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次なる社会の実現に向けスタートアップや国内外の企業、研究機関がCEATEC 2023で展示、交流 

CEATEC 2023 テーマ「次世代」

連載
IoT H/W BIZ DAY 2023

提供: 日本エレクトロニクスショー協会

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ビジネスパーソンから学生まで多数来場!
活気にあふれた「スタートアップ&ユニバーシティエリア」

「スタートアップ&ユニバーシティエリア」には、先端テクノロジーを活用して社会課題の解決を図るスタートアップや大学研究機関が多数出展。出展者数は、スタートアップと大学研究機関あわせて153社/団体となり、2022年の81社/団体から大幅に増加。各ブースにはビジネスパーソンだけでなく学生も数多く訪れ、活気にあふれていた。

 ここからは同エリアに出展したスタートアップ企業をピックアップして、展示内容や出展者がCEATEC 2023のテーマ「次世代」についてどのように感じたかなどについて紹介しよう。

台湾発、リアルタイムの翻訳ディスプレイを開発するVM-Fi

 台湾発スタートアップのVM-Fiは、リアルタイムのディスプレイ型AI翻訳デバイス「SMART TranslationwindoW」を展開している。導入シーンは、駅の案内所やイベント会場の受付など、翻訳が必要な現場だ。マイクで拾った会話を、AI搭載のクラウドで翻訳してディスプレイに表示する。

 競合優位性はシームレスな会話が可能な点。スマートフォンの翻訳アプリの場合、音声入力後にボタンをタップして翻訳を開始するのが一般的だ。「SMART TranslationwindoW」では会話中の操作が不要で、マイクに話しかけるだけでリアルタイムに翻訳が表示される。

 日本においては、JR福岡駅や世界水泳選手権2023福岡大会、TSMC熊本工場などに導入されたという。現在の対応言語は4か国語(英語、中国語、日本語、韓国語)だが、2024年にはフランス語やドイツ語、スペイン語に対応し、よりグローバルに展開していくとしている。

 ブースで来場者に対応していた代表取締役CEOのMaxwell Peng氏は、CEATEC 2023のテーマ「次世代」について、「今回の展示では多くの学生がサービス内容やAI翻訳の仕組みについて質問してくれた。興味津々なブース来訪者たちと接して、良いプロダクトをつくれたのだと嬉しく感じた」と語った。

製造業特化のスキル管理システム「Skillnote」を開発、Skillnote

 Skillnoteは製造業に特化したクラウド型のスキルマネジメントシステム「Skillnote」を展開している。製造業ではISO(認証規格)の監査対応のために、社員のスキルを一覧化したスキルマップを作成する。しかし、紙やエクセルなどの非効率な形式で作成されることが多いという。

「Skillnote」は、ISOの要求に従ったスキルマップを効率的に作成するというもの。加えて、監査対応を目的に入力したデータを人材育成や配置転換などにも活用可能という。近年は定年退職者から若手社員へのスキル継承に活用されるケースが多いとのこと。どのスキルを持つメンバーが高齢化しているのかを可視化するため、その状況に応じて若手の配置を検討できるとしている。

 特徴は製造業に特化しているため、既存の人事管理システムには反映できなかった、製造業ならではのスキルを入力可能な点だ。現在、日本語以外に中国語や韓国語に対応している。今後はISO監査対応やスキル管理に課題を抱える、世界中の製造現場への導入を図るという。

 同社の社長室海外推進グループ シニアマネージャー今井康浩氏は、CEATEC 2023のテーマ「次世代」について「我々のソリューションは製造業界の地道な作業を効率化するもので、華やかとはいえないかもしれない。しかし、ブースに訪れてくれた方々と話す中で従来の慣習が残る業界をテクノロジーで変革していくやりがいを伝えられた」と語ってくれた。

現場ごとに最適化したAIで工場をDX、フツパー

 フツパーは、現場に最適化したAIソリューションを提供するスタートアップだ。CEATEC 2023では製造業向け外観検査AI「メキキバイト」を展示していた。製造現場にAIソリューションを導入する場合、自社の現場環境に最適な製品が見つからない、現場に適した設定やトラブル時の対応が難しいなどの課題がある。

 フツパーは構築済みのAIソリューションを提供するのではなく、現場に最適化するために導入相談からAI構築、導入、運用、改善までを一気通貫で実施する。また、導入済みの設備を活用したい企業には、現状の課題をヒアリングしたうえで、AIや追加設備の提案も行うという。

