コーポレートベンチャリング:ベンチャー・スタートアップ企業に限定したオープンイノベーション活動の要点
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昨今ではオープンイノベーションと同一視されることがある、コーポレートベンチャリングについて説明する。本稿を読めば、その特徴やトレンド、コーポレートベンチャーキャピタルの位置づけが理解できる。(連載一覧はこちら)
コーポレートベンチャリングの定義
コーポレートベンチャリングを「対象をベンチャー・スタートアップ企業に限定したオープンイノベーション活動」と定義する。文脈によっては、それ以外に企業内のシーズを基にしたベンチャー企業の外部への切り出しもコーポレートベンチャリングと呼ぶことがあるが、本稿では対象に含めない。本取り組みは、とりわけ革新領域のプロジェクトを創出するために効果的である。
あらゆる業界にデジタル化の波が押し寄せ、競争環境が変わりつつある。しかしながら既存の大企業はイノベーションのジレンマのため、自身で変化を起こすことが困難である。一方でベンチャー企業は既存事業を持たないがゆえにイノベーションの開発に縛りがなく、組織の小回りが利くことから試行錯誤に向いている。よって大企業が豊富なリソースを提供する形でベンチャー企業と協業すれば、お互いにとってメリットが大きい。
昨今ではオープンイノベーションという言葉がコーポレートベンチャリングを指して用いられることがあるが、この捉え方では可能性を狭めてしまう。本連載第2回で述べたようにオープンイノベーション活動はベンチャー企業との協業を通じた新規なプロジェクトの創出だけでなく、それ以外のパートナーも対象とした協業や、結果としての既存のプロジェクトの強化にも活用できる。
ベンチャーキャピタルやスタートアップデータベースのようにベンチャー企業の探索に特化したサービスやツールが存在している。一方でオープンイノベーション仲介業者のサービスの中には、ベンチャー企業を含めた複数の種類の協業パートナーを同時に探索できるものも多い。また相手のモチベーションに配慮が必要な点は、アカデミアの研究者との共同研究やサプライヤーとしての中小企業との共同開発でも共通している。
よってオープンイノベーションチームの中にコーポレートベンチャリングチームがあり、その中に手法の1つであるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の機能がある形がよいのではないだろうか。アカデミアの研究者の探索・協業は研究所で、中小企業に関してはサプライヤーを相手にしている購買調達部で、ベンチャー企業については新規事業開発部や経営企画部で対応する体制は、ノウハウが共有されず効率が悪い。
コーポレートベンチャリングの目的
大企業にとって新規な協業パートナーを相手にするコーポレートベンチャリングはオープンイノベーション活動の中でも難易度が高く、安易に始めてしまうと、社内だけでなくベンチャー企業のリソースを無駄に消費することになってしまう。そこで意思決定に一貫性を持たせるためにも、ある程度は目的を定めておきたい。例えば以下のようなものが考えられる。
●短期間かつ低コストな課題解決
●新規な技術・ビジネスモデルの探索
●買収先の探索
●社外技術による社内イノベーションの促進
●新規市場への参入
●財務的リターンの獲得
●起業家人材へのアクセス
●起業家精神の醸成
●ブランドイメージの向上
●CSRへの貢献