというもの。
齋藤氏は、屋外広告のデジタル化、すなわち「OOHからDOOH(Digital Out Of Home)」へ移行していくとみており、「Spatial Ads」はDOOH実現に伴う空間的な制約や物理的なコストを解消するものになるという。例えば、新宿東口駅前広場のクロス新宿ビジョンに登場した3Dの巨大な三毛猫はデジタル屋外広告としてよく知られている。しかし、どこでもそのようなDOOHが可能かというと、設置場所や機材の問題からそれは難しい。「Spatial Ads」ではPLATEAUの位置精度をもとにデータと実際の空間をマッチングさせ、AR広告のコンテンツを表示することで、DOOHを実現する。
ユーザー(広告主)はAR作成サービス「palanAR」を使ってWebブラウザベースのARコンテンツを作成し、どこに広告を表示するのかを設定する。コンシューマーはスマートフォンを使って提供されるURLをクリックし、ARコンテンツを楽しむという形になる。
長期計画としてアドネットワークを構築し、マルチデバイスかつマルチプラットフォームで可能な空間広告を配信することも考えている。例えば、商業ビルの特定の区画にあるドリンクの広告を出す――それを自社プラットフォームだけでなく、プラグインやSDKを提供することで他社のプラットフォームでもAR広告として組み込んでもらい、さまざまなデジタルツインプラットフォームの建物に表示する、といった世界観だ。
このとき、PLATEAUの建物IDや、空間ID(3次元空間を仮想的に複数のボックスに切り分け、一意に位置を特定できるようにする規格)などと組み合わせることで、各プラットフォーマーに広告のフィーを還元できる。またその際、高精度なARの位置合わせが必須となるが、そのためのVPS(Visual Positioning System)を独自に開発しているという。
すでにWeb AR領域で2000社以上の実績があるという株式会社palan。VPSの研究開発を行いつつ、単発で空間上に広告を出すという案件を数社と進めている。アドネットワークに関しては、近く独自VPSを形にし、2025年以降にSDKとセットで展開していくという構想だ。
審査員の内山裕弥氏は、授賞の理由として「3D都市モデル、PLATEAUのデータを理解している」「黎明期である、新たな位置情報技術VPSの独自開発に挑んでいる点」を挙げた。
内山氏:VPSはGPSに代わるような位置測位の技術だとされていますが、今、ほぼ欧米の技術がメインになっています。Geospatial APIとかいろいろありますが、まだどこも覇権をとっていない黎明期で、そういった領域で国産の技術を作りたいという意欲自体が非常にすばらしいと思います。国の技術政策としても、これから一般化してくるような新しい技術を、ぜひ、この勢いのあるスタートアップのみなさんに開発していただき、社会実装してもらいたい。その応援の意味も込め、グランプリを贈らせていただきました。
palan齋藤氏は受賞の喜びを次のように述べた。
齋藤氏:PLATEAUに本格的に触れたのは今回が初に近いのですが、その中で非常に可能性を感じています。一方で、VPSの文脈ではなかなか競合との差別化の難しさも感じています。けれども、その中でビジネスとしてどうやって大きくできるかというところをずっと考えてきたので、今回、高い評価をいただけてとてもうれしく思います。日本発のサービスとして、PLATEAUと一緒に大きく広げていきたいと思っております。