 例えば、食品製造工場の外観検査においては、人が目視で色や形状、混入物の有無などを確認しているケースがある。「メキキバイト」はカメラにAIを組み合わせたソリューションで、人の目の代わりに、外観検査や頻繁に発生する不良の識別などが可能だ。加えて、同社はデータ分析も可能なため、工場全体の最適化も実現できるとしている。

 今後は国内メーカーの海外工場や海外の製造業者への導入も検討していくという。関東支社営業部の吉山紗彩氏はCEATEC 2023のテーマ「次世代」に関して、「AIにあまり抵抗がない学生や若手の来場者も多いからか、弊社のAIや先端テクノロジーを活用した工場DXに予想以上に興味を持っていただけた」と語った。

最先端の制御技術と水上ドローンの製造で水辺の業務をDX、炎重工

 炎重工は最先端の制御技術を活用した水上ドローンや水中カメラなどを開発、提供し、海上や養殖現場などの水辺における人力作業を自動化している。

 導入事例もさまざまだ。例えば、用水路の点検では人が入れない場所をカメラで点検したり、海難事故の人命救助の際には二次災害を防ぐために水上ドローンによる救助も可能だ。他にも、養殖場の自動給餌や橋や防波堤の点検から、離島への物資輸送、密漁の監視まで水辺の業務を自動化し、人手不足や業務の効率化を実現している。空中ドローンの領域には競合も多いが、水上ドローン、とりわけ小型の水上ドローンについては市場自体が新しいため、優位性を発揮しやすいという。

 今後は海外の展示会への出展予定もあり、国内で実績を積み上げながら海外展開も視野に事業を進めていくとのこと。事業開発部の小林健一氏は、CEATEC 2023のテーマ「次世代」について「水上ドローンが珍しいこともあり、多くの学生にも興味を持ってもらえた。AIやドローンなどテクノロジーが急速に進化したことで、学生を含めて来場者の興味の幅も広がっているように感じる」と語った。

業界初の事務所公認のAIタレント事業を展開、AI Booster

 AI Boosterは業界初となる事務所公認のAIタレント事業を展開する。CEATEC 2023では、元乃木坂46の和田まあや氏をアンバサダーに迎え、2023年12月から2024年1月のローンチに向けて開発を進めている「AI am MAAYA」を展示していた。

「AI am MAAYA」に和田氏の言動やユーザーの趣味嗜好を学習させることで、ユーザーは違和感がなく、満足度の高いテキストコミュニケーションを、24時間楽しめるという。タレントや所属事務所は、本人が稼働していない時間に売上を上げたり、キャッシュポイントを増やしたりできるということだ。

 またファンからのリアルな声がデータとして蓄積されるため、告知や商品開発、ライブやイベントの企画に活用する可能性も検討しているとのこと。将来的にはタレントに加え、企業の経営者をモデリングしたAIを開発したり、カスタマーサクセスの現場における活用も視野に入れているという。

 コンサドーレ札幌などでプレーしていた元Jリーガーで同社CMOの石井謙伍氏はCEATEC 2023のテーマ「次世代」について、「AIをはじめとした先端テクノロジーに興味がある若者が多い。エンジニアリングの面で、私よりも知識が豊富な学生もいて、次世代を担う若手人材とコミュニケーションをとる貴重な機会となった」と語った。

「トポロジカル物質」で熱をリアルタイムに検知、TopoLogic

 東京大学発スタートアップのTopoLogicは、「トポロジカル物質」を社会実装することによるQX(量子トランスフォーメーション)に取り組んでいる。「トポロジカル物質」は物質の特性を決める電子構造が従来の物質と異なり、絶縁体や半導体には見られない物理効果を見せるという。

 例えば、そのひとつである熱電効果「異常ネルンスト効果」を活用することで、高速応答・高感度かつ自由度の高い熱電材料を低コストで量産可能だとしている。これにより、従来の熱電材料の構造や形状の自由度が低く、原材料や製造コストが高いという課題の解決を図る。

 半導体メーカーや自動車部品メーカーからの引き合いが多く、熱の流れをリアルタイムで検知できる特性を生かした異常検知に用いられるとのこと。また、将来的には人体への活用も検討されており、徐々に上昇する温度ではなく、瞬間的な熱を検知できる特性を生かした熱中症対策も期待されている。

 具体的なプロダクトの製造はまだ行われていないが、引き合いのあるメーカーと活用を検討する中で、最適な技術の活用先を見出していくという。取締役COOの澤井周氏はCEATEC 2023のテーマ「次世代」について「理解が難しくマーケットもない技術にもかかわらず、多くの来場者が足を止めてくれ、とくに学生が自分の研究テーマでどのように活用できるのかを考えてくれた」と語った。

