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あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ 第339回

FIATが日本のミニバン市場に投入した「Doblò(ドブロ)」はレッドオーシャンを切り開けるか!?

2023年06月04日 15時00分更新

文● 大音安弘 編集●ASCII

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イタリアとフランスのハーフ
FIATのミニバン「Doblò(ドブロ)」

 イタリアの自動車ブランド「FIAT(フィアット)」。ルパン3世が駆る小さな黄色クルマ「500(チンクエチェント)」を送り出したメーカーといえば、わかるかもしれない。ちなみに、現在の日本でのFIATの売れ筋も、その血脈を受け継ぐ最新型「500」となっている。そのFIATが、日本のミニバン市場に攻め込んできた。その新型車が「Doblò(ドブロ)」だ。

 日本初上陸となるドブロは、これまでもFIATのワゴンやバンとして活躍してきたモデルだが、3代目となる最新型では、FIATを含め、8つのブランドを持つステランティスグループの強みが活かされている。なんと、フランス車であるシトロエン「ベルランゴ」とプジョー「リフター」の基本を共有する兄弟車として送り出されているのだ。つまり、イタリアとフランスのハーフということ。このため、3台の雰囲気は良く似ている。ただし、フロントマスクなど外観や内装の色使いなどは専用とすることで差別化も図られている。

 そのスタイルは兄弟と比べると、正直おとなしい。しかし、それこそがイタリアンベーシック。イタリアの実用車って意外と地味なのだ。イタリアの天才デザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロが手掛けた初代パンダだって、とてもシンプルなデザインである。

 話をドブロに戻そう。前後バンパーとモールは、無塗装のブラック仕上げだが、ギア感(見た目より実用性重視という意味)もあって印象は悪くない。また足元には、ブラックのアルミホイールがおごられ、タイヤは快適性とエコ性能で定評のあるミシュラン製「PRIMACY 4」を組み合わせるこだわりようだ。

5人乗りと7人乗りでは荷室に大きな違い
3列目シートを取り外すのはちょっと面倒

 ボディータイプは5人乗りの標準車と、7人乗りロングボディーである「マキシ」の2種類。全長は標準車で4405mm、ロングボディだと4770mmまで拡大する。サイズの違いは、ホイールベースの差であるが、1列目と2列目のシートまでの作りはまったく同じ。ラゲッジスペースに違いがあるのだ。

 7人乗りのマキシだと、スライド機構付きの着脱可能なシートが2座備わっている。日本車のように格納できないので、荷物をたくさん運ぶ際は、3列目シートを取り外すのがデフォルト。ちょっと重いので、着脱は大変なのだが……。2列目シートは可倒式となっており、たためば床面がフラットとなる。

 インテリアのデザインも基本的には兄弟車と共有だが、色使いやトリムが異なるため、同じということをあまり意識させない。シートはグレー基調だがステッチも入っており、落ち着いた雰囲気だが機能美が感じられるものとなっている。ステアリングも本革巻きとするなど、こだわる部分にはしっかりと力を入れているのだ。

ディーゼルターボで燃費もいい
大きなボディーだが車幅感覚は掴みやすい

 パワーユニットは、兄弟車と同じ1.5L直列4気筒クリーンディーゼルターボを搭載。最高出力は130PSと平凡だが、この手のクルマで重要なのは最大トルク。1750rpmの低回転域で300Nmを発揮し、それは3Lのガソリン車並みのものだ。燃費も18.1km/L(WLTC)と低燃費なので、荷物の多いアウトドア系の趣味でも最適の相棒となりそう。トランスミッションは、8速ATを組み合わせた前輪駆動のみとなる。

 標準ボディーのドブロで、都心をしばしドライブ。全幅が1850mmもあるので、ちょっとデカい。ただ鼻先が短く、四角いデザインなので、車両感覚は掴みやすい。この1.5Lディーゼルエンジンと8速ATの組み合わせは優秀。ディーゼルエンジンらしい低い音を奏でるが、決してうるさくはない。変速もスムーズでリズミカル。ストップ&ゴーの多い街中でも、快適な走りを見せてくれる。

 シートは、やや硬めだが、身体をしっかりと支えてくれるので、疲れにくい。特に長距離では、その有難みが強く感じられるだろう。ナビ機能はないが、その変わりにダッシュボード上にあるインフォテインメントシステムは、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応しており、スマホを接続するとナビアプリが使える。これで十分だろう。

 少し首都高なども走ってみたが、やはりボディーがしっかりとしていて、そのぶん乗り心地は硬めだが、走行安定性は高い。欧州車らしい走りが、ミニバンでも楽しめるのは、うれしいところだ。

 先進の安全運転支援機能も充実しており、アダクティブクルーズコントロールを始め、衝突被害軽減ブレーキ、レーンキーピングアシスト、ブラインドスポットモニターなどが標準化。パーキングセンサーとバックカメラもあるので、駐車の不安も少ない。

ちょっと変わったミニバンが欲しいならオススメ!

 最大の懸念は、標準車で399万円という価格だろう。しかし、これでも3兄弟の中では最も安価で、30万円ほど安い。FIATがライバルとする国産ミニバンとは提供価値が異なるためあまり競合しないと思われるが、変わり種ワゴンが欲しいユーザーには、ギア感満載のドブロは魅力的に映るのではないか。また、ドレスアップ派のカスタムベースにも良さそうだ。

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