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スタートアップや大企業・自治体がPLATEAUの次のフェーズを語る「PLATEAU Users' Summit」

特集
Project PLATEAU by MLIT

提供: PLATEAU/国土交通省

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この記事は、国土交通省が進める「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」についてのウェブサイト「Project PLATEAU by MLIT」に掲載されている記事の転載です。

 2023年11月27日、「PLATEAU Users' Summit」が開催された。PLATEAUを活用した事業を考えるスタートアップ企業4社、そしてPLATEAUを活用した企業・自治体4組による発表やパネルディスカッションが行われた。立ち位置、背景も異なる“ユーザー”がPLATEAUの可能性や課題、PLATEAUに期待することを語った。

スタートアップ企業におけるPLATEAUの魅力と課題

 プロジェクトPLATEAUではこれまで、協力パートナーとさまざまな分野における事例開発を行いつつ、PLATEAUを活用した開発支援技術の拡充を行い、また開発者コミュニティの形成を目指す活動を行ってきた。こうした活動が3D都市モデルのポテンシャルを示すことにつながりつつある今、PLATEAU初のUsers' Summitが行われた。プロジェクトPLATEAUでは2023年12月に「PLATEAUコンソーシアム」が設立され、今回のUsers' Summitはそれを見据えて開催されている。

会場の東京大学大学院情報学環・福武ホールには70名程度が観覧に集まった。約400名がオンラインで視聴

 前半はこれからPLATEAU活用を考えるスタートアップ企業4社の発表とパネルディスカッションから始まった。

 1社目はPIAZZA株式会社 代表取締役CEOの矢野晃平氏。同社は現在60以上の自治体と連携し、ローカルSNSサービスを使って地域コミュニティのリソースをまちづくりに展開している。地域の中でのリユースの促進、チラシ広告のデジタル化、またコミュニケーションツールとして普及することでデジタルからリアルへと場を広げることにもつながっているという。PLATEAUによるデジタルツインの導入で地域コミュニティの力をよりパワーアップできると考えている。

PIAZZA株式会社 代表取締役CEO 矢野 晃平氏

2社目は、scheme verge(スキームヴァージ)株式会社 代表取締役の嶂南達貴氏。都市工学のアップデートを目指す同社が展開しているのは、地域における顧客設定をデジタルでサポートするソリューションである。交通ドメインや人流などのデータをクラスタリングすることでターゲティング・マーケティングなどに活用できる。都市のデータ連携の実証実験を進める中、特に自律運航モビリティとの相性の良さという点でPLATEAU3D都市モデルに期待しているという。

scheme verge株式会社 代表取締役 嶂南 達貴氏

 3社目は、株式会社リアルグローブ 代表取締役社長の大畑貴弘氏。同社は四次元地図とAIを活用することで国や地方公共団体の業務効率化を支援する。大畑氏は「四次元地図」と表現するが、ドローン、スマートフォン、タブレット、スマートカメラ、定点カメラ、センサーからの情報を一括して把握できるプラットフォームだ。活用実績はすでに133件。特別な訓練なしに使えることが最大の特長の1つだが、PLATEAUで3D化することにより精細なシミュレーションにつなげることができるのではないかと考えている。

株式会社リアルグローブ 代表取締役社長 大畑 貴弘氏

 4社目は、株式会社ウフル 代表取締役社長CEOの園田崇史氏。テクノロジーと自由な発想で持続可能な社会を創ることを目標に掲げる同社は、スマートシティに関するプロジェクトに取り組んできた。地域課題を自社のサービス展開につなげ、進めている取り組みは北海道更別村から宮崎県延岡市まで全国で40自治体に及ぶ。特に、PLATEAU活用においてウフルは防災・減災に注力しており、デジタル避難訓練を和歌山県すさみ町で実施している。

株式会社ウフル 代表取締役CEO 園田 崇史氏

 パネルディスカッションでは、国土交通省都市局都市政策課長の武藤祥郎氏がファシリテーターとなり、スタートアップ企業が活用するうえでのPLATEAUの課題について、率直な意見が交わされた。

国土交通省 都市局 都市政策課長 武藤 祥郎氏

 ウフルの園田氏が切り出したのは、PLATEAUが普及する中で、現場の技術者や地域の関係者からの「いつどこで、どういうふうに使えるのか」という声だ。地域の広がりや、技術的なハードルを下げる点に課題感と期待がある。

「地域の方に親しみを持っていただく、触れていただくための機会が、もっとあればと思います。もうひとつは、開発する側から見たときにどう活用できるのかという点をわかりやすく発信していただけたらと思います。この二点があると大変ありがたい」(園田氏)

 リアルグローブの大畑氏は3Dデータそのものの重さについて指摘した。3Dの地図をビジュアライズするときは大量のGPUリソースを使うため、一般のユーザーに届くまでにはまだ遠いだろうという。だが、AIのトレーニングをするための仮想空間で自動運転のシミュレーションをする、ドローンの自動飛行訓練をするといったケースであれば、GPUを大量に使っても予算の元が取れる。また、災害シミュレーションなどの都市計画レベルの予算が使える場合は、実用レベルとしてしっかり機能していくのではないかと期待をこめた。

 scheme vergeの嶂南氏は「シミュレーションしたり可視化したりというところから、 それをもとに『対策する』という次のステップに進まないと実利は生まれてこない」とし、誰もがPLATEAUを使えるような仕組みを作っていくために、従来PLATEAUを扱ってきた企業とこれからPLATEAUを扱っていく企業の連携が必要と述べた。

「PLATEAUを使って防災シミュレーションをしてみると『ここが危なそうだ』という声が出てきます。でも、それが3D地図上にはまだあまり反映されていなかったり、市民になかなかうまく伝えられていなかったりする面もあると思います。そうしたときに今後、例えばアプリ制作会社などがPLATEAUをもっと参入して使ってくれるようになると、3D地図がよりインタラクティブなものになってくる。これからPLATEAUに関わる企業も広がってくるだろうから、企業同士で相互にデータの行き来ができるようにしていけたらよいなと思っている」(嶂南氏)

 PIAZZA矢野氏はこれを受けて、利用者や地域の住民が持つ力も重要だと述べた。同社が行った「町にある掲示板のチラシをみんなで撮ってデジタル化しよう」という取り組みでは、地域の人たちの力を生かすことで膨大なマスデータをすばやく取得できたという。これを3D都市モデルとしてどのようなユーザーインターフェースで届けていくかは技術の課題としつつも、地域を巻き込んでいくのもひとつの方法ではないか、とした。

 また、議論はPLATEAUが持つ属性データにも及んだ。PLATEAUでは自治体ごとに建物の建築年や用途など属性データが整備されている。大畑氏は、PLATEAUの優れている点として、この属性データの充実があり、データ自体に自治体や国がお墨付きを与えていることだと強調した。一方でその属性データをどう使っていくかというところも今後の課題だとした。

 嶂南氏は、不動産や建設などの注力する業界を中心にしっかりと技術に向き合うべきだと述べる。グローバルで展開できるようなまちづくりの技術というものを研究していく場を設け、何が協調領域になるのかというところを明らかにして、さまざまな領域の人がそこに向かっていけるようにしてほしいと提案した。国土交通省の武藤氏はこれを受け、グローバル展開はまさにPLATEAUが力を入れようとしているところだと応えた。

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