海外から先端テクノロジーが集結した「グローバルエリア」

「グローバルエリア」には海外の最新テクノロジーを携えた9つの国と地域の企業が出展した。各国企業はブース展示に加え、「ピッチステージ」でのプレゼンテーションやセッションの機会も活用し、日本企業との連携やオープンイノベーションの機会を模索した。

DXやセキュリティなどの先端技術を展示、台湾サイバーセキュリティ&イノベーションパビリオン

 台湾サイバーセキュリティ&イノベーションパビリオンは、台湾情報セキュリティ協会(TWISA)とStarfabが共催し、DXおよび情報セキュリティ関連の10社が出展。同分野で重要となる情報の暗号化やセキュリティ監視などの技術の展示が行われた。

AI活用の電子本人確認(eKYC)ソリューションを提供するAuthme
 Authmeは、AIを活用した電子本人確認(eKYC)ソリューションを提供している。本人確認プロセスを身分認証、NFCデータの読み取り、顔認証の3ステップに簡略化することで、ディープフェイク対策も可能なセキュリティ強度に加え、企業の運用コスト削減や顧客体験の向上も実現している。また、API連携によるシンプルなシステム統合も可能だという。

 Authmeの技術は、プライバシーに関する国際基準「ISO29115」やEUのデータ保護規則「GDPR」に準拠している。今後は日本企業への導入も加速させていく展望だ。

ICT領域を強みに海外企業との事業連携を目指す、ウクライナパビリオン

 総務省のサポートによりCEATEC初出展が実現したウクライナパビリオン。同国政府や企業11社とIT Ukraine Associationが、強みとするICT関連の商品・サービスを展示した。電子機器が主要輸出品目の一つであるウクライナには、ICT人材も多いという。ICT領域における日本企業との事業連携や日本企業の海外進出支援など、ビジネスを通じた連携により経済の早期復興を目指す。

アクティブな箱型防犯デバイスを開発するG-MAK
 G-MAKはホームセキュリティシステムを開発している。複数のセンサーで侵入者を素早く検知し、箱型デバイスから霧やサイレン、ストロボフラッシュなどを発出することで、侵入を防ぐという。

 従来は、侵入されてから侵入者を検知する受動的なソリューションが主流だったが、同社が開発するのはアクティブなセキュリティデバイスとなっている。自宅やオフィス、倉庫などに手軽に設置可能で、長期間留守になることが多い施設にも適している。

遠隔で心臓の状態をモニタリングするCardiomo
 Cardiomoは遠隔で心臓の状態をモニタリングするシステムを開発、提供している。24時間365日のリアルタイムな心臓モニタリングにより、不整脈の早期発見や重篤化の防止、患者の医療費や医師の負担軽減などの実現を目指す。

 患者が小型のウェアラブルデバイスを装着すると、クラウドの解析プラットフォームを通じて心臓の状態が、家族や医療従事者のPCやスマートフォンアプリに表示される。ウクライナ国内はもちろん、アメリカやオランダ、ドイツの医療機関への導入実績もあるという。

「北欧のシリコンバレー」オウルから4社が出展、フィンランドパビリオン

 豊かな自然やサウナ文化が有名なフィンランドは、欧州のICT先進国の一つでもある。ディープテックや情報セキュリティなどの分野で世界的な企業も輩出しており、オープンイノベーションによる研究開発と実践により、さまざまな先端技術が生み出されている。CEATEC 2023には「北欧のシリコンバレー」と称されるIT都市のオウルから4社を選出し、展示を行った。

世界最小、アクティブ・ノイズキャンセル機能搭載の耳栓「QuietOn 3.1」
 QuietOnは極薄6.4mmの世界最小サイズで、耳に装着した状態でも横向きで寝られるアクティブノイズキャンセル機能を搭載した耳栓「QuietOn 3.1」を展開している。耳にフィットするメモリーフォームイヤーチップに加え、極小マイクが周囲の音を分析して反対の音波を再生することで、静寂を実現している。一度の充電で28時間の連続使用が可能で、ケースにもバッテリーを搭載しているため、旅行や出張の際も携帯しやすい。

 シンプルで高級感のあるデザインで、Bluetoothや音楽再生などの機能を極限まで削り、耳栓としての価値を高めてきたことで米国や日本を含む世界に展開しており、今後もさらなる世界シェアの獲得に向けて拡大していくという。